第2話 ジゴクノハジマリ

犬と、過ごし始めたのは私に物心が着いた時くらいだったと思う。

その頃、父と母はいつも大声で怒鳴り散らかし、その声に犬たちが反応して、吠えていた。

父は母の長い髪の毛をハサミで切ったりもしていた。

父、母、犬3つの違う音がいつもいつも聞こえてきてそれが怖くて怖くて、こんなのがずっと続くのが嫌で嫌で、私はいつも押し入れの中に隠れて、息を殺して泣いていた。

「やめてよ、お母さんを虐めないでよ」

そう何度も願い、神様にお願いした。


そして、父はどこかへ行き、次第に母の目は変わっていった。

ここから地獄が始まった。

まずは犬からだった。

3頭居た犬たち、「ルル」「ライ」「ナナ」は外の小屋に入れられた。何度もやめてあげて、と言っても私はぶたれ、それが怖くて言うのを辞めた。

母の気が向いた時のみ、餌を与えた。

水は常に雨水だった。

私も外に行き会いたかったけど、母はそれを許さなかった。

遂に私に、手が下った。

ある日、むちゃくちゃに殴られ何度も「ごめんなさい」と言ったけど聞いてくれなかった。

そして、犬の首輪を付けられた。

「やだ!嫌だ!やめて!やめてよ!!!」

首輪にリードを付けられて引っ張られた。

「ほら、あんたが出たがっていた外だよ」

狂気的な目をしていたあの時の母は、忘れられない。

自分へと向けられた怒号に、お腹の中から震えていたのを覚えている。


そして、3頭の犬の小屋に入れられた。

吠える犬、叫ぶ母。またこれが始まったと思った。


母が自宅へと戻ると、私は声をかけた。

「ルル、ライ、ナナ……?」

驚いたことに、この箱の中には、6頭居た。

「え、まさか……?」

希望を見た気がした。新しい命に出会えて嬉しかった。

こんな苦痛を少しでも紛らわせてくれたんだ。

けど、そこには「ナナ」がいなかった。

奥を見てみると、茶色犬が横たわって死んでいた。

「ごめんね、助けてあげれなくって」

そう言って、泣いた。

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