第58話 清吉とお駒

「お駒さん、十手持ちの清吉様と何処でお知り合いになられたのですか」とお有が問うた。

其れは夕餉の後片付けをしている時の事だった。

お駒は清吉の顔を一度見て了承を得るとお有、お峰に馴れ初めを語り始めた。

「お父っあんに、と言っても義理の父つまり清吉さんの父親に紹介してもらって、蕎麦屋で働いてましてね、そしたら、毎日、毎日、清吉さんが来て、父親の元で下引きで忙しくて食べる時間がない時でも顔だけ出してね、よぉーとか、やぁーとかだけの日もいっぱいあったねー、世間話はするけど、色恋話は、一切ないのさ、それでね、こっちが切れちまって、『やい、清吉、あたし一緒になる気はあるのか、ないのか、はっきりしろ』って、やっちまったのさ」・・「そしたら、清吉さんが、『はい、あります』って、答えてくれたんだよ」

「お二人は、私を破廉恥と思っただろうね、でもね、蕎麦屋で初めて清吉さんと会ってから四年だよ、毎日のように四年間も来られてごらんな、誰だって気が付くし、その内、じれったくもなるってものよ」

「まぁ、四年間も」

とお峰が言うとお有も

「清吉さん、お好きだったんですね」

と言いお駒が言い返した。

「お有さん、ちよっと違いますよ、今もですよ」

この言葉にお有、お峰が呆れた。

「あらま、失礼致しました」と軽く頭を下げ、にんまり笑った。

「ごちそう様でした」と手を合わせた。

三人は笑い合い、お駒は『良い妹たちが出来た』と思い、お峰、お有は『良い姉様が出来た』と思った。

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