第143話 大試合の決まり事

読売を通じて世に名の知れた剣者が出ると知れている為出場希望者は少ないと見られていたがなんと成人の部で二百名を越え女子の部は五十名を超え少年の部は七十名を越えていた。

当初、会場を橘道場と考えていたが、これも出場者の道場では如何なものか・・・と再検討され、次いで南北の奉行所の剣道場が上げられたが希望者の対応には道場も小さく尚且つ多くの見物人を考慮すると不向きだった。

その次に千代田の城内の剣道場が上がったが警備の問題で破棄された。

出場者、見物人が城のあちこちに行くことが考えられたからだ。

そこで考えられた処が高田の馬場だった。

五十尺(約15m)四方を杭と縄で仕切り試合場とし、それを幾つも作り上位者に絞るのだ。

成人の部を六つ、女子の部と少年の部を二つづつ作る事になった。

それぞれの試合場の間を十分に開け出場者の控えの場所と見物の場所を確保する事となった。

問題はどの時点から上覧とするか、つまり上様がどの時点から見たいと言うかであった。

だが、関係者には下知の想像は付いていた、最初から見ると言う事をだ。

剣術好きの上様の事、故にと言う訳だった。

そこで上様が全てを見通せる様に桝割りを成人の部を三つ二列、女衆と少年の部を一つづつ二列作る事にした。

残る問題は審判だった、江戸中の日乃本中の審判に相応しい人物は殆どが出場者だった。

上様の剣術指南役に願う事まで考えたが柳生門下も参加している為これも却下された。

そこで出場者より剣技は劣るが権威のある南北と寺社の奉行所で剣技に長けた与力・同心達を三十名選抜し桝ごとに三名づつ付ける事とした。

最後に対戦相手はくじ引きにて決定する事とした。

最初の一回だけのくじ引きか、試合ごととくじ引きかで一時検討する時間もあったが、試合が終わった者から順にくじを引く事で時間の短縮を図れると言う事でこれも決定した。

開催日は弥生三月の初日よりと早々に決定していた。

差したる理由も無く誰かが言い出し反対する意見も無くすんなり決まった。

当日、雨の場合は翌日以降地面が乾き試合に不具合が無いと判断されるまで延期される事も決定した。

この見分役は審判の一人に任命された南町奉行所・与力・ 浅井 十兵衛に任された。

弥生三月の月番が南町奉行所である事が理由の一つでもあった。

こうして全ての事が決定し例に寄って高札場への啓示と読売を通しての告知がなされた。

無論、そこには主催に上様の名が勧進として加賀屋と能登屋の名が書かれていた。

この布告に寄り街中では、いよいよ剣術熱が沸騰し女衆の部と少年の部がある事もあり男衆だけでは無く女、子供も話題はこれだけとも言える程になって行った。

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