第466話 別の世界
制服や黒髪を整え、シリウスは何事も無かったかのように自席に着いている。
この人のポーカーフェイスぶりにはカサンドラも恐れ入るというものだ。
全く反応も態度も違う、王子の友人であり幼馴染たちを順にカサンドラは目で追った。
何事もバランスなのかも知れない。
ジェイクのような人ばかりでもシリウスのような人ばかりでもラルフのような人ばかりでも――全員が同じ性質気質の持ち主であったら、こういう場自体設けることなどできなかっただろう。
全く別気質だからこそ彼らの関係は上手くいっているのかも。
かなり微妙な均衡の上に成り立っている彼らの関係を間近で見ている王子は良く分かっていると思う。
だからこそ、変わりたくない、『維持したい』という想いが先に立って。
皆がそれぞれ言えない事情を抱えて過ごすことになったのだろう。
現状が居心地が良ければ良い程、関係が崩れる事を恐れるのは誰だって同じだ。
失うものなど何もない状態ならまだしも、失いたくないから、前にも後ろにも進めない。
「『聖女計画』の内容に関して、各々相当数の疑問を抱いたことと思う。
だがひとまず、このような計画を三家の当主が持っている事は把握してもらえたものとする。
いかにアーサーに全てを押し付け、正義側に立つ勧善懲悪物語を作るかに念頭をおいた計画だな。
……先ほど、彼らの望まざる状態になった聖女未満の女生徒がどうなるかという話をしてもらった通り。
彼らはこの計画が叶わなければ、不穏分子を取り除くことで全くリスクなく『現状維持』が可能。
つまり、計画の成功不成功に彼らは拘ってはいない。
手に入れる事が出来れば最良だが、そうでなくても彼らは困らない」
カサンドラも大きく頷く。
自分でも気づいた時にはぞっとした。
普通、大掛かりな”計画”というものは成功を念頭に置いて駒を進めるはずだ。
だが全て流れに身を任せ、成否に拘らないという考えはこちら側にとってはあまりに脅威だ。
何が何でも成功させなければ――と、望むルーレットの目を出すためにルーレット本体に小細工をしてイカサマをしようとすればボロも出るし証拠もばっちりだ。
だがのんびり気ままに、その数字が出れば良いなぁ、と掛け金を払うこともなく漫然と『場外』で眺めている観客が全てのトラブルの仕掛け人なんて結びつけづらい。
「私はこの状況を不可解だ、気味が悪いとずっと感じていた。
どうにかアーサーの命とフォスターの三つ子を同時に守ることは出来ないものかと、過去の知識にも頼った。
決して漫然と時間が過ぎることを待っていたわけではない。
ただ、調べれば調べる程、私は一層薄気味悪さを感じた。
……どう考えてもこの計画は不合理の極みなのではないか……とな。
――やっとその不可思議な状況に置かれた理由が明らかになった。
二つ目の軸、『世界の構造』に入ることにする」
シリウスは先に進めるという言葉通り、最初に予定していたテーマの二つ目についてとうとう話し出した。
『聖女計画』とやらの答え合わせは完璧に近いところに至っていたのだとカサンドラも安堵する。
自分達の推論が正しい方向に向かっていた、決して無駄ではなかった。
そう思うと、自然心が軽くなる。
偶然の産物ではなく、ちゃんとそれぞれ気づき、目的を持って行動したから起こるはずだったイベントを未然に防ぐことが出来たのだから。
「世界の構造と言っても、抽象的な話だ。
カサンドラ、リナ・フォスター。そしてレンドール侯爵家の養子に迎えられたカサンドラの義弟アレク。
それぞれの証言を『事実』として取り扱い、ここで内容を話す。
結論から言えば、この世界は――王立学園入学式前日から三年間を、延々と繰り返し続けている。
何らかの条件、恐らく時間経過などが満たされた場合、その間積み上げた記憶や体験などが全て消失。
