第106話 評定

南北両奉行の行動は素早かった、昨夜捕縛した首謀者らの市中引き回しの上の獄門を求める為に次の日の朝、つまり今日の朝には評定を申請した、その為権三の捕縛が昼過ぎになったのである。

そして老中からその日の夕刻には特別評定が翌日に開かれる旨の通達があった、それには読売が大きく寄与していると予想された、事実その日の内には城中でもこの読売が話題しなり奉行所の与力・同心が関与している為庶民感情を鑑み早急なる既決が求められたのである。


-----------------[獄門]----------------------

獄門は、庶民に科されていた死刑の一つで、打ち首の後、死体を試し斬りにし、刎ねた首を台に載せて3日間見せしめとして晒しものにする刑罰の事である。

元は獄舎の門前に首を晒したことからこの名前が付いたとされ、財産は没収された。

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翌日には評定が開かれ南北奉行、勘定奉行、寺社奉行の三奉行に老中が参加し申請通り店の主人、腹心と用心棒頭は市中引き回しの上獄門、他の配下の者達は遠島と決せられその日の内に与力から本人に告げられ読売を通して市中に知らされた。

無論、その日捕縛された権三一家もこの中に含まれており異例の素早さに江戸中が驚き喝采を送った。

そしてその翌日の朝には南町奉行所で全員が集められ新たな人事が発表された。

実務の長たる年番方与力には関口 孫右衛門、筆頭同心には浅井 十兵衛が指名され、商人から少ないながらも心付けを受け取っていた与力達は新たな年番方与力に同心は浅井 十兵衛に別室に呼び出され「行い改めぬ時は本年限りの勤め」と言い渡された。

只、奉行所の与力・同心の給金は薄給の為、強要では無い心付けは認められた・・だがそれは奉行所に申請し奉行所が正式に認め領収書を発行する・・・と宣言した。

この奉行の決断には奉行所の与力・同心がこれまで就任してから目立たなかった大岡の腹の植わり具合に驚き見る目と態度が大いに変わった、無論畏敬へと良い方へである。

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