第25話 義父の病(やまい)
龍一郎は剣の修練の後、暫く瞑想する。
その時は、大体、苦しくも有り楽しくも有った八年の旅を思い出す事から始める。
この日課の剣修練も瞑想も最近は一人ではなくなっていた。
昨日の夕刻、義父が龍一郎と使用人に告げた。
「久しく会わぬ碁敵の所へ参る」
「お体を患われてから初めての外出です、ご一緒致します」
「申し出はありがたいが、お前さんのお陰で前よりも元気じゃ」
と優しく拒否し、出かけた、又
「遅くなるやも知れぬ、その時は、泊まる故、心配いたすな」とも言った。
龍一郎は、思っていた、義父も日課となった朝の修練を今朝はどうしたであろうかと。
龍一郎が朝の修練を始めて一月位たった頃、義父が廊下に座り見物するようになり、十日位後に木刀を振り始めた。
ゆっくりで短時間から始め、段々時間を伸ばしていった。
龍一郎は義父が元気な時は剣技に長けた人だと感じていた。
そんな事があった日から一月程たった日に、初めて、二人は竹刀を交えた。
勿論、最初は軽い肩慣らしからだった、そして、日を追う事に次第に激しさを増していった。
「わしは、良い息子を得た」
とある日の鍛錬の後、しみじみと漏らした、龍一郎には、返す言葉がなかった。
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