入学式前に世界そのものが強制的に巻き戻されるそうだ。
当然学園内だけの現象ではない。この世にあまねく全ての事象が同様に三年前に帰る。
『聖女計画』という人間の手による事件の更にもう一つ上の位相、世界そのものが起こしている現象と考えられる。
私を始め全ての人間が、何十、何百という回数同じことを三年繰り返してきた。
彼らの計画もまた、その都度引き起こされ悪魔を幾度となく呼び起こしてきたものと思われる」
シーン、と部屋が再び静寂に包まれる。
記憶を失い、何度も何度も学生生活を繰り返していた、と言われてもピンとこないだろう。
だって自分は記憶が
自分だけではなく周りの人間も今日という日を当たり前のように『初めて』迎えているものだと疑いなく思っている。
失ったということさえ気づかない。
まさか時間が世界ごと逆行し、真っ新な状態で何度も同じ年、月、日を繰り返させられているなど。
仮にそんな事を提唱する人間がいたとして、誰が信じようか。
頭がおかしい人扱いされればまだマシだ、邪教にでも染まったかと思想を疑われることもあるかもしれない。
「――この事実に行き当たった経緯をざっと説明しよう。
一体いつからこの世界を繰り返しているのか私にも誰にも分からん。
だが世界中、例外なく完璧に巻き戻っているなら、当然その事実が認識されることもないはずだ。
だが本来失うはずだった記憶を持ったまま、同じ時間軸を何度も繰り返す人間が存在することで明らかになった。
レンドール侯爵家の養子、アレク・レンドール。かつて事故で亡くなったとされるクローレス王国の第二王子クリストファー・エル・クローレスのことだ。
奇跡的に命の危機を脱した彼は、レンドール侯爵クラウスの養子として今まで匿われてきた。
現在の彼の名はアレクと言うが、義姉であるカサンドラの目付け役を任され、現在王都に滞在しているな。
……彼は幸か不幸か、ある地点で突然世界が義姉の入学式前日に戻されることを知ってしまった。
全て記憶に残したまま時間が戻るという体験を繰り返してきたのだな。
『聖女計画』が成功し、兄であるアーサーが悪魔になり聖女に倒される。そんな実例を彼は今まで何度も体験してきたわけだ。
”暗殺されたはずの第二王子”という立場上目立った動きも出来ず、とある事情によって世界の命運を変えるような干渉力を持っていない。
しかし何度も何度も、兄が事情も分からず聖女に斬り倒される結末は彼にはとても耐え難い事だった。
ある時、強く願ったそうだ。
誰かに『助けて欲しい』と。
……その願いが叶うのかどうかはまだ分からんが、その必死の願いが一つの奇跡をこの世界に齎した。
入学式を前日に控えたカサンドラ・レンドールに、異世界の人間の『記憶』が宿ったのだ。
ここは異世界の人間の手によって創られた『ゲーム』という遊戯媒体の基幹設定を基に創られた世界だと。
単なる小説や戯曲、演劇とは違い、主人公と呼ばれる人物の行動、選択によって物語内の出来事や結末が大きく分岐する、そんな不思議な造りの物語の世界だったのだ。繰り返し何度も遊ぶために作られたモノらしいな。
そのゲームは、聖女が覚醒し悪魔を倒す結末が最も望ましいという設定で創られていた。要は、その結末に導くために『聖女計画』がこの世界に存在していると言って良い。
”主人公”側から見れば全く瑕疵の無い理想的な物語運び。
努力が報われ『愛と正義と力』を手に入れることができる、そんな望ましい世界を実現するために創造された箱庭。
――それが今我々が暮らすこの世界だ」
皆の視線が一斉にカサンドラに注がれる。
だがカサンドラが異世界の人間の知識を持っているということは既に彼らにとって目新しい情報でもない。
シリウスが名指しをしたことで、ごく自然と皆の注意が自分に向けられたというだけだ。
「は?
