第142話 出場者

大会の詰所を橘道場に設けたが出場する人間がいる道場に申し込みに来ると言うのも可笑しな話だ・・・との事で申し込みは南町奉行所で行う事となった。

巷の評判通りの剣士が申し込みにやって来た。

薩摩示現流-南郷淳一郎

鹿島新当流-池端勝之進

一刀流-前原弥二郎

中条流-富田勇之進

無外流-安田治五郎

新陰流-池田安二郎

以上が勝者の候補である。

無論、橘小兵衛、龍一郎親子に平澤平四郎も名を連ねていた。

只、巷の予想外の剣士も登録した。

柳生新陰流 -鰐淵俊三郎

柳生新陰流 -井上歳三(尾張柳生)

まさか、柳生が出て来るとは、それも尾張柳生までもとは、南町奉行所に張り番をしていた瓦版屋が驚き慌てて店に戻り直ぐに版木屋に頼んだ程に驚きだった。

巷では一機に勝者の候補が入れ替わり柳生の二人と示現流の一人の三人が上位になった。

読売の中には「上様の命令ではないか」とか「柳生が日乃本一の証明に」などと書き立てるものもあった。

龍一郎ら三人は最近、名を上げてはいるが長年の流派独自の評判は無かった。

第一、三人には流派は無いのだ、上げるとすれば橘流になってしまうほどに、いろいろな流派の寄せ集めだった。

男衆の部では既に三十名の登録があり、女衆の部では十名、年少の部でも十名であった。

女衆の部にはお久と佐紀が既に登録し、年少の部には舞が登録していた。

仲間たちの予想に反し平太が出たいとは言わなかった。

小兵衛は三郎太に聞いていたが訳を尋ねるとこう答えた。

「俺は影の者で居たい」


街々の剣道場では連日の見物客でごった返していた。

街々の医者も人々で溢れていた。

道場に見物人が増え門弟たちが良い処を見せようと張り切り怪我人が出て結果、医者に掛かる人数が増える、と言う訳だった。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の例え程の複雑さは無いが奇妙な連携関係が成り立っていた。

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