第105話 捕り物-その三

読売屋の銀八が遅い昼餉を仲間と食べ終え茶を飲みながら話こんでいた。

銀八も皆も朝餉も抜きで働き、ましてや銀八は昨夜は殆ど寝ていないのである。

疲れと食後と満足感でそろそろ眠気が出てくる頃合いと思っていた。

「今日は売れに売れたなぁ」

「こんな日五日に一度位でないものかねぇ~」

「そりぁ~無理ってもんだぜ、第一同心が迎えにくるなんてのは聞いたことねいぜ、ほんとにほんとかい銀八の兄貴~、ありぁ今にも寝ちまいそうだね」

「おぉ本当だぜ、玄関が叩かれてな、そう今の様に叩かれてな、開けるとそう今の様に開けると十兵衛が・・・ありぁ・・・うへぇ、浅井十兵衛様、昨夜はありがとう御座いました。大売れの大売れで御座いました。

麻沼ならいざ知らず浅井さんが謝礼の金子でも無いし・・・うむ・・・何の御用で御座いましょう・・・や」

なんと浅井十兵衛の話をしている最中に本人が現れたのである・・・から驚きである。

一緒に話ており、嘘だと疑っていた手下など、余りの驚きに煙管を咥えたまま言葉も無かった。

「お奉行がおぬしをいたくお気に入りでのぉ~、これから捕り物じゃが同道するか・・・するなればもう一人の読売屋も一緒に南の役所へ来い、おぬしが来ぬならば儂がこれからそ奴を連れに行かねばならぬ・・・どうするのじゃ、行くのか行かぬのか返答せい」

「行きます、はい、行きます、みんな後を頼む、それからもし夜に間に会えば夜版を出す、その用意もしておいてくれ、頼む。じゃ~おら~いっち来るぜ。旦那、お待たせしました。」

「じゃ俺は一旦役所へ戻る、奴を連れて来てくれ、時刻は半時以内じゃ遅れたら置いて行くぞ、良いな」

「それを先に行って下さいよ、旦那、じゃ必ず行きます、行きますからね~」

と叫びなから素っ飛んで行った。

「奴も若いなぁ一睡もいておるまいに仕事となれば眠気も飛ぶか・・・・儂も年かなぁ~」


「お奉行、恐れながらお尋ね申します。本日はどちらの・・誰を捕縛に参られますや」

「冬木・・・・弥十郎、行き先が気になるのかな」

「い・いえ、その様な事は・・・・」

「ならば良い・・・・おぉ、そうじゃ大事な事を忘れておった。今日の捕り物の指揮はおぬしに任せる」

「は~あ~、わたくしめに御座いますか・・・・先任の関口様もおられますが」

「いや、本日はその方に任せる、何ぞ不都合でもあるのかな」

「い・い・いえ、その様な事は有ろうはずも御座いませぬ」

「良かろう、ではそなたに任せる。安心致せ孫右衛門には既に言うてある」

捕り物隊は奉行を先頭に一路現場へと向かった、但し相変わらず行き先は奉行しか知らない。

大岡は一隊を北に東に西に南にとあちらこちらに引きずり回し一同が「訝しい」と思い始めた頃に突然歩みを止めた。

「冬木、そこな料亭・安曇屋・主人並びに一族、一家諸共捕縛致せ」

「は、はい、しかし主人嘉吉は岡っ引き、十手持ちに御座います」

「解っておる、この者十手持ちを良い事に近隣の商売敵の料亭に悪事を成し、強請りたかりに至っては近隣はおろか日本橋、果ては品川、千住にまで手を伸ばしておる。その証は既に我が手中にある、故に安心して事に当たれ、良いな・・・何か不都合でもあるのかな、弥十郎」