……カサンドラの義弟がクリス? ……何かよく分からん事になってないか?」
ジェイクは首を捻ってそう独り言ち、腕を組む。
先ほどまでアレクの生存を知らなかった彼は、突然今まで一切意識の外にいたはずのカサンドラの義弟という存在がピックアップされ、少し混乱しているようだった。
実際にアレクがこの場にいたら話はとてもスムーズだったかも知れないが、いないものはしょうがない。
「カサンドラはこの世界が異なる別世界で創られた物語だということを我々に教えてくれた存在だ。
ゲーム……という言葉はこの世界にもあるが、全く毛色の違う概念らしいな。
興味深い”玩具”だ。
一貫したストーリーを
あちらの世界の人間も、中々に良い趣味を持っているようだが、そのような特殊な仕組みがこの世界の基になっている。
それを知る事が出来たのは大きい」
良い趣味、というところに若干の棘を感じる。
自分達の学園生活のあらゆる光景を盗み見されていたと感じているのかも知れない。
ゲームの中の彼は現実にいるシリウスとは全くの別人であるが、当人の立場になれば薄気味悪く感じて当然だ。
まぁ、その素となる世界が生まれなければこの世界も生まれなかった。今のシリウスも存在しなかったので完全に”否定”することは出来ないのだろう。
「この世界が繰り返され『物語』を辿るという証言を補強するのが、リナ・フォスターの存在だ。
彼女は最近まで、ずっと自分が同じ時間を繰り返しているのではないか――と、不安定な精神状態にあった。
記憶ははっきりと具体的に覚えておらず、体験して初めて過去にそういう経験をしていた気がする、という曖昧模糊とした感覚だ。
リナ・フォスターは自分の魔力を使って己の消され続け封印されていた記憶を辿る事に成功し、この先に起こる出来事も把握するに至った。
アレクの言う”繰り返す”世界、カサンドラの言う”物語の世界”が事実だ、と。そう判断するに十分な傍証だった。
彼女達がこれから起こる出来事を示唆する事で事態は大きく動いた。
アーサーを始めとし三つ子を交えた話し合いを経て、『聖女計画』の真実を暴いたのは見事だと言わざるを得ない。
その上で計画の第二段階を未然に阻止するという、本来ならありえない事を可能にしたのだからな」
――シリウスの話を聞いていると、今までに起こったことが走馬灯のようにざぁっとカサンドラの脳裏を過ぎった。
今までの話の総浚いという感じではあるが、言葉にすればたったワンセンテンスの事象も自分にとってはどれも思い出深く、思い出しても胸が締め上げられるようなことばかり。
「カサンドラの示唆する『正規のストーリー』は、とても分かりやすい流れであったと聞いている。
主人公が学園に通い男子生徒と恋愛をし、その想いが成就するか否か。
予め決まったパートナーを選んでいた場合は聖女としての能力を覚醒、悪魔と化した黒幕の王子を倒して平和を取り戻して”めでたしめでたし”という話だ。
ストーリーラインは単純極まりない。
では何故、その世界を模したものであるはずの現実がこのような異常事態になっているのか。
……はぁ、本当にバカバカしい話だと思う。
私は今まで聖女や悪魔という概念、失われた歴史や経緯を辿ることで何かしらの解決策を探ろうとしてきたつもりだ。
だが、真実は全く逆だった。
全ての事物は『あるべき姿』に至るよう、創造主に都合の良い裏の設定を付与されただけに過ぎないのだからな。
真の結末、聖女が悪魔を倒すというストーリーを実現するためだけに存在する。
アーサーが悪魔にならざるを得ない理由を世界が作り、お前たち三つ子はこの学園で”恋愛”をするに最適な環境を整えられていた。
三年間という区切られた時間を何度でも繰り返し”遊び続ける”――この先を想定されていない閉ざされた世界。
多少の予測不能なアクシデントが起こっても、何度同じ三年を過ごすことになっても。『聖女計画』なるものが裏で動いている以上私達の命運など奴らの掌の上。
ひいては創造主の、な。
三家の『聖女計画』も何もかも、事件を起こし想定内の未来へ導くための舞台装置の一つに過ぎないわけだ」
彼は怒気を抑え、そう言い捨てた。
今まで彼が悩み、抱えていた全ては何度も繰り返してきたことで。
