第24話 初夜(若干R15)?

 まさか自分にこんな性癖があったなんて……。


 キャロラインはムキムキの筋肉に抱き込まれて、その温かさと弾力を両手でモミモミと堪能し、心ゆくまでロベルトの匂いを吸い込みながら、ロベルトの体中についた沢山の歯形に指を這わせた。


 昨晩、キャロラインはめでたくロベルトと結ばれた……んだろうか?


 キャロラインは昨日のことを思い出そうと、歯形を数えながら記憶を手繰った。


 ★★★


 ダンテは結局イザベラに言い負かされ、キャロラインをロベルトの屋敷に住まわせることを許可した。しかも、イザベラが責任を持ってこの婚約を認めさせるからと、キャロラインとロベルトの婚約誓約書を持って夫婦で王宮に乗り込み、王妃の伝手を使ったのだろうが、その日の夜には受理された婚約誓約書を持ってシュバルツ邸にきて、わざわざゴーを言いにきたのだ。


 なんの?って、もちろん二人の初夜のだ。

 あの時のいたたまれなさったらなかった。


 その後はてんやわんやで、いつもは一人でお風呂に入るんだが(前世の記憶が戻ってから、侍女に洗ってもらうのに抵抗があったから)、昨日ばかりはアンリと辺境伯家の侍女二人に隅から隅まで磨かれ、マッサージを受けて身体に香油を塗り込まれた。ついでに髪色も元の銀髪に戻され、ソバカスの化粧はすっかり落とされ、うっすらと寝化粧を施されていた。

 急に決まった初夜(婚約できただけだからフライングなんだけど)だったから、色っぽい下着がないとかネグリジェもないとかで、主にアンリが大慌てしていた。結局、下着はつけずに、ドレスの下に着る短いスリップドレスをネグリジェ代わりに着せられて、ロベルトの私室に突っ込まれたのだった。


 すでに私室でくつろいでいたロベルトは、膝下から丸出しで胸元も大きく開いたドレスを着たキャロラインを見て、一瞬フリーズしていたようだった。


「えっと……ごめんね、こんなかっこうで。アンリには似合わないって言ったのよ。でもほら、急にこんなことになったから……準備とかしてなくて」

「綺麗過ぎて……誰にも見せたくないな」

「こんな姿、ロベルト様以外には見せないから」


 こんなかっこうで歩いていたらただの痴女だ。屈めばおっぱい丸出し(豊満なバストがあれば、スリップとの間に隙間ができないから見えないかもだけど、スッカスカだから上から覗けば全部丸見え)だし、風が吹いてスカートがヒラリとめくれれば、お尻まで丸出しになってしまう。

 非常に心もとなくて、キャロラインは片手で胸元を押さえ、片手でスカートを押さえてモジモジする。


 以前に全てを見られたどころか、至していないだけでかなりグレーなところまで触れあってしまってはいるが、だからってスパッと素っ裸をさらせる程、キャロラインはさばけた性格はしていない。


「寒くないか?」

「うん、寒くはないです」


 暖房の魔導具があるから寒くはないのだが、こんなかっこうで私室に押しかけて、ロベルトに引かれたんじゃないかと思うと、心の芯が冷え冷えしてくる。


「ホットワインでもどうだ」

「飲んでみたい」


 お酒に強いのか弱いのかわからないが、とてもじゃないが素面でこんなかっこうはできないと、キャロラインはロベルトのに手をひかれてソファーに腰掛けた。ロベルトがグラスにワインを注ぐと、常温だったであろうワインから湯気がたった。グラスに蜂蜜を少量垂らし、シナモンスティックで混ぜると、レモンの輪切りを浮かべてくれた。


「温めたから、アルコールも少しとんでいるだろう」


 コンロいらずでホットワインを作ってしまったロベルトに、キャロラインは心から感心してしまう。そこそこ大きな炎を出すだけなら、火の属性の持ち主ならば誰でもできる。そこに指向性を持たせるのは難しく、また自分の思った通りの強さ(この場合は弱さ)にコントロールするのはより難しいのだ。

