第26話 養子縁組、家督相続
龍一郎が橘家に住み始めて一月が過ぎた頃、加賀屋一番番頭善兵衛を使いの富三郎が訪ね、当主 橘 小兵衛が会いたいとの言伝を持って来た。
善兵衛は、体調が悪いのではと、慌てて屋敷に駆け付け面会した。
だがそこに見た当主、小兵衛に善兵衛は驚いた。
あの病の床にいた男が縁側に腰掛け、たった今、木刀を振り終えた様に木刀を横に置き、諸肌脱ぎで汗を拭いていたのだ。
「橘様、・・・・」後は言葉にならない
「急な呼び出し、申し訳ないの~」
「いいえ、その様な事はどうでも良ろしゅうございます、それよりも、お身体の具合は・・・」
「その方や加賀屋殿に礼を言わねばならぬな、良い息子を貰うた、病は気からじゃな」
「お身体の具合は良ろしいので・・・」
「うむ、もう良い、非常に良い、爽快じゃ」
「では、では、養子縁組と家督の事は白紙にございますか」
「慌てるでない、そなたらとの約定では、人柄を見て一年後の養子縁組、二年後の家督相続であった」
「はい、左様でございます」
「それじゃ、それを今直ぐに繰り上げたい」
「えぇ~、どう言う事でございましょう」
「どう言う事もこう言う事もない、今日、明日にも養子縁組の手続きをなし刻を置かずして家督相続を致す」
「何とも、驚きました」
「龍一郎の人柄は、もう良う解ったと言う事じゃ」
「ありがとう存じます」
「こちらこそ、礼を申す、本に良き息子を貰うた」
養子縁組の手続きがなされ、許しの沙汰があり、龍一郎は正式に橘龍一郎になった。
その直後家督相続の手続きがなされ、滞りなく許しの沙汰が下り、龍一郎が橘家の当主となった。
<つづく>
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