「い・いえ何も御座いませぬ・・・・証が・・・本当に証があるので御座いますか」

「其の方、奉行たる我が言葉を疑うや」

「め・め・滅相も御座いませぬ」

「では早々に回りを固め捕縛じゃ」

「ははぁ」

「判っておろうな、指揮を執ると言う事は栄達も望めようが・・・罰もあると言う事ぞ・・・心に留め置け」

「ははぁ」

弥十郎はごくんと喉を鳴らして返事をし皆を集め指揮を執り出した。

「あ奴、いかが致しますな、お奉行」

「小兵衛殿、儂の腹は決まっており申す、如何に働こうとも、あの者に取って本日が捕り収めです・・な」

「うむ、良う申された、それでのうては改革はできますまい」

「おぉ、忠相、小兵衛殿に賛同戴き千人の味方を得た心持ちです」

「うふふ、お奉行も大仰な・・・・さて、平四郎、誠一郎、我らも参ろうか・・・清吉は既に弥十郎の側で監視の任に着いておる故な」

「小兵衛殿、本日も龍一郎殿は来ておらぬ様ですなぁ~」

「倅は居るのか居らぬのか・・・・儂にも判り申さぬ」

「はぁ今何と・・・倅と申されましたか・・・・龍一郎殿がご子息・・・と」

「左様、龍一郎は我が倅、養子に御座る」

「何と・・・・小兵衛殿は・・・・」

「龍一郎の出自は存じており申す、仔細は龍一郎から聞くが宜しかろう、では参るぞ」

「承知」

「はぁ、ご隠居・・・ありがとう御座います」

平四郎、誠一郎が答え平四郎は右手へ小兵衛は裏手へ向かい最後に誠一郎がゆっくりと正面に向かった。

小兵衛は誠一郎を父たる奉行の側に留め置く布陣を敷いた。

その布陣に対し誠一郎が小兵衛に礼を言ったのである。

「誠一郎・・・・殿、良しなに・・願う」

「畏まって候(ソウロウ)」

大岡は倅の後姿を見つめながら己が知る倅では無い青年を見つめた。

そんな感慨に耽る大岡に声が掛かった。

「お奉行、倅殿の変化にご満足では御座いませんので・・」

「おぉ、龍一郎殿、久しいのぉ~此度は何から何まで忝い。捕り物も倅もな・・・・倅の変化に不満は無い・・・無いが余りの変化にのぉ~身体はまだ子供なれど物腰、言葉使いが・・・青年を通り越して壮年の様でのぉ~何やら寂しさを感じてしまう・・・・・子離れしておらぬ親がここに居る様じゃて」

「ご心配めさるな、技は鍛えられ言葉使いも覚えましたが中身はまだまだ子供に御座います。今は父であるそなた様に成長を見せたいと思うておるだけで御座います・・・・・しかと見届けて上げて下され」

「うむ・・・承知した、そなたは凄いのぉ~倅が慕うのが良う判る・・・・正直、儂はおぬしに嫉妬して居った・・・倅のおぬしへの信服振りにのぉ~、じゃが今良う判った、そなたの思慮深さ・・・度量の大きさ・・がな・・・・百万石の嫡男とは思えぬ、世の苦労を知り抜いておる・・・儂の方が世間知らずよ」

「それもご心配めさるな、五年、十年と会わねば私など只の思い出になりまする、しかし、貴方様は何時までも頼れる父親で御座います」

「・・・・成る程・・・・ほんにそなたは・・・・倅が信服、尊敬、敬服するのが良う判った・・儂も今日・・いや本日只今よりそなた様の信者、従者と成らせて戴く・・・・良しなに宜しくお頼み申す」

「ご冗談を、友で良いではありませんか、失礼ながら私の方がかなりの年下では御座いますが」

「親分、子分に年など無関係に御座る」

「おぉ、そんな事より倅殿が動きますぞ」

「おぉ、目に留めようぞ」


与力・冬木が皆の配置を確かめ店前で大声で呼び掛けた。

「南町奉行所である、料亭・安曇屋・主人勘三並びに一族、一家の者共~神妙にお縄に付け~い」

慌てて手下の日頃は下っ引きの一人が出て来た。

「な~んだ、冬木の旦那じゃありませんか、脅かしっこ無しですよ、どうしたんです今日は大勢の捕り方を引き連れて・・・・あぁ親分を連れて捕り物ですね、判りました親分を呼んで来ます・・・あ~ぁそれより何時もの様に一緒に奥で一杯いきましょう・・・よ」

