第144話 御座所
大試合を一月後に控えた日、関係者が橘道場の詰所に集まった。
その中で勘定方が資金が乏しい故に上様の御座所は天井が無く天幕で囲む事しか出来ぬと言った。
すると能登屋の番頭が資金の追加を申し出た、その代わり設計は任せてほしいと言った。
この言葉に警護担当の近習衆が仕掛けをされては困ると率直な意見で答えた。
それに対し番頭はこう答えて納得させた。
「千代田のお城の改修や東照大権現様の東照宮の改修も任された宮大工に願いますで、ご安心下さい、絵図面を書いてもらいますのでまずは、そちらを見てからにしてください」
五日後に宮大工が持って来た絵図面には屋根もあり御殿の様な入口もあり御簾まで付いていた。
これには疑念を口にしていた男も大いに喜び賛成側に回ったが勘定方だけに資金を口にした。
たまさかその日参列していた勘定方の奉行が言った。
「資金の三千両であるがな~恥ずかしながら幕府からでては居らぬ」
「えぇ~、それではこの大金はどこから・・・まさか、そんな」
「そのまさかじゃ、故に主催は上様じゃが、勧進は違うのじゃ、その金主が・・・いや勧進方に任せる事じゃ」
「能登屋殿、加賀屋どの、某知らぬ事とは言え失礼致したご勘弁下され」
「いえいえ、上様の身を案じ幕府の財政を案ずる貴方様は素晴らしいお方です、これをご縁に末永いお付き合いをお願い申し上げます」
この勘定方の男、名を「江尻準之助」と言う。
素直で実直で疑う事を知らぬ、今時珍しい青年だった、勘定方なれど武士は武士と剣技の修練を怠らず行っていた。
将来、この男は龍一郎の仲間となるのである・・・がそれはまだまだ先の話である。
---------------------------<御簾>-----------------------------------
御簾(みす)とは、特に緑色の布の縁取りなどをした簾のこと。「ぎょれん」とも読む。
大名や公家などが部屋の中や外を分けるのに使われていた。
かかげ方は、内巻に巻き上げると定められている。
--------------------------------------------------------------------'
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます