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公園のベンチに女の子と並んで座っている。
恥ずかしいというか、場違いな気分。
いいのか、本当に。
「あたし、目立たなかったからね」
中学、高校と同じクラスになったことのある女の子を、
見違えてしまった。
「高三の時も同じクラスだったよね」
もちろん覚えているさ。
でも、その時の彼女の顔が思い出せないんだ。
今こんな風に、僕の前に現れた時から。
「近藤って、眼鏡かけてた。高校の時」
「かけてないよ。目はずっといいの」
「そうなんだ」
「驚いた、急に声かけちゃったから」
驚いているよ。でも、驚いてるのはそのことじゃないんだ。
「たしかにね。ここに戻ってきて、声をかけられると思ってなかった」
「どのくらい戻ってなかったの」
「大学に行ってからずっと」
「お盆やお正月も」
「ほとんど連絡も取ってなかった」
「そしたら、連絡も来なくなった」
「弟が結婚した時も、葉書しか送られてこなかった」
「それは大丈夫、みんなそうだから」
僕は彼女の顔をじっと見る。
「あたしの弟と五十嵐君の弟は親友なんだよ」
彼女は僕を見て笑っている。
「そういや、いたなあ。サッカー部のタカシ」
「そう、そのタカシ」
僕と彼女は顔を見合わせて笑う、少しぎこちなく。
「ねえ、聞いていいかなあ」
「何を」
「どうして戻ってきたのか」
彼女は僕の方は見ず、まっすぐ前を向いてそう言った。
「リストラされてね。半年バイトしてたんだけど」
「居心地が悪くなった」
「そう、何でわかったの」
「あたしもそうだったから」
「でもさ。今更戻れないよなと思って」
「実家に」
「もうあそこにも、僕の居場所なんてないんだ」
「そんなことないよ」
彼女はそれまでとは違う、強い口調で言った。
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