第250話 姉妹の山修行
「貴方たち姉妹の二人であれば我々が只の町人や武士では無い事が解るであろう」
姉妹が泊まった翌朝の朝餉の後の茶の刻の龍一郎の言葉であった。
「貴方と奥方の二人の技量が解りませぬ、お前は解るか」
姉が妹に尋ねた。
「解らないわ、あの二人だけ」
「何と儂らの技前は二人以下じゃぞ、確かに儂には二人の技量が解らぬ、やはり下の者は上の者の技量は解らぬのじゃな」
「私は幼き頃より技を磨く事のみに刻を過ごしましたが龍一郎様には遠く及びませんでした」
「何故にこれ程、幼い、それも女子がこれ程の技量に成れたのか、龍一郎、何故じゃ」
「父上、心持ちに御座います、この姉妹は己の身を守る為、己の気持ちで己を鍛えたのです、対し三郎太は忍びの里で己の意思、己の望みでは無い鍛錬を言われるがままにしてきたのです、姉妹は己で己を強くする為に様々な工夫をしてきた事でしょう、その違いだけで御座います」
「爺、私は一番最初に山修行に行く前に邪魔に成らない様に備えて早朝に神社まで走る事を毎日やっていたのですが、刻に挫ける思いもありました、でも途中で母に見つかり中止になると思いました、この刻に止め無ければと言う残念な気持ちと止められるとの安心する気持ちの二つがありました、不思議ですね、でも母は一緒にやると言ってくれました、其れからはどんどん気持ちが膨らみ力も付いていった事を覚えています、姉妹も二人で励ましあった事も大きな事だと思いますよ、私は」
「舞、其方は技だけではのうて人の気持ちを察する力も付いた様だのぉ~」
「龍一郎様と舞様の言われる通りです、生きる為、死なない為、負けない為に兎に角、己を強く、身も心も強くしようと工夫しましたし、何方かが挫けると何方かが励ましました、一人だったら続かなかった事でしょう」
妹の後に姉が続いて言った。
「失礼とは思いますが、正直に申しますと私達は二人だけでした、ですが貴方たちには私達にも技量が測りしれない二人がおられる・・・何が有っても、何かがあれば、二人が助けてくれると言う拠り所があります、それが己を鍛える甘えに成るのではないでしょうか」
「・・・」
「・・・うむ、言われる通りじゃな、思い返せば何かに付け行き詰まると龍一郎、何かに迷えば龍一郎と皆が言っておった」
「確かにな~」
「そう言えば、其方らの名をまだ聞いては居らなんだな」
「姉の私は葉月、妹は弥生で御座います」
「ほほう、生まれ月が名か、良い名じゃ・・・がどちらのじゃ」
姉が佐紀に向き尋ねた。
「奥方様は何故にそれ程の技量になりましたのでしょう、隣に強い方がいるのにです」
「旦那様は私がどの様な技量になっても私と子の心配を為されます、私はその心配を減らせたい、その思いで旦那様の鍛錬に付いているだけです、旦那様が御一人で出かける刻もあります、そのおりに私と子が何があろうと安全であるとの思いでいてほしいと思うだけです」
「羨ましい限りです、私もそう思う伴侶に会いたいものです」
「二人の出会いを知ったらもっと驚くぞ」
平太が口を挟んだ。
「平太、今はその様な話をする場では無い、我らは其方らの様に山で鍛錬を何度もしており、今もその最中であった、だが急な支障ががあり中断しておる、このまま終り江戸に残る者、山に戻り鍛錬を続ける者と二通りに解れる、其方らはどうするな、其方ら次第じゃ」
「山に参ります」
姉妹の返答は即答であった。
「では、山に行く者、江戸に留まる者を確かめようか」
山へ鍛錬に行くのは、龍一郎、お佐紀、葉月と弥生の姉妹、小兵衛、お久、清吉、お駒、お高、誠一郎、舞、雪、富三郎とお景に子供たちである。
