第7話 トキハメグッテキョウガクル

「あんたなんて産まない方が良かった……」


大ゲンカが終焉が迎え暫くしてから聞こえた。

押し入れの中。震えが止まったと思っていたがまだ震えていた。

小声で言っていたはずなのに、私の耳にはしっかりと聞こえていた。


あ、やっぱり私って要らなかった

要らなかったんだ。

生まれてきてごめんなさい。

後悔と、それに対する葛藤が頭を回る。


はっと顔をあげた時には、別の場所にいた。

「ハコ……?」

周りを見ると、誰もいなかった。

けど、しっかりと獣臭さや諸々の匂いが鼻に着く。

けど、私を縛る物は着いていなかった。

座りながら、当たりを見渡す。

1人……

また1人……

そっか、私はずっと独りだったんだ。

ライも、ルルも、ナナも、みんなが私のことを嫌っていたんだ。

それに気づかなかった、私が悪い。


すると、誰かが私を呼んだ。

段々と、辺りは暗くなり私を包んだ。

顔もなにも見えない。

真っ暗の中、誰かが


「アヤ、俺についてこい」

「やめて!私はアヤじゃない!!アヤはあのハコの中で死んだ!」

「じゃあ、お前は誰だ?」

「私は……私は……」

私ってなんだ?アヤじゃないなら誰だ?

え、だったら私ってもともと居ないのと変わらない。

なら、だったら、死んでるのと同じじゃんか

気づいた時には心の中から何かが溢れ出ていた。

カツ……カツ……とこちらに近づいてくる。

「じゃあ俺が君に名前をあげるよ」


「名前なんていらない」

段々と声が大きくなって、近づいてくる。


「俺が呼びたいんだよ……」

そう言って、止まった。


『クル』


「クル……?」


「今日からお前はクル」


なんだろうことさの気持ち、

クルっていう名前か凄くしっくりしてる。

あ、自分ってクルなんだ。


ここにいてもいいんだ。


優しい雨に打たれているようだ。


この清々しい気持ちは、いつぶりだろう。

何年も前?いや初めてだ。


「クル……」

そっと呟くと体のどこかがちくりと痛み、意識は飛んだ。

けど、そのまま倒れるかと思ったら誰かに支えられた。

そして、頭を撫でられた。

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