第38話 清吉の知らせ

午後をかなり過ぎた八つ半頃、清吉が稽古場に帰ってきた。

庭にしゃがみ二人に声を掛けた、平四郎が障子を開けた。

「中で聞かせて下さい」

「へい」

町人言葉で言って部屋に入った

「お有、茶を頼む」と平四郎が台所に声を掛けた。

「ご苦労でした」

「大した事じゃございません、師範が痛め付けてあったので、周りへの気配りなんてありませんや」

「ふふふ」

龍一郎が笑い平四郎が尋ねた。

「で、何処へ行ったかな」

「当ててみようか」

「師範は、八卦見もなさるんで」

「加賀藩前田家下屋敷」

「こいつは、驚いた、おっしゃる通りで」

「やはりな、だが、それだけでは、あるまい」

「へい、暫く待ってみる事にしました、するて~と、町駕篭が一丁呼ばれ中に入って直ぐ出て来ました、  その後を追うように武者駕篭も出て来ましたが、行き先が左右別れまして、あっしは迷いまして結局武者駕篭を付けました、駕篭は、加賀藩前田家上屋敷に入りました」

「町駕篭は、何処へ行ったと思うな」

「解りません」

「多分、道場破りが乗っており、始末されておろうよ」

「えぇー」

清吉が小さく悲鳴を漏らし平四郎が絶句した。

「何と」


それから、3日後、大川の河口付近で浪人の水死体が上がった、と、清吉からの知らせがあった。

こんな事があってから、三人は、俗に言う馬が合うと言うやつで、仲が良くなり、酒を飲み交す様になった。

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