江戸に残るのは道場の守りとして三郎太、お有、雪の婆、料亭・揚羽亭ではお花改め揚羽、お高の亭主の板長
、船宿・駒清は正平夫婦である。
養老の里には既に平四郎とお峰が居た。
富三郎の元に弟子として来た、巳之吉と朋吉は里に戻り富三郎の弟子を続ける事となった。
因みに龍一郎と佐紀の息子は佐紀の実家に預けられる事が常となり実家は大喜びで奉公人たちも含めて可愛がられていた。
里へは十六名と大員数である為、二、三人の組に別れての出発となった。
姉妹の要望で龍一郎とお佐紀の四人でとなり、誠一郎と舞とお雪、小兵衛とお久、清吉とお駒とお高、富三郎一家に別れて前後を違いに警護しながらの旅であった。
それは、成田山詣での者たちの道筋から皆が外れ様とした時に起こった。
災難を恐れてであろうが三十人以上で詣での装束を着た者たちを突然、林の中から十人程が囲んだ、そして囲む人数がどんどん増え五十人を超えた。
葉月と弥生の二人は当然気付いていたが他人に構わない習慣が身に付いていて知らぬ振りをしていた。
龍一郎の仲間たちも当初は知らぬ振りをしていたが何時の間にか街道から姿が消えていた。
「葉月、弥生、皆が何処におるか解るかな」
「解りませぬ」
「里に参れば、皆の本当の技量が解ろう」
「・・・」
「お~い、爺さんたち、婆さんたち、痛い目をみる前に金目の物を置いていかね~か、年寄りが痛い目に合うとよ~、そのままあの世行きも有るぜ」
「襲われない様に大人数にしたんだろうがよ~、こっちの方が大いしよ、周りに役人なんていやしないし、武士だってよ、この人数じゃ誰も助けちゃくんないぜ」
「宿賃と食い物の銭しか無い、これを渡すと江戸に戻るしか無くなるのじゃが・・・」
参りの代表と思しき爺が言った。
何故かその後ろに小兵衛とお久が参りの装束で入っていた。
小兵衛が前に出ようとすると怒りを抑えたお久が先に前に出て返答した。
「お前さんら、痛め付けられた事もあるでしょう、その痛みを忘れましたか」
「儂は痛めつけられた事なんか無い、痛みなど知らん」
「知っている様ですね、嘘が顔に出ていますよ」
「煩せいなぁ~、今はそんな事~関係無いだろうが、退け、痛い目に合うぞ」
「皆さまの中に痛みを思い出した方は下がって下さい」
お久が大きな声で叫んだ。
一人、二人が林に消えた。
「そうですか、残念です、では皆さまには今度は忘れられぬ痛みを味わって頂きましょう」
お久が言った途端に林の中から龍一郎の仲間達が現れた。
「助けるのですか、成田山参りの方たちは皆さんの知り合いですか」
姉妹の妹、弥生が佐紀ら尋ねた。
「いいえ、中の二人は父と母ですが他の方は存じませぬ、父と母が居なくても見て見ぬ事は致しませぬ」
「皆さんに何の得があるのですか」
「損得で世の中の、自分の行いを決めるものでは有りませぬ、貴方、私達も参じますか」
「その必要もないでしょう」
四人が話している間に盗賊たちがばたばたと倒され左か右の腕が居られて行った。
統領と思しき男だけは両手両足の骨が折られていた。
「皆さん途中の役所で報告して下さい、さぁ、さぁ、先へ進みなされ」
小兵衛が参りの者たちに言った。
「お二人は行かれぬか」
「儂らは此処まででな、では此れにて失礼」
小兵衛とお久は違う道へと歩き出した。
「お待ち下さい、危ない処をお助け頂きありがとう御座いました。
私どもは江戸の両国橋近くの町役の集まりで御座います、もし、お近くへ御寄りの刻には茶などにお寄り下さい、お待ち申して居ります、小兵衛様、お久様」
「・・・そうさせて頂きます、では失礼致します、お気を付けて参られよ」
「ありがとう御座います」
参りの人達も周りで痛みに呻く者たちを恐ろしげに身ながら成田山へと歩き出した。
