第11話


 結局のところ、どれだけ俺がクールに生きると決めたところで、昨日の放課後にやらかしたことを消すことはできない。


 教室に入ったら、なにやら汚物でも見るような視線を投げられた。


 きっと昨日のだまし討ちが噂となって流れているのだろう。

 ちくしょう、涼葉め……。


 その涼葉は今日も保健室登校である。そんなコミュ障のせいで、俺の評判はどん底の底をつきやぶって下がっているわけだ。極限マイナス振り切った信頼をあげるには、もう本気で強くなるしかない。このエイシアにおいては第七感拡セブンスの強さだったり特異さがなにより重き価値基準になるらしいし。

 だってのに! 昨日の能力開発は失敗だった!!


 スルト超強いんだもん!!


 なに、あいつ、ちょっと近づかれるだけでなんかいろいろ燃えるしさ! そもそも、近づけないし!! レーヴァテインを使われる前に逃げることしかできなかったっての!!


 ああ、でも欲しいよな、レーヴァテイン。

 だって焔の剣とかマジクール。しかも名前がレーヴァテインだぜ。かっこよすぎる。

 使いたい、俺はレーヴァテインを、使いたい。


「おい、神門」


 いろいろ考えていたら担任教師の岩田先生が目の前に立っていた。岩田先生は二十代の男性教師でメガネをかけている。瘦せ型でひょろっとしているが、どことなく隙がない雰囲気だ。


「お前の状況も把握してるんだが……」


 と前置きしてから話をはじめる。


「学校のカリキュラムのなかにチームでの演習授業などがあるんだが、お前はまだどこのチームにも登録されてない」


 そういえば、そんなことが書かれたメールを受け取った記憶がある。


「すでに期限が切れてるから、学園側で勝手に編成することになった」

「そうですか……すみません、いろいろ手配、ありがとうございます」


 恭しく頭を下げたら、担任教師に怪訝な顔をされた。


「えっと……なにか変でしたか?」

「いや、以前のお前は、もっと人を小馬鹿にした態度をとっていたからな。俺としては今のお前のほうがいいと思うぞ」


 苦笑いを浮かべてから「前のお前は本当に……」と疲れたようなため息をついていた。生徒だけではなく教師からも悪い印象しかなかったのか……。


「もしかして俺って先生方のなかにも敵がいたりしますか?」


 担任教師は「まあ、どうだろうな」と言葉を濁した。言外に肯定しているようなものだ。


「とりあえず、チームカリキュラムに関しては担当の教師がいる。放課後にチームの顔合わせがあるから、参加するように」

「わかりました。わざわざありがとうございます」


 ぺこりと頭を下げたら「礼儀正しいのも、それはそれで違和感しかないな」とボヤかれた。俺も苦笑いで返すことしかできない。

 毎日ネガティブな情報が手に入るとか、神門刀義はすごい男だと思う。

 本当にいい迷惑だが……。


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