記憶を消され、何度も何度も繰り返される終わりのない懊悩を強いられてきた。
「……記憶とは――人間にとって『命』そのものだと思う」
ぼそっと、声が落ちる。
シリウスは言わずにはいられなかった、という様子で続けた。
「今までの経験が、今の自分を形作る。
積み重ねてきた記憶があるから、人は生きて行けるものだ。
人格と記憶は強く紐づき、切ろうとしても切り離せるものではないだろう。
無理矢理記憶を奪われるということは、殺されるも同然ではないか。
私達は一体何度、この世界に殺されてきたのだろうな」
悲喜交々でも、意味のある三年。それを全て忘れることを死と定義するなら、それは恐ろしい話だ。
それも世界単位で、数えられない人命がそれに付き合わされている。
そういう風に創られた世界とは言え、中に住んでいる現実を生きる者が気づいてしまえば――
こんな世界、魂の牢獄でなければ何と言う。
「まぁ、そんな恨み言を言ったところで事態は進展しないか。
聖女問題が仮に解決と呼べる状態に持ち込めたとしても、全て忘れて入学式に戻るのでは全く意味がない。
……この二つの問題をクリアしなければ、敗北を喫すると同義だ」
「シリウス。
君はその問題を解決する方法が分かるのか?
『世界』を変えると言われても、僕には要領を得ない雲を掴むような話だ。
本当に一個人――いや、世界に対する下位存在の僕達が何かをしたところで、強制的に定められた結末へ向かうようにしか思えないのだけど」
隣に座っていたラルフが、少し姿勢を変えて正面に座るシリウスを見遣る。
真実を知ったところで、それを神ならぬ自分達が枠組みを壊すことが出来るのか、果たして存在していけるのかという根源的な問題である。
「明確な解答は用意できていないが、希望はある。
……まず、この世界は許のゲームの『設定』を基に創られていると言った。
元の物語に登場している人物は――世界そのものを変える力を持っているのではないかと思われる。
例えばカサンドラの義弟アレクだ。彼はいわゆる未来予知が可能な状況であったにも関わらず、全く我々に干渉できなかったと言う。
今まで不思議な力でアーサーや私たち、彼の過去を知っている相手に悉く会う機会がないという偶然が重なったように。
彼はこの世界が生み出した――つまり、アーサーが三家を恨むであろう要素の一つとして創り出された架空の人物でもあり、レンドール侯爵がカサンドラとアーサーの婚約話を受諾しやすくなるよう創りだされた都合の良い存在だ。
存在全てにこの世界の法則が適応され、予定外を許されないエキストラのような存在だということが分かる」
アレクの存在理由?
……クラウス侯は元々国王の事情を知っていて、知っているからこそそのようなゴタゴタした中央に娘を「嫁がせる」という事を良く思っていなかった人ということになっている。
だが三家のアレクへの仕打ち、暗殺未遂を偶然知った事で国王周りに同情心が湧いてカサンドラと王子との婚約を許容するまでに至ったわけだ。
勿論カサンドラの願いを聞き届けてくれたという側面もあるが、アレクの存在は大きかったはず。
そういう設定にした方が無理がなく原作の設定を再現できる、という肉付けのために世界が用意した役割を持つ人間なのだと思われる。
「この世界に創られた人間だから、大枠を踏み越えるような干渉が許されていない。
翻って私達は、基になる存在が別世界に存在する。世界の外に”原型”がある人間だ。
だからこの世界独自に課せられる制約をある程度交わすことが出来たのではないか、と考える。
もっと単純に、我々はこの世界を構成する根幹的パーツだから神でさえ手を加えられない要素だからなのかもしれんな。
この世界は……主人公のために在る。
別の世界の設定を
根幹をなす人物に創造主の手が入って自由に動かせるのなら、もはや幼児の人形遊びと変わらんだろう。
こんな世界を創ってまで人形遊びをする意味などどこにある、それこそ基になったゲームで遊べば事足りる話だ。
重要な事件さえ『主人公』である彼女らは未然に防いだ。ストーリーの根幹を覆しかねない暴挙に出ることができたな。その結果、真実に近いところに至ることが出来た。
カサンドラが望んだから、制限が解けてアレクは自分の知っている世界の真実に関わる核心を話すことが出来たのだろう?