「ゆっくりとした歩みなのですね」
葉月が言った。
「貴方たちにはそう感じるでしょうね、此れでも普通の人の倍近い速さなのですよ」
「お二人には凄いゆっくりとした歩みでしょう」
「それも又良いものですよ、景色を、季節を、人の暮らしを観ながらです」
「・・・それは・・・」
それからの姉妹の歩みはもっと遅くなり景色を楽しむ様に周りを見ながらのものに変わっていた。
顔付も変わり張り詰めた面の様な顔に表情が少しづつ現れる様になって行った。
龍一郎たち四人がゆっくりと景色を楽しみながら山裾の村を通り里へと向かった。
「村の中にも何人かのお仲間が住んでいますね」
「そうです、村には刻に盗賊が来ますのでね」
四人は山道を登りながら里の広場に着いた。
「見張りの方達の気配には修行が必要ですね」
「お二人の技量が高いのですよ」
里の皆が龍一郎とお佐紀の周りに集まり挨拶を交した。
「お頭様、もう今回は戻って来ないとおもっとったげな」
「お佐紀様がおらんと花が光が消えた様で寂しいよぉ~」
などと声が行きかった。
「今回は別嬪さん二人が増えましたか」
「そうだ、葉月と弥生と言う姉妹が増えた、皆、よろしく頼む」
「任せんさい、此れだけの別嬪さんじゃ男衆がほっといても面倒見るじゃろ」
広場を横切り集会所に使われている建屋に入ると江戸を一緒に出たはずの皆が既に顔を揃えていた。
誰に言われた訳でも無く末席に空いていた席に姉妹の二人が座った。
龍一郎と佐紀は空いている上座に座った。
「ご苦労でした、少し刻が掛かりましたが出来は上々でした、これからも天狗様に願いがくる事でしょう、全てとは行きませんが出来るだけ御救いしたいと考えています、力添えをお願いします」
「はい」
全員が賛同の返事を返した。
「改めて言うまでも無いが我らの秘密は他の者には漏らしては成らぬ、場所も人員も全てじゃ・・・今日、新たに家族として迎えたい者を二人連れて参った、二人は姉妹、姉の葉月、妹の弥生じゃ、家族に成るならば挨拶せい」
二人は見つめ合うと頷いた。
「はい、私が望月葉月で御座います、よろしくお願い申し上げます」
「私は妹の望月弥生です、よろしくお願い申し上げます」
「しかし、そう言われてもどっちがどっちか解らんぞぉ、別嬪さんじゃと言う事しか解らん」
甚八がぼやいた、そうこの姉妹は双子なのである。
「そうかのぉ~、葉月より弥生の方が気が強い、中身は男の様じゃで直ぐに解ろうが」
江戸からの龍一郎の仲間たちは当然とばかりに平然としていた。
ここに来て初めて、江戸の道場で感じた自分たちの方が技量が上と感じた事が誤りであると姉妹は感じた。
「平四郎殿、里の守り、ご苦労でした、今朝の山修行は終わっていようが姉妹を入れてもう一度行きたい」
「はい、重しを準備させます」
「願おう」
富三郎が立ち上がった。
「私は富三郎と申します、皆が手足に何か付けている事は気か付いているでしょう、身体を鍛える為の重しです、二人の重しを用意しますので倉庫まで行きましょう」
富三郎の後を姉妹が付いて行った。
舞と同じ物では重過ぎ雪と同じ重しに手足共に当てた。
皆が待つ山裾に揃うと舞や雪や皆が背中に何かを背負っている事に気が付き姉の葉月が尋ねた。
「背には何か背負うておりましょうか」
「重しとして石を詰めています」
舞が直に応えた。
「我ら二人も背負いとう御座います」
「一度目はこのままじゃ、二度目に願いを叶えよう、では参る、其方ら二人は儂と佐紀の後に付いて参れ」
龍一郎が言葉の後に山を登り始めると佐紀が続き、龍一郎の言葉のままに姉妹が続き、その後を皆が続いた。
その道筋は一番容易なものであったが速さ格段に早く江戸からの者たちは付いて行けたが里の者たちはどんどんと遅れ出した。
