第49話 三郎太の住まい
奥の平四郎の部屋に四人がいた、平四郎、龍一郎、清吉に三郎太である。
三郎太に会って三日目の事である、龍一郎が三郎太に尋ねた。
「三郎太、修行の中に蕎麦屋と料亭の板前は、有ったかな」
「勿論、御座いました」
平然と答えたものだ。
「私とした事が、抜かったわ、三郎太、住まい換えになる」
そこで、今日の顔合わせとなった、偶々、三郎太が稽古場に住み着いてから清吉は本業の岡っ引きが忙しく稽古に顔を出せなかったのだ。
「清吉さん、この者が三郎太です、武士の形をしておりますが故あっての事です、この者蕎麦屋の修業をしております、使って戴けようか」
「勿論です、龍一郎様の頼みでもありますが、実のところは、あっしの所も手不足でして丁度良い話で、こちらからお願いしたい位です」
「それは良かった、三郎太、別に厄介払いではないぞ」
「勿論です、私も稽古だけよりは働いていた方が気が楽です、飯も気兼ねなく食べられます」
「良い心掛けですね、三郎太、二、三日の内には良い便りが届くはずです、その後の住まえ換えと思って下さい」
「私は、今日からでも良いのですが」
「用心に越した事はありません、江戸からの繋ぎとなれば、おのずと所が知れます」
「はい、忝うございます」
「清吉さん、その様な事で、二、三日には店に連れて行きます、よろしくお願いします」
龍一郎が礼をした。
三郎太も平四郎も龍一郎に習い清吉に礼をした。
清吉は、三人からの礼に、苦笑いするしかなかった。
それから、四日後、龍一郎の屋敷に文が届けられ、翌日には、稽古の後、龍一郎が三郎太を連れ清吉の店を訪ね、三郎太の住まい換えがなった。
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