第39話 清吉の家系

ある日の夜、龍一郎は平四郎、清吉と酒を飲み交わしてした時、何気無く清吉に尋ねた。

「十手だけで飯は食えまい」

「へい、無理ですね」と断言した

「不思議な事に清吉の評判は良い」

「館長、そりゃーないでしょう、あっしの評判が悪くて当たり前みていじゃねいですか」

「お前自身が言うたではないか、十手だけで飯は食えないと・・・、お上の御用以外に金子を何で・・・と思うてな、おぬしは、悪さをする様には見えぬ故、不思議でな」

「悪さをせず、町の衆に慕われ、金子が手に入る・・・解らぬ」

龍一郎にも解せない話であった。

「お二人の剣術の達人も銭となると素人で」

「うむ、素人だな」と平四郎

「実を申しますとね、訳を知っているのは町内の年寄り位の者で御府内の同業の者も、あっしが何か金釣るを持っているに違いねえ・・・と思っておりますよ」

「ほう、同業も解らぬのか」と平四郎

「我らに解るはずもない」と龍一郎

「女房のお景しか知らぬ事とお思い下さい」

清吉が態々念押しし話出した。

「先々代の友達の爺さんからわっしが小さい時に聞いた話ですが・・・何でも、先先先代が香具師の元締めと十手持ちの二束の草鞋って奴だったそうで、その時、料亭だったか、船宿だった家を手に入れた様です。

今、わっしが目にする二束の親分のやり口を見ておりますと、大体の察しはつきますが、真っ当な方法じゃございませんよ。

次の代の先祖が、息子ができた時、後を次がせず、真っ当な道を歩ませたいと思ったそうで、子分に香具師の元締めを譲り、十手持ちに専念したそうです。

金子の方は、先代が一財産も二財産を溜め込んでたようでして、なにせ、わっしらもその時の金子で、やっておりますんで、何時まで持つかわかりませんが、御存知のように岡っ引きは、まともにやってちゃ銭にはなりませんからね。

あっしは、この金子が無くなったら十手をお返しして棒手振りにでもなりますよ。

町の衆に悪さしてまで続ける勤めじゃありません」

「なるほどの~、で、倅は十手を持てそうか」

龍一郎が暗に残りの金子を尋ねた。

「無理でしょうね」

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