第3話 ケッシン

「ねぇ!お母さん!お母さんここから出して!出してってば!」

何回もこのボロボロの箱の金網の扉を叩き手がジンジンとする。

金網がしっかりとしており力を込める1発がとても響く。だけど諦めたくなかった。

何日も、何日も叫んで、泣いて、最初は子犬たちが反応してたけどもうしなくなった。

この声を聞いてくれている人は現状母のみだと思う。

山奥の村ハズレ。叫んだ声は森を通り抜けやしないのだ。

3回目の雨が降ったくらいに、私は箱の柱に括られた。鎖が足に付けられた。

諦めないで何度も何度も箱の壁を叩いていたらその腕は重りが付けられて叩けなくなった。

そして、何もならなくなった。


2日に1回、太陽が真上に上がったくらいに母は、箱の中にぐちゃぐちゃの米を入れる。

動けない私を見て嘲笑しながら背を向き、そのまま坂をおりていく。

「くそ……くそ!!!!」

じゃらんじゃらんと不快な金属音がなり、どうにもならないこの思いをぐっと飲み込む。

「きゅーん」

「リリごめんね、怖かったね」

優しいリリがぐちゃぐちゃの米を口の中に入れてくれる。

「リリ、ありがとうね後はみんなで食べて」

少し困ったような顔をしてリリは他の子達と仲良くご飯を食べていた。

「ライ」

そう呼びかけると、ライは寄ってきて顔を擦ってくれる。

「ライ、私ねもう無理かもしれないの」

きっと何を言ってるのかはわかってないとは思うけどそのまま続ける。


「2日後私、あの人殺す」


何が出来る訳では無い。

四肢を封じられた私に今できるのは何も無いのだと思う。


けど、絶対に殺す


殺してやる


激しい憎悪


辛い頭痛に苛まれる日々


人間なんて


生まれた時からやめている


「ライ、外に出たらみんなで山奥で暮らそうね」


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