元々の登場人物は、創造主でさえ制御できないのだろう。
何より――
ここに主人公が三人いる、という事実も考慮に入れるべきだ」
ピクっとカサンドラの耳が動く。
一番最初の違和感、それは主人公が三つ子だった事。
本来一周で一人しか選べない主人公が同一の世界に存在していた事だ。
「リナさん達が三人揃っているということも何か解決に向けた要素の一つなのでしょうか」
「恐らく、だが……
同じような世界が、あと二つあるのではないか?」
シリウスは眉を顰め、その不快な表情を隠すように眼鏡を押し上げた。
「ここはリナ・フォスターが本来主人公のはずの世界。
では残り二人はどこからきたのだろうな?
どこかにリゼ・フォスター、リタ・フォスターが存在していたはずの世界が――並列かどうかはしらんが、あるのだろう。
恐らく、時間が巻き戻る前――聖女だったお前は、望んだのではないか?
強く。
”助けて欲しい”と」
リナに向けて、シリウスはそう問いかけた。
それはアレクが願ったのと同じことだ。
「お前は”力”を使って別の世界から二人を喚び出したのだろう。
若しくはリナ・フォスターの声に、別世界の二人が応えたか。
記憶も全て作り直したのかどうかまでは人知の及ばん領域だが……
案外、世界の崩壊を止めるためにこの世界が人間全ての記憶を改竄してフォスターが三つ子だという設定にしたのかもしれんな」
世界中の人間の記憶を奪って時間を巻き戻す事が出来るなら、それくらい容易いような気もするが……
途方もない、まさに検証不可能な”思い付き”のようなシリウスの話にカサンドラはもどかしさを覚える。
「……世界が繰り返していることを知っていたお前は――
誰かに、助けて欲しかったんだろう?
同時刻に発生したアレクの”想い”に共鳴したか。
他に何らかの奇跡が重なったか」
「わ、私が……二人を……?」
リナは驚き、言葉を失う。
それだけ強い力を、他の世界へ干渉できる力を主人公が持っているというのなら。
自分の意志で使うことが出来たなら……成程、どうにかこのループ世界から脱出することも不可能ではない、のか?
「……ええ……
じゃあ、他の世界に俺らとそっくり同じ人間がいるってことか……?
考えたら気持ちが悪いんだけど」
ジェイクはうんざりしたような顔で、若干ピントが外れた文句を口にする。
「では今頃、主人公のいない別の世界は……」
王子もまた、秀麗な眉宇を曇らせ静かに声を漏らした。
「別の世界があるのかさえ確証はない話だ。リナ・フォスターが望んだから世界が生み出した、全く別の存在かもしれん。
そんな仮定の話に一々悲壮感を出すな。
確かな事は、この世界には主人公が三人いる。
同一世界線に存在しないはずの人間が二人増えることを、世界が許容したということは――
それだけ、
リナが聖女だったからか、それとも主人公だったからか。
どちらにせよ、彼女もまた誰かに助けを求めた。
だから奇跡が起きたのだとしたら――また、奇跡は起こるのだろうか?
「……んー、聖女って何なんでしょうね?
物凄くあやふやなんですけど。
自分がそうだって言われても、やっぱり全然自覚もないしそんな力もないですよ?」
リタが頭を掌で押さえ、頭痛を表すポーズとともにそう疑問を呈した。
「………。
私が調べた範疇のことで良ければ、教えてやってもいいが。
この世界にとって都合よく創られた歴史だ、左程参考になるとは思えんぞ」
彼はため息交じりに、辟易とした顔で。
だが訊かれたからには答えないわけにはいかないとばかりに、『聖女』のことを語ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます