第三話 津軽の女神

 まどろむ俺は真っ白な空間にいた。それこそ炊き立ての白米を思い出すような。……もしや、いつかは拝みたい夢No.3『炊飯器の蓋を開けた瞬間広がる新米の海にダイブする』が叶って──!?


 ぐうぅぅぅ〜〜〜


 自分のお腹から鳴った派手な目覚ましアラームと共に俺は覚醒した。


「夢じゃないのか、惜しかったな……いやそれより、ここは……?」


 立ち上がり、周囲を確認しようとした俺を鮮やかな光が照らす。


「なんだ!?訳アリ施設の厄ネタ実験!?俺、LED栽培されちゃう!?」

「そったわげねー」


 何もない空間から光に包まれ降臨したのは、ほっかむりをかぶった田舎のおばあちゃんだった。


「なんだこの発光するばあちゃんは!?」

「めがみだ」

「め……女神!?」


 このおばあちゃん、女神なのか!?いやまあ、おばあちゃんの女神もいるか。


「えー俺は小麦練男って言います。それで女神、さま?この状況は一体?」

「とづぜんこった無礼ゆるすてけ。なにおだのみすてこどがあるのだ」

「津軽弁かぁ〜」


 これは気合い入れなきゃいけないぞ


「今、わんどのせがいではねぶりばすくぢゃらどいう闇鍋将軍が圧政すき、民くるすめでらのだ。わっきゃせがい救うだめ、いせがいがら勇者のにぐだいしょうがんすた。それがなだ」


 無理だ〜


「なにはだぐいまれなる才能があるのだ。腹にだずさえだ無限の『かろりぃ』……そのぢがらがあればがならずぐぢゃらに勝利するごどがでぎるびょん」

「……はら?かろりぃ?」

「そのどおり!わんどのせがいでは『かろりぃ』があればあるだげぎょうりょぐな『えぐささいず』がでぎる!つまり、わんどにとってなっきゃさいぎょう、せがい救う勇者なのだ!」


 『カロリー』に『エクササイズ』……つまり……


「俺に痩せろって言ってる?」

「げんりょうなんてとんでもね!むすろごえでもらわねば!」

「ううん何言ってんだかサッパリだな。聴力を鍛えないと」

「鍛える……んだ!なには勇者どすちゃーだがってもらうだめに『えぐささいず』のやりがだおすえねばいげね!」


 エクササイズのやり方をおす、教える?やっぱりダイエットじゃないか!くっ、今まで健康診断に気持ち引っかからない程度の運動しか心がけていなかったというのに!


「女神さま、申し訳ないが俺に継続的な運動習慣というのは難」

「いでよ、きょうしゅうじょ!」

「教習所!?」


 ゴゴゴという地響きと共に、地面から教習所が生えた。


「なんだこの教習所!?『ピザソードサムライスクール』って書いてあるけど!?」

「さあ勇者よ、せがい救う『ぴざむらい』になるのだ!」

「え、え、ちょ、押さないで!?肉揉まないで!?ピザ生地みたいに練らないで!?」


 こうして俺は女神の導きにより『ピザソードサムライスクール』で短期集中エクササイズコースを受講。2回本免に落ちつつなんとか皆伝したのだった。



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