第147話 予備戦

そしていよいよ大会日を迎えた。

幸いにも出火は無かった。

大会の開始は朝の五つ刻(8時)頃の予定で上様の到着に合わせてと決めてあったが、何と上様が四半刻も早く到着なされ若干ではあるが式辞が早められた。

上様はこの催しに合わせ急遽建てられた小さいとは言え御殿の様な様式の建物の御簾の内側に着座された。

勿論、その間に話声は一切聞かれず頭を上げる者も一人もいなかった。

御簾の外の板の間では庶民と同じ様に平伏した大名、幕閣の面々が居並んでいた。

その後、大目付による式辞が述べられたが余りの賑わいに短縮され、試合の決まりの説明になると逆に水を打った様に静まり帰りその声は遠くまで響き渡った。

只、その静けさも第一試合の組み合わせが発表されると大喝采と共に終わりを遂げた。

そんな賑わいの中、十の会場で試合が始まった。

出場者だけでも二百人を越えており名簿通りに組み合わせを発表する事させ難儀していた。


それぞれの会場での結果が詰所に伝令掛かりに寄って知らされると記帳掛かりが結果を記入していた。

各会場では事前に決めせれた組み合わせ表に従い出場者の名前が呼ばれ姓名の確認の後、試合が始められた。

出場者には予めどの会場の何試合目かの紙が渡されてあったので試合は殆ど滞りなく勧められた。

得物つまり武器は竹刀か木刀で両者の合意が得られた物を使い、合意が得られぬ時は竹刀とした。


二試合が終わり出場者が四分の一になった時点で会場が三つにされた。

杭が四本打たれその杭に縄が張られただけの物であったので撤去も簡単な事だった。

残りは成人の部が六十二名、女子の部が十四名、少年の部が十三名だった。

この時、上様から急遽の要請があり会場が一列になった。

これで観客全員の目が只一つとなった会場に注がれる事となった。

この計らいには見物人たちも大喝采で答えた。

女子と少年の部に比べ成人の部の人数がまだ多い為、三つの会場で成人の部の三戦目と四戦目が行われ成人の部の人数が三十一名になり十六名になった。

この時点で成人の部で残っていた者たちのほとんどが読売で予想されていた者達だった。

無論、龍一郎と仲間たちは全員勝ち残っていた。

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