第138話 上覧武術大会-計画

それらの読売は将軍・吉宗も手にしていた。

「角兵衛、儂も誰が日乃本で一番強いのか知りたいものじゃ、のう、そうは思わぬか、じぃ」

角兵衛、じぃ・・・と呼ばれたのは御側御用取次の加納 久通(ヒサミチ)である。

「はい、私めも知りとう御座います」

「うむ・・・じぃ、儂の呼びかけで強い者たちを集めて競い合わせる事は出来ぬか」

「出来ます・・・ですが・・・莫大な金子が・・・」

「何・・・それ程の金子が要るか・・・倹約を唱える儂が莫大な金子を使う訳にもいかぬ・・・か」

「左様で御座います」

「・・・そうじゃ、町屋の分限者に金主になってもろうてはどうじゃ」

「えぇ~、はぁ~、町人に金子を出させますか、出しましょうか」

「読売が沢山売れたのであろう・・・町人にも剣術は人気なのじゃ・・・話によると分限者は特に剣術好きが多く道場にも見に行く程だと言うではないか、中には道場に金子の援助をしておる者もいると聞いた・・・どうじゃ、やってみても損はあるまい」

「上様の御名で公募致しますので・・・」

「無論じゃ、何か問題でもあるか」

「それでは、上様の御名に・・・将軍の名に・・・」

「儂の評判や名の栄誉などどうでも良い・・・江戸の街の活気が盛り上がれば良い・・・は建前で、やはり誰が一番強いか・・・知りたい、のお~じぃ」

「上様がそこまでの御覚悟ならば、じぃも力を尽くしてみましょう・・・いえ、龍一郎様にご相談してみようか・・・と」

「おぉ~そうじゃ龍一郎がおったわ、其方、道場に通うておるか」

「はい、暇を見ては、いえ暇を作っては通っております、我ながら良く続いておるものと思うて居ります」

「羨ましいのぉ~儂も行きたい、龍一郎は息災か」

「はい、相変わらずの強さで御座います、まぁ~私などが見極める訳も御座いませぬ・・・が」

「金子を出させて虫の良い話じゃが、剣術会を開く条件として先の七日市藩の剣術指南役の公募のおりに残った二人を参加させる・・・のはどうじゃ」

「おぉ、旨い手で御座いますな、上様は策士ですな」

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