 それを事もなげにやってのけるロベルトは、魔法使いとしての資質も高いのだろう。


「……美味しい」


 甘めに作られたホットワインは、キャロラインの喉をスルスルと下っていった。

 お代わりをお願いすると、ロベルトは同じ物をすぐに作ってくれた。ロベルトは、ワインをそのままグラスに注いで飲んだ。


「フーッ、熱くなってきた」


 キャロラインは、パタパタと胸元を開けて手で風を送り入れる。頭一つ分以上高いロベルトからは、スリップドレスの中が丸見えになっているのだが、初めてのワインで頭がボーッとなっているキャロラインは気がつくことはない。

 あまりに魅力的な光景に、ロベルトは思わず唾を飲み込み、その予想外に響いた音をごまかそうと、ロベルトは盛大に咳払いをする。


「ウウンッ」

「どうしたの?風邪?やだ早く寝ないと」


 大きく喉を鳴らしたロベルトに、風邪による咳払いをしたのかと勘違いしたキャロラインは、ロベルトの腕に腕を絡ませてロベルトをベッドへ連れて行こうとする。

 もちろん、それを拒否する理由など一欠片もないから、ロベルトも腕を引かれるままベッドへ向かう。

 下着もつけていない柔らかい胸をロベルトに押し付けていることなど気づかず、キャロラインはロベルトの胸を押して、「エイヤッ」とベッドに押し倒そうとする。ロベルトはベッドに倒れ込むふりをして、キャロラインと一緒にベッドへ転がった。そして素早く体勢を替えてキャロラインの上に覆いかぶさった。


「あれ?」


 ロベルトの上にいた筈が、いつの間にかロベルトが上にいて、キャロラインはキョトンとロベルトを見上げた。

 そして、いつもならば見せないような砕けた笑顔を浮かべる。


「ヤバイ……視界いっぱい筋肉だ」


 キャロラインは、ロベルトのはだけたシャツに手を突っ込み、ペタペタとロベルトの大胸筋に触れ、「筋肉最高!筋肉万歳!」とグフグフ笑っている。


 いつもと違うキャロラインの様子に、ロベルトはそんなキャロラインも好ましいと、したいことをさせておいた。キャロラインはロベルトのシャツを完全にはだけさせると、楽しそうに筋肉を撫でくりまわす。


「うーん、絶対におっぱいピクピクできるよね。そう、それそれ。ヤバイ楽しい。ふわーッ、カッチカチにもなるんだぁ。お腹シックスパック。綺麗に割れてるゥッ」


 キャロラインの手がロベルトのお腹を撫で、「ポコポコだァッ」とケラケラ笑っている。キャロラインが喜ぶから、力を入れてみたり抜いたり、筋肉を動かしたりしてみる。


 とりあえず色んな部位の筋肉を触って筋肉を堪能したキャロラインは、ロベルトの下から這い出ると、今度はロベルトを上向きにさせ、そのお腹の上によじ登った。ロベルトの腰を跨ぐように乗ると、ロベルトの大きな身体のせいで足が全開に開いてしまい、スカートは太腿までずり上がってしまっているが、キャロラインに気にした様子はない。


 ロベルトがそんなキャロラインの太腿に手を這わせると、キャロラインは「擽ったいよ」とロベルトのお腹をペチペチ叩いた。


「キャロラインはもう存分に俺に触ったろ。次は俺の番な」

「えー、まだカミカミしてない」

「カミカミ?」


 キャロラインはロベルトの上に身体を倒すと、ロベルトの肩に齧りついた。どうやらキャロラインは筋肉を噛みたかったみたいで、たまにペロペロと舐めながらも筋肉の歯ごたえを楽しんでいるようだ。


 歯形はつくが、特に痛くもないからキャロラインの好きに放置して、ロベルトはキャロラインのスカートの中に手を入れた。下着をつけていない生尻に触れたロベルトは……。


 記憶が!

 ここらへんから記憶がない!


 二人とも、この時までは洋服を着ていたのは覚えている。しかし、今は二人共……一糸まとわぬ姿というやつだ。前の時は、ロベルトはズボンだけは履いていたが、なんとなく足に触れる感触から、ロベルトもスッポンポンだとわかる。


 うゥ……、やっぱり逞し過ぎるナニだ。

 こんなのが昨日ちゃんと入ったんだろうか?



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