nizisannzi
@perie0802
第1話
―――私は彼女のために、この世界を、ぶち壊してやるんだ。
厳しい寒さを超え、穏やかな温もりを含んだ心地よい風が、梅の匂いを運んでくる。
雲一つない快晴に見舞われた今日、ヘルエスタ王国の大広場にて、新しい環境に身を投じる者たちに、王族から祝いの言葉が投げかけられていた。
そんな民衆の中の一人。明日から学生として新生活を送ることになった私は、新生活への高揚感で眠れず、寝不足であったため祝いの場であるというのにだらしなく欠伸を漏らしていた。
眼に涙をうっすらと浮かべながらふと視線を下げた時、私の目に、春の日差しを浴びてきらきらと輝く赤髪の少女の姿が映った。
何万との国民があつまるこの広場の中で、一風変わった髪色をした少女に、私は目を奪われてしまっていた。
なぜ今まで気づかなかったのか、と思ったのも束の間、彼女の身長に気づきすぐさま納得がいった。
今の私たちは大広場から王族たちの住む城を見上げる形となっているため、必然的に視線は上に向く。その為自分よりかなり身丈が低い彼女の存在に気づけなかったのだろう。
「――それでは国民の皆様の幸せと。ヘルエスタ王国の、繁栄を願って」
銀髪に青の網目が入った少女――ヘルエスタ第二皇女の凛とした声が大広場に響き、辺りは歓声に包まれる。
そこでようやく私は祭典の途中であったことを思い出し、慌てて周囲の拍手に合わせて自身の手を打ち合わせた。
そんな最中も、私は再度赤毛の少女を横目にした。なぜだか不思議と、彼女のことが気になって仕方がなかったのだ。
そして私はそこで、彼女の皇女を見つめる瞳が、どこか寂しそうであることに気づいた――いや、気づいてしまったのだ。
nizisannzi @perie0802
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