第五話 大食いアイドル『生産者の顔面暴力』

「ん〜!ホロホロのチキンがスパイシーなカレーと奇跡のマリアージュ!バターでコクも出てて飽きることなく飲み干せる〜!」

「山みたいに大盛りのカレーがまたたく間に崩されていく……!豪快な食べっぷり、惚れ惚れしちゃいます!」


 スパイスや野菜が入っているからカレーは実質デトックスウォーターな訳で。そりゃあウォーターならごくごく飲めて当然だろ?


「……ところで、今気にしたがギルドって賑やかなんだな。昼時だからか?」

「いえ、今日は特別な日なんです。なにせあの第一次産業系大食いアイドル『生産者の顔面暴力』の巡業があるので!」


 この世界にもギルド道の駅を巡業するアイドルがいるのか。


「あっ!あそこにいるのが不動のセンター!噴き上げるミルク色の神炉離かろりぃスプラッシュ、楽能カナちゃん!」

「満面の笑みでチャーシューメンを吸収しているな」

「そして、その隣にいるのがクールな微笑の美少女アングラー!業魚餃ぎょうぎょぎょう様!」

「アルカイックスマイルで黙々と点心をむさぼってる」

「最後に、我が子を喰らうが如き面持ちで

大根をかじる育ち盛りの末っ子娘!皮下に蓄えた神炉離かろりぃはまるで根菜類!YASAI!」

「「YASAちゃんもっと健康に配慮した食習慣身につけてー!」」


 なんだ最後の応援コール。まあいいか。ふーむ彼女達がこの世界のアイドルかぁ。


「少年、あの中にお姫様っていたりする?」

「お姫様?僕には三人ともお姫様のようには見えますが……そんな話は聞いたことないです」

「うーん、実は女神から狗茶羅くちゃらを倒すためにはお姫様の力が必要みたいな話を聴いて」


 女神とマンツーマンの教習中に、なんとか聞き取ることが出来た話の一つだ。


「お姫様に会いたいんだけど、やっぱりお城とかにいるのかね」

「お城ですかあ。こんな田舎にはないので都会に行かなくちゃいけませんね」

「そもそもどの国の、なんて名前のお姫様だかもわからないんだけどな。困った……」


 とりあえず、少年に協力してもらって情報を集めようかな。そう思い完食したランチのトレイを持ち上げた瞬間。


「きゃあああ!!!」


 フードコートの中心から、甲高い少女の悲鳴が響いたのだった。

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