「ええい煩い他へ捕り物に行くのでは無い、其の方ら安曇屋一家の捕縛じゃ神妙に致せ」

「冗談は止して下さいよ冬木の旦那・・・・」

下っ引きは冬木の真剣な眼差しにごくりと喉を鳴らし奥へ素っ飛んで戻って行った。

「南町奉行所である、料亭・安曇屋・主人勘三並びに一族、一家の者共~神妙にお縄に付け~い」

冬木が再度、大声で呼び掛けた。

奥からどかどかと音が聞こえ勘三が下っ引きや店の用心棒を連れて現れ捕り方が囲む周りを見渡した。

「冬木の旦那、冗談じゃ無い様ですね・・・・向こうに居るのはお奉行ですかい、成程、そう言うこってすかい・・・・あっしをお縄にしたんじゃ旦那の・・・・あぁ、殺すつもりですかい・・・だけどねぇ旦那、あっしのお調べができてる様じゃ旦那の悪行もばれてますぜ」

「お前がいなければ、何とでもなるわ」

「良いんですかねぇ~下っ引きも用心棒も旦那の話を聞いていますぜ・・・皆殺ししますかえ」

「下っ引きや喰いっ逸れ浪人の言う事など誰も聞かぬわ」

「あっしも十手者らしくねぇが旦那は上手を行きますねぇ」

冬木が返事を返そうとした時、奉行の助っ人の若武者・誠一郎と岡っ引きの清吉が側に来た。

「どうなされたな、冬木殿、お知り合いですかな」

若武者の言葉に冬木がむっとして睨み付けた。

「儂が鑑札を与えておるのだ、知っていて当然であろうが」

「はぁまぁそうでしょうねぇ~あっしの場合は鑑札を戴いておりますお方には虫けらの様な扱いで御座いましたがねぇ~」

「清吉、何が言いたい」

「何にも御座いません、なあ~に、勘三は幸せ者だなぁ~と思いましてねぇ旦那と気軽に話せるのですから・・・・なぁ」

「うぬ~き・さ・ま・・・・」

「冬木殿、無駄話は後にして早く済ませましょう」

誠一郎はそう言い放つと鉄扇を抜きながらすたすたと前に歩き出した。

「さてと、どちらの先生がお相手して戴けるので・・・・其れともご一緒なさいますか・・・な」

誠一郎の挑発の言葉に居切り立った浪人五人が前に出て誠一郎を扇に囲んだ。

「餓鬼の分際で生意気な口を利きおって、大人の力を見せてくれようぞ」

「おやおや、身体の大きさでしか技前の判断が出来ませぬ・・・か、強者は強者を知る、また弱者は強者を知らず・・・・と申します、そなたには餓鬼の私の技前が判らぬ・・・・のかなぁ~」

「ぬかせ~」

中央の浪人が仕掛けて来たがそれは見せ掛けで途中で止め実際には左右の二人が仕掛けて来た。

彼らはこれまでに幾度も同じ手で悪さをして来たのであろう・・・と知れた。

誠一郎は途中で止めた中央の浪人に詰め寄り鉄扇を鳩尾に突き立て後ろへふっ飛ばし次に右の男の肩の骨を砕きそのまま仕掛けた右の男の肩も砕き息付く隙も与えず左の二人の肩を砕いた。

