いつかの「最高」もやがて相対化される
物語の受け手としても作り手としても、かつての「最高傑作」が自分の中で相対化されてきてるなあ……と、最近感じています。
まず受け手として言うと、かつて最高傑作と見ていた作品の1つに、「暗殺教室」があります。
「マッハ20で飛び回る黄色いタコみたいな怪物が進学校の中学の落ちこぼれクラスの担任になって、その先生を生徒たちが1年以内に暗殺しないと地球が滅ぶ」
なんてぶっ飛んだ内容でありながら、
・基本的には優しくてたまに厳しい先生の教えによる、落ちこぼれ生徒たちの成長
・個性的な生徒たちの友情やライバルとの対決
・「生徒たち自身の手で先生を殺すことが絆の証明」という、がっつり少年漫画的な師弟愛
といった王道な部分も描かれていて、なおかつ全体のストーリーもきれいにまとまっていました。
そのため、同作は完結後もしばらく、自分の中では2010年代(テン年代)最高の少年漫画でした。
しかし、「暗殺教室」も完結して5年ほど経ちました。その間にも、同じくらい面白い漫画やラノベやアニメが続々と出てきています。
加えて、「暗殺教室」で提示された価値観も、
「社会が厳しいのは当たり前! 個人が生き延びられるかどうかは自助努力次第!」
というテン年代のそれです。その価値観を、自己責任論の限界が明らかになってきた2020年代の今、正直に言うと古く感じます。
そういう理由で、「暗殺教室」も自分の中で、「かつて好きだった漫画の1つ」として相対化されてきています。だからこの雑記でも、同作を取り上げたことはほとんどなくて、他の作品の話ばかりしてます。
ちなみに余談ながら、最近のジャンプ作品で自分が好きなのは、「Dr.STONE」です。
受け手として好きだった作品の話が長くなりましたが、作り手としても、自分の中で長いこと最高傑作だった作品があります。
具体的な内容は一応伏せますが、ネタの面では最高に頭を絞って考えたし、主人公にかなり感情移入して書いたため、そのおかげか同作はラノベ新人賞の2次選考を通過しました。
しかし今振り返れば、話の構成が拙かったなあ……と反省しています。
一方、先月末に新人賞に出した作品は、(自己評価では)魅力的なキャラも盛り込めたうえ、構成の面ではかなり「映画の王道パターン」に近づけられました。
だから、賞の選考結果が分かるのはまだ先ですが、自分の中ではすでに「かつての最高傑作を超えた!」という感覚があります。
言い換えると、作り手としても、かつての「最高傑作」が自分の中で相対化されています。これからも腕を上げ続ければきっと、今の「最高傑作」も、同じように相対化されるはずです。
この記事で何が言いたかったのかと言うと、
「単純な時間経過による記憶の風化や、経験による価値観の変化や実力の成長により、人は否応なく変わっていく」
ということかもしれません。
同じ感覚を持たれているかたに、共感していただければ幸いです。
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