第36話 今日こそ!
「ロベルト様、今日はおめでとうございました」
「ありがとう」
ロベルトは槍の部門で危なげなく優勝した。予選だけでなく本戦でも相手を瞬殺していたのだが、本戦でもそれは変わらなかった。決勝はアレクサンダーとの対戦になったのだが、こちらは秒殺。今までの試合は全て、一瞬で槍を弾き飛ばすかへし折るかしての武器への攻撃による勝利だったが、決勝だけは相手に「まいった」と言わせての勝利だった。
観客席から見ていたキャロラインにはわからなかったが、試合中ロベルトはアレクサンダーに妹の暴挙についての忠告をしていたのだ。だから決勝だけ瞬殺にはならなかったのだが、この戦いにおいて、武器ではなく対戦相手に攻撃をしたのはこの試合だけで、これはロベルトの未熟さの表れでもあった。
武術の未熟さではなく、精神的な方である。
泰然自若として、何事にも動じないように見えて、まだ二十代前半の若者だ。しかも、恋愛が初めてで、キャロラインを溺愛し過ぎる傾向にあるロベルトが、プリシラの勝手な妄言とはいえ、ロベルトの代わりの相手にあげられたアレクサンダーとロイドに対しての鬱憤が、つい攻撃に影響してしまったということだった。
キャロラインはさすがに決勝ともなると、相手も強いんだろうなくらいにしか思っていないから、もちろん真相は秘密である。
「……あの、お祝いにというか……今日は……私……」
「うん?」
既にお風呂にも入り、ガウンの下にはアンリに買ってきてもらったお色気タップリなベビードールを着込んでいる。多少胸元がスカスカするのはしょうがない。
格好だけは気合を入れたものの、自分からロベルトに最後までしましょう!と言うのも恥ずかしい。
いつもロベルトに任せっばなしだったから、どうやってそういう雰囲気に持っていけばいいのかもわからない。
モジモジとガウンの紐をいじり、どうしても次の一言が言い出せない。
「さっきからどうした?」
「あの!……いえ、そう、大会で疲れましたよね?運動した後にはマッサージがいいんですよ」
「マッサージ?」
「上着を脱いで、とにかくゴロンとしてみてください」
なんとか、自然な流れでロベルトの上半身を裸にすることには成功した。その盛り上がる筋肉に見惚れながらも、キャロラインはロベルトをうつ伏せに寝かせると、その上にまたがって首から肩、背中にかけてマッサージをし始めた。もちろん、侯爵令嬢であるキャロラインにマッサージの経験なんかなく、前世でおじいちゃんの肩揉みをしたくらいだ。
「どうでしょうか?」
「ああ、気持ち良いな」
固くて指が全然入らないから、気持ち良いと言うのはお世辞だろうけれど、リラックスした横顔を見て、キャロラインは当初の目的も忘れてマッサージに没頭してしまう。
一時間かけてロベルトの全身をほぐし、キャロラインはやりきった感満載に額の汗を拭った。
「ふうーッ!コリ返しがこないといいんですが」
ロベルトは起き上がって肩を回した。
「うん、身体が軽くなった気がするな。ありがとう」
「いえいえ、これくら……い(ウワーッ!普通にマッサージしちゃったよ)」
本当は、ちょっと際どいところを触ったりして、ロベルトをその気にさせる筈だったのに、つい真剣にマッサージしてしまった。自分の馬鹿さ加減に頭を抱えたくなる。
「次は俺がしてやる」
「いえ、私は別に疲れることはして……な……」
ロベルトにガウンをサッと引き抜かれ、キャロラインはお色気満点のベビードール姿をさらしてしまう。見せる為に着たのだが、そういう雰囲気でもないのにこんな破廉恥な姿を見られるとか、露出狂にでもなった気分だ。
「ほら、うつ伏せになれ」
スカスカの胸元を隠すのに丁度良いと、キャロラインは言われるままにうつ伏せになる。自分の後ろ姿を確認していなかったキャロラインは、自分がどんなにエロイ姿をロベルトにさらしているか気づいていない。
背中はお尻ギリギリのところから紐で編み上げられており、キャロラインのほっそりとした腰のラインや白い肌などがあらわになっているし、短いスカートもスケスケだから引き締まってプリンと上がったお尻が丸見えだ。多分キャロラインも忘れているんだろうが、Tバックだから後ろから見るとノーパンのようにも見える。