元の場所に戻った誠一郎が勘三親分に声を掛けた。

「さぁ~てと、親分・・・どうしますかな、痛い思いをするか・・・それとも素直にお縄になるか」

「うるせい、小僧と思って甘く見たんだよ、みんな~やっちまいなぁ」

その時、誠一郎の横に人が立った。

「誠一郎さん、あっしにも手伝わせて下さいな」

「おぉ清吉殿、お願いします・・・・が、余り強さを見せないのが宜しいでしょうね」

「まぁそうですね、後の言い訳が面倒ですからなぁ」


「さて、親分、今度はどうしますね、もう誰もおりませんよ」

誠一郎と清吉の足元には子分達が意識も無く倒れていた。

「清吉さん・・・残念ながら奥に手強い者が二人残っております・・なぁ~」

奥から浪人とも思えぬ羽織袴と立派な成りをした武士が二人現れた。

「若造、御主出来るな、師範、心して掛かれよ」

「師範・・・・どちらか稽古場の主ですかな・・・・清吉さんは師範をお願いします・・・・この場主は鉄扇では無理な様です・・・清吉さん仙花を試してみませんか、どうです・・・私は合わせて利前真流を試してみます」

「うぬ~この儂を技の試しにするてか、おのれ馬鹿にしおって・・・・殺す」

横では師範と清吉が対峙しており師範は既に剣を正眼に構え片や清吉は十手を右手に持ち前に構え左手は腰の辺りで握り締めていた。

ちらりとこの様子を見た誠一郎は清吉も右手だけで無く左手での飛礫技・仙花を修練していた事を理解した。

誠一郎は仙花だけでは無く抜刀技・利前真流も試すつもりである為あえて右手での仙花を選んでいた。

右手を一旦懐に入れ飛礫を握り抜いた右手をだらりと下に垂らし足を少し開き腰も少し沈め待った。

「小僧、その若さで居合いを使うか、自惚れよのぉ~居合いは並の修練では会得できぬわ、馬鹿め」

「うふふ、只の剣の試合では結果は見えておりますれば座興に御座いますよ、私の技の肥やしになって戴きましょう」

「口の減らぬ小僧があの世で己の非力を悔やめ」

道場主は剣を抜き正眼に構え・・・・初めてこの若者の底知れぬ技前を理解した・・・・殺気を・・いや気の高ぶりを感じない・・・あくまでも平静なのである、阿保か馬鹿か、いや場数を踏んでいるのである。

その時、横から師範の呻き声が聞こえ二人がちらりと見ると十手持ちの清吉の足元に師範が倒れており、何と剣も抜き切ってはいなかった、たかが十手持ち風情に弟子の中でも自分に次ぐ腕前の師範が剣を抜く事も無く事も無げに負けた事に大きな衝撃を受け冷静であるべき心が乱れてしまった。

「清吉さん早いですね、相手は十手持ちと高を括って来た様ですし、仙花も上手く行ったようですね、こちらも直ぐに終わります・・・利前真流を特とご検分下さい」

「せ・ん・か・・・り・ぜ・ん・し・ん・りゅう・・・・何だそれは聞いた事も無い、貴様ら何者だ」

「人に名を尋ねる時は先ず己からが礼儀で御座ろう・・・が・・・そなたが名乗られてもこちらは名乗るつもりは御座らぬがな」

「餓鬼の癖に大人びた口を利き居って・・・」

言うや剣を一瞬胸に引き付け前に踏み出そうとした時、右目に激痛が走り一瞬目を瞑り開けた時には前に相手が居らず腹に激痛を感じ意識を失って前のめりに倒れ伏してしまった。

誠一郎はと言えば相手の右に抜け振り返り倒れた男を見つめていた。

「誠一郎さん、お見事でした、仙花で出足を止め利前真流での仕留め・・・・見事でした」

「ありがとう、清吉さん、後は奉行所にお任せしましょう」

「そうも行きません、あっしは岡っ引きが本業ですんでね」

「おぉそうでした、失念して居りました、私も父の手前去る事もできませんね、龍一郎様もお見えの様です、私は父の元へ参ります、後は良しなに」

「へい、畏まりました」


「龍一郎殿、今、誠一郎は剣を抜いたのか・・・・相手は何故打ち込みを一瞬躊躇ったのだ」

「抜きました、見えませんでしたか」

「あやつ居合いも使う様になったか・・・うむ」

「我等の技は居合いとは呼びませぬ、居合いは鞘の内の技に御座れば、一度抜いて仕留められねば負けに御座る、我等は抜いた後の剣技も大事と考えますれば抜きを抜刀と申し居合いと事を異にするものと心得まする」

