2
ダラダラとフラフラと見慣れた街を歩いている。
あんなに時間がたっているのに、
この街はあの頃と全然変わっていない。
行きつけだった喫茶店に入ってみる。
マスターは僕のことは覚えていなかった。
だいぶ感じが変わってしまったのかな。
当然、店の子も知らない子だ。
バイトも高校生かな。
そう言えば守屋とよくここに来て、
バイトの女の子をからかっていた。
女子大生のメグさん。
今頃どうしてるだろう。
短いスカートが眩しかった。
「眩しいのは、スカートじゃなくてその下だろう」
守屋が僕に言った。
下というのは、どっちの意味だったのか。
「そりゃ、決まってるだろう」
守屋の声が聞こえた気がした。
「もちろん、両方だよな」
思わず、声に出てしまう。
僕は、あわててまわりを見る。
見られてはいなかったようだ。
コーヒーを飲み干して、店を出た。
僕はまだ、実家に戻る決心がついていない。
そしてまたフラフラと、通りを歩き始めた。
実家とは逆の方向に。
「五十嵐君」
後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。
また、守屋か。いや違う、あいつは九州だ。
「五十嵐君」
それに、あいつは「君」なんてつけない。
「五十嵐君」
よく聞くと、女の声だ。聞き覚えがあるような。
振り返ると、女の子が微笑んで僕を見てる。
「覚えてない」
覚えてなかった。
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