途中で姉妹も遅れ出し江戸からの者たちに抜かれ里の者たちにまで抜かれ山頂には最後尾で辿り付き地面に倒れ込み息も荒いものであった。
二人が荒い息の中で聞いていると平太と舞と雪の声が聞こえた。
「そろそろ山も模様替えの季節だな」
「うん、花も木も変わりそうだったね」
「はい、後で木の実を取りに参りましょう」
「そうだな」
これを聞いた姉妹はあの激しい山登りの最中にも周りの景色、いや気配までも感じる余力があったのかと驚いた。
二人が息を整えながら周りを見ると寝転ぶどころか座っている者は誰もいず山頂の社の掃除をしている者や掃除、草取りなどをしている姿が目に入った。
二人を見詰めている龍一郎と佐紀に気が付くと龍一郎が言った。
「さて、降りようか、皆はもう解っていようが二人に言うておく、下りの方が難しい、石に足を取られ挫く事も有る下りの勢いに負けて息を切らせる事もある、気をつけよ、参る」
登りと同じ順序で走り下り出したが途中で姉妹の妹が石に足を取られ挫いてしまった。
直ぐに龍一郎が背負い、次に姉が挫いた刻には佐紀が直ぐに背負いそれまでの速さを凌ぐ速さで下り出した。
二人は理解した、二人の為に速さを遅くしていた、それも可成り抑えていた事を、そして今は皆の為に龍一郎と佐紀は速さを抑えている、二人を背負っているのにである。
広場に戻った二人を草上に寝かせると痛みの箇所を確かめ薬を用意させ舞と雪に手当を命じた。
「明日には歩けようが鍛錬は無理じゃ明後日まで動くで無い、良いな、無理をすれば直りが遅くなり、後々に深い症状が出易くなる」
「言う事を聞き為され、我が亭主殿は蘭方医でもあるでな」
龍一郎と佐紀が二人に優しい言葉を掛けた。
「山修行は終りじゃ、皆は朝もやっておろう、続きは平四郎殿に任せよう、頼む」
「畏まりました、木刀から始める支度せい」
姉妹の二人は舞と雪の治療を受けながら木刀の修行を見ていた。
「昔を思い出したわ、私も張り切り過ぎて足を何度も挫いたもの」
舞が己の失敗の過去を語った。
「足を乗せても動かぬ石を見つけるのは大変よ、それを瞬時に判断する、そしてそれを意識せずに出来る様にする、周りに意識をやっても出来る様にする、ここまでには相当な刻が掛かるわよ」
姉妹の二人よりも先に雪が「はい」と返事を返した。
二日後の夜、龍一郎はもう一日の静養を姉妹に命じた。
二人は二日の間、皆の鍛錬を見続け、己ならこうする、ああすると考察し続けた。
その間も富三郎が考え出した腕の力と握る力を強くする器具を使って鍛錬していた。
姉妹は龍一郎の判断をしっかりと守り三日間を安静に過ごした。
四日目の朝、皆よりも早く起きると広場の周りをゆるりと歩く事から始め少しづつ早くして行った。
最後に姉妹は全力で走り何事も支障が無い事を確かめた。
その様子を小屋の前で江戸組が全員揃って見ていたが姉妹は満足して小屋を向いた刻に気が付いた。
小屋の前の全員が微笑みを浮かべ姉妹の復活を喜んでいた。
「良くぞ耐えた」
「其方ら姉妹は実に凄いのぉ~、この中に見習うべき者がおろう」
「私で御座います」
佐紀以外の女子衆が声を揃えた」
「平太、其方の声が聞こえ無んだが」
小兵衛が咎めた。
「私は以前の私では御座いませぬ」
「おぉ~、これは失礼致した」
「まだ刻も御座います、中で一休みなされ」
佐紀が優しく姉妹に声を掛け皆が中に入って行った。
姉妹の不得意は持続力の無さ、剣技の未熟に有った。
剣の抜き打ちは修行した様で、それなりに早いものであったが一刀目に重きを置くものであった。
龍一郎が勧める抜刀術は一刀目よりも二刀目、三刀目にて仕留め事に重きを置いていた。