「居合いも抜刀も同じと思うて居った・・・がな」

「はい、巷ではその様に見ておりましょうが・・・・」

「何にしても倅は剣の達人になりおった様じゃなぁ」

「達人・・・・まだまだに御座います、上には上がおりますればな」

「おぬしや昨日の二人かな」

「今一人、仲間内におりまする」

「龍一郎殿、そなたの仲間は幾人おる・・・・・いや聞くまい・・・皆、凄腕じゃのぉ~儂の配下にくれぬか」

「ありがたいお言葉なれど出来ませぬ・・・が今後も御用があればお手伝いは致しましょう」

「おぉありがたい、手伝うてくれ、お頼み申す、この通り」

越前は龍一郎に頭を垂れて礼をした。

「龍一郎様、お出ででしたか」

「うむ、そなたの父上と共に見せて貰うた、腕を上げたな」

「龍一郎様のお褒め、幸せに存じますが、相手が弱過ぎただけの事と思うております、まだまだ修行が足りませぬ」

「うむ~、誠一郎・・・・そなた剣技だけで無うて心までも鍛えられたなぁ~誠一郎、儂も本日只今より龍一郎殿を師と仰ぐ事とした、そなたは儂の兄弟子じゃ、良しなに願おう」

「父上の暇を見て剣の手解きをして上げるが良かろう」

「畏まりました、されど父上・・・・辛いですよ大丈夫ですか」

「儂も年を取ったが剣は好きでな、剣の上達の為なれば・・・きっと耐えられようぞ」

「お奉行、昨日手伝いました老人は私の義理の父に御座いまして一昔前には江戸一と言われた剣技の者に御座います、名は橘小兵衛と申します、奉行所にも出稽古に参っておりました、近日中に奉行所から遠からぬ処に稽古場・・・・いや剣の・・・・剣道場を設けますれば配下の者たちの弟子入りを願います」

「おぉそちらの願いで無うてこちらから願うことよ、うんうん剣稽古場・・・か・・・支度がなったら知らせて下され通わせる・・・・儂も参ろう、ところで龍一郎殿、そなた嫁を貰うたそうな何故儂に知らせなんだ水臭いでは無いか、きっと上様も驚かれようぞ」

「はい、上様はご存知のはず・・・・・子が出来た事まではご存知なかろうが・・・・」

「何、子がおるてか、男か女か・・・どっちじゃ・・・・いやまて、そなたの事じゃ男に決まっておる・・どうじゃ」

「はい男に御座います、名を龍之介と父に付けて戴きました」

「龍一郎殿、儂と奥に倅と嫁の顔を拝ませてくれぬか、役宅に連れてきてくれ、頼む」

「判りました、この一件が落ち着きました後に頃合いを見計らいまして必ずや参ります」

「約定したぞ、では・・・誠一郎、捕縛したる者共を奉行所へ連れてまいる、同道致せ」

「龍一郎様、かように申しておりますが宜しいでしょうか」

「おぉそうか、龍一郎殿、誠一郎をお借りしたい、宜しいか」

「どうぞ、如何様にもお使い下さい、誠一郎、しっかり親孝行して参れ」

「はぁ、畏まりました、師匠失礼致します」

「龍一郎殿、達者でな、世話になった」


「龍一郎、儂は剣稽古場を開くのか」

龍一郎の横に小兵衛、平四郎、三郎太が立ち群集に紛れて女衆と平太、舞の姿も見られた。

「はい、奉行所の近くに設け奉行所の与力・同心を主に門弟とします、目的はお解かりでしょう、勿論、主は父上で御座います、他に平四郎殿に無理を申しますが・・・・・お久殿をこの新たな稽古場に詰めさせたい・・・いかがかな、平四郎殿」

「龍一郎様、本人が宜しければ異論は御座いませぬ」

「では、父上とお久殿で場所を見つけて下さい、金子の心配は無用に願います。例え何千両とて構いませぬ、良しなに」

「何千両でも良いのか、本当にか龍一郎」

「はい、構いませぬ」

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