ロベルトはキャロラインを跨ぐように膝立ちになると、あまり体重をのせないように気をつけながら肩甲骨の内側をグッグッと押す。
「ウッ……ウン……フッ……」
ロベルトが押す度にキャロラインの口から吐息のような声が漏れ、視覚からも聴覚からもロベルトの下半身を刺激する。
脇から手を入れ、上半身をひねらせるようにしながら肩を回させて肩甲骨のストレッチをすると、片方の胸がフルフルと揺れる。半分手が胸に当たっているのはわざとだ。
「……それ、肩にも効く……ウッ、気持ちいい」
「腰に負担がかからないように、肩を回している方の足を横にずらして曲げるんだ」
「こうですか?」
「もっとだ」
ロベルトはキャロラインの太腿に手をかけ、大胆に直角に開かせる。その股の間にロベルトの膝を入れて固定させた。
さっき真剣にマッサージに徹してしまったキャロラインは、ロベルトも真剣にマッサージをしているのだと信じて疑わない。たまに胸の尖りに指がかすめるのも偶然だろうし(そんな訳はない。わざとだ)、それくらいで反応しそうになる自分が恥ずかしくてしょうがなかった。
「ロベ……ルト……様、マッサージ……ゥウッ、上手くないですか?」
「そうか?マッサージというかストレッチだな」
それから、ストレッチ(という名目で)をする為に色んなポーズを取らされた。最初は恥ずかしくて身体が縮こまってしまったが、ロベルトが無表情で指示を出してくるものだから、その度にあっち向いたりこっち向いたり手や足を伸ばしたり曲げたりしているうちに、自分の格好も忘れて大胆に身体をさらしていた。
三十分ほどストレッチをして、すっかり身体は温まったキャロラインは、ロベルトをその気にさせるにはどうしたら良いかと頭を悩ませた。
毎晩ベッドを共にし、毎晩際どい触れ合いはあるのに最後まで至らないのは、やはり自分に色気が足りないせいなのかと凹む。こんなスッケスケの、いかにも誘ってますという夜着を着ているのに、一時間半もお互いにマッサージをし合うだけって、そもそもロベルトが自分に魅力を感じていないからなんじゃないだろうか?健康な二十代前半の男子ならば、途中で我慢できなくなって襲ってくるもんじゃないのか?
前世で周りの男子は、かなり開けっ広げに性的な話をしていた。好きとか嫌いとか関係なく、それこそ顔なんか二の次でヤれればいいみたいな話をしているのも聞いたし、実際にナンパして名前も知らないような相手で顔もタイプではなかったけれど、お持ち帰りできたからヤッてみた……みたいなことも聞いたことがあった。
ロベルトだって枯れた中年ではなく、性欲アリアリの若者の筈なのに……。
情緒も何もないけれど、スパッと全部脱いで、「今日こそは最後まで挿れてください!」って直球にお願いするべき?
いや、無理だ。
そんな恥ずかしいことは言えない。
キャロラインはロベルトをその気にさせることのできない貧弱な自分の身体に失望しながら、今日は一旦持ち帰ってアンリに相談してから最チャレンジしようと、脱ぎ捨ててあったガウンに手を伸ばそうとした。
すると、ガウンは素早くロベルトの手によってベッドから外に投げられた。
「えっ?」
「もう寝るつもりか?寝かせる訳がないだろう」
気がついたらベッドに押し倒され、ロベルトからの荒々しいキスにキャロラインの息が上がる。
「ロベルト様……」
「そんな格好をして俺を誘惑したんだ。この責任はとってもらわないとな」
キャロラインの下腹部に、すっかり逞しくなったロベルトのロベルト君がゴリッと当たる。
キャロラインは真っ赤になりつつ、でも初めてそれに手を伸ばしてみた。
「ウ……ッ、キャロライン」
ロベルトが腰を引こうとしたが、キャロラインはそれを優しく撫でる。
「今日は最後まで……最後までこれを私の中に」
「キャロライン!」
ロベルトは、性急にキャロラインに覆いかぶさってきて……。
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