第5話 キズナモノガタリ

あの激動の一日からはや、1年がたった。

さすがにずっと体を動ける状態でなかった為に筋肉は落ちていたが、山での生活と、狩りのおかげで劇的に筋肉量が上がった気がする。

セミの抜け殻が辺りには転がっており、太陽が真上にある。

夏だ。


「行くか」

今日は、ナナから産まれたイチと、ルルから産まれたニニと、ルルとで狩りに行く。

他の犬たちは周りの散策と警備といったとこだ。

たぬきの毛皮で作った服と靴を履き、拠点からもっと奥へと進む。

山をどんどん駆け上がる為に汗が尋常ではない。

「みーんみんみんみん」

汗を拭いながら無い道を歩く。

ジリジリと照りつける太陽を睨みつけ「暑いね」と言うと、さすがにみんなもばてているらしく、近くの川によることにした。


「やっと着いた……」

いっせいに川の水を飲み始め私は後ろで何か近づかないか見張る役に徹する。

ここで襲われたら一溜りも無いから。

すると一斉に3頭が顔を上げ、耳を澄ます。

川を挟んだ反対側の茂みから二匹の小狐が出てきた。

1匹が足に傷を負っているらしく、か弱い声を上げながら泣いている。

川を挟んでいるため、さすがに動くと逃げられるのは確実だ。

だが、今夜の食事は必要だ。

生きるために、

これが弱肉強食の世界なのだ。

河原の石を拾ってぎゅと力を込める。

行けるか、これで怪我をおってない方の狐を仕留めて、手負いを含め3頭で囲めば今日のご飯だ。

「ざぁっ……」

足を開き足の指に力を入れる。

集中しろ。これで外せばここにいる意味が無くなる。

さすがに人間と、動物とではもともと持っている本能が違いすぎる為に自分で狩りをすることが出来ない。ほぼ不可能に等しい。

届く届く届くんだ。

いける!

「ビュン」

風を切って目標まで伸びて、そのままおちた。

「パチッ」

その音で一斉に3頭は川を抜け襲いかかった。

「キュンキュン」

高い鳴き声が聞こえなくなった。


だめだった。自分には生きている価値がない。

1人で狩りも出来ない。

何も出来ない自分を憎んだ。恨んだ、大嫌いになりたかった。けどやっぱり生きたかった。

「ごめん……」

通り過ぎる犬たちに声をかけるが体を掠って山に戻って言った。

結局2頭とも殺して、ルルだけが私のそばで座った。

「ごめんね……ルル。私みんなに迷惑ばっかりかけてる」

優しく撫でると尻尾を振りながら頬ずりをしてきた。

「私ってここからいなくなった方がいいよね」

そういうと、石のこすれる音が止んでルルがこちらをじっと見ていた。

「ごめん、なんでもない」

いこっか、と言って私たちは山を降りた。

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