かと言って一刀目が遅ければ当然二、三刀目など無い。
ある日、葉月に佐紀が言った。
「木刀でも真剣でも良い、抜き打ちにて私を切って見なされ」
「真剣でも良いのですか」
「どうせ切れはせぬ、掠りもせぬ」
佐紀には雌らしく挑発の言葉を吐いた。
葉月が真剣を腰に差し抜き打ちの構えをし、間合い姉妹を開けた処に佐紀が竹刀を右に垂らして待った。
「其方の抜き打ちは待ちの様ですね、では、私から参ります」
佐紀がそう言うと右に竹刀を垂らしたままに葉月に近づいて行った。
葉月が佐紀を斬ったと見えた次の瞬間には佐紀の竹刀が葉月の眼前で止まっていた。
佐紀が葉月の真剣を竹刀で押さえながら後ろに下がり間を開けた。
「其方の抜き打ちは二の手、三の手を考えてはおらぬものですね、工夫しなされ」
これは皆の抜き打ちの鍛錬を真似様としない姉妹に佐紀が示したもので有った。
次の抜き打ちの鍛錬から二人は皆を見習う様になっていた。
皆が龍一郎の説く上達の為の鍛錬の心構えを全て姉妹に教えた。
利前流の抜刀術、仙花(センカ)も指導した。
仙花(センカ) – 花の鳳仙花(ホウセンカ)からきており、この花の種が弾ける様に、親指で玉を弾き当てる技であり、山修行の登り下りに小石を弾き鍛錬をしているとも教えた。
二人の上達の為の熱意は凄いもので早かった。
だが誰でも陥る壁に突き当たった。
姉妹はその壁の超え方も知っていた、只々飽きられずに鍛錬を続けるだけなのである。
「其方らは剣技を使う務めをしたいのか、只の町人として過ごしたいのか、それとも我らと同じ様に事が起きれば武人になり普段は町人として過ごすか、我々の元を去るか、其方らの選択に任せる」
「皆さんと同じ暮らしがしたい」
今度の返事は二人の事前の目配せも見つめ合う事も無い即答だった。
町人の営みは料亭の女中、船宿の女中、道場の賄い、橘道場の守り、丘屋敷の警備、里の守りなどがあるが望みはあるか」
「私は佐紀様のお供に成りたい」
姉の葉月の選択だった。
「私は丘屋敷の警備を試して見たい」
妹の弥生の選択だった。
「良かろう、佐紀の共は雪と決まっている、当面は二人で当たれ、丘屋敷はまだ完成しておらぬ、建てる手伝いもあると思うが良いか」
「構いませぬ」
「我らは道場を長期に渡り留守しし過ぎた故に戻る、その前に丘屋敷を見て参る、其方ら姉妹は現在の技量の最終段階の確認の後に道場に参れ、儂が技量を試す、技量には葉月き女中としての仕来り、作法の心得も服乗れると思え、弥生も身に着けて置く事じゃ、知識は多くて困る事は無い、因みに皆は即座にどの営みの者にも化けられる。」
「龍一郎様、新たに試みました、穴倉の天井のレンガ仕上げが明後日の予定です、如何でしょう」
「良かろう、明後日、レンガのに送りが有れば一緒に出かけよう、処で双角は任を熟しているかな」
「今では無くては成ら無い存在で御座います」
「安心した」
「双角には次の任を考えてある、慈恩にもじゃ、丘屋敷に同道いたす故、伝えて置いてくれぬか、暫くは里には戻れぬとも伝えて貰いたい」
「良一郎も其方か一体何を目論んでいるのじゃ儂らにも手伝わせてくれぬか」
「・・・はい、此れより、私の目論みをご説明申し上げ、皆に手伝いをして貰いたい」
長々と龍一郎の腹積りが語られ皆は龍一郎の先を見越した思惑に感嘆した。
「佐紀は聞いていたのか」
「いいえ、ですが、幾つかの思いは当たっておりました」
「流石に夫婦じゃのぉ~」
「そうと分かれば支度じゃ」
小兵衛の号令で皆が動き出した。
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