第354話 医務室へ


 色々と目を背けたいような現実を目の当たりにしてしまったものの。

 カサンドラ達上級生は無事に新入生へ校舎案内を終える事が出来た。


 今日は授業がないのでそのまま解散という事になるわけだが――

 これから始まる前途多難で予想もつかない学園生活を前に、カサンドラは漠然とした不安で胸がいっぱいだった。


 曲がりなりにも去年は、何とかして決められた未来を回避するのだという明確な目標があった。

 だが今年は現段階で、シナリオと言う名の羅針盤をカサンドラは失ってしまったようなものだ。


 この先は父の求める宿題をどういう形でか実現させ、近い将来の王宮生活に向けての準備を始めることだけを考えればいいのだろうか。


 ……ただ、なんとなくモヤモヤした気持ちが晴れないのは事実である。


 三つ子の恋愛事情が占める部分も多い。

 だがそれだけでなく、自分が何かを見落としているのではないか? という、漠然とした違和感も微かに胸の底に蟠っている。


 ――あまりにも雲をつかむような漠然とした不安。


 でもカサンドラの知らない未来に舵を切ったこの世界において、そんなモヤモヤ程度の不安を言語化することは困難なことだった。


 未来のことなど予測する術などもうない、自分にこれ以上の困難が起こったとしても打開できる術がないことが不安だ。

 地図の無い航海に出発した以上、現状持ちうるもので対抗する他はない。


 ……大丈夫。



 自分は一人じゃない。

 王子もいる、アレクもいる、そして父も。

 だからこの世界で起こるどんな困難でも、力を合わせれば乗り越えていく事が出来るはずだ。



 そう自分に言い聞かせ、カサンドラは教室を後にする。

 無意識の内に視線が王子を探したが――王子とシリウスは学園長の呼び出しを受けているので、ガヤガヤとした教室には彼の姿はどこにもなかった。






 朝の王子の一件のせいか、今日はカサンドラに積極的に話しかけてくる生徒がやたらと多い。

 この現象は以前にも経験したことがある――あの時も王子絡みだったなと思い出す。

 結局、この学園の生徒の多くは王子に対して興味関心があって、その動向に注目していることが伺える。


 正妃としての婚姻は無理でも、彼に気に入られたら側室候補に指名される可能性があるかもしれない。


 王子の性格や状況を考えればまずありえないことだ。が、普通に野心がある中央貴族から考えれば、地方貴族のカサンドラよりも自分の娘の方が王族に嫁入りするのに相応しいと思っている層もいるだろう。

 勿論、シリウスやジェイクに対してのアプローチはそのままに、あわよくばと言う意識が大変強く伝わってくる。


 ――これが、王子や側近たちと同じ時代に学園に通える生徒の強みというのものだ。


 大人たちの視線から隔離されたミニ社交界で上手く立ち回りアピールすることで、彼らの目に留まることが十分に可能。

 いくら貴族の子女が政略結婚という概念に慣れているとはいえ、日常生活を共に送る上で芽生える感情を完全に制御することは出来ないだろう。

 たった一回の見合いや肖像画のやりとり、親の采配だけでは見えてこない多くの人の魅力に触れるのだから、恋愛感情に発展するのはおかしな話ではない。


 シリウスは不快感を示すが、学園に通うまで婚約者選定を保留にする家もある。広義的な意味で”期間限定婚活会場”と言っても差し支えない。

 

 偽装ではあるが婚約者が決まったラルフこそ「一抜けた」状況ではあるけれど。

 それでも触れるところにいて、話が出来るところにいて。コミュニケーションが取れるこの生活で、意識するなと言う方が無理な話かもしれない。


 一応学園に通う前から決まった婚約者ということで、皆カサンドラに対してはそれなりに適切な接し方を崩さない。表面上は、かなり持ち上げてくれると言えばいいのか。

 これは一年前も、今も変わっていない。


 しかし彼女達は決して安穏と時を過ごしているわけではないのだろう。

 カサンドラと王子の関係性が変化したと思えば、すかさず探りを入れて来るだけの関心を未だに持ち続けている。


 カサンドラ一人が王子との関係性は変わっていないと説明しても、彼女達が完全に納得してくれるわけではないようだ。


 意外と皆、王子の側室狙いだったのか? と穿った見方をしてしまう。

 自分が王子と個人的に親密そうでなければ、その間に割って入る余地があるなんて期待していたのではあるまいな……?



 まぁ、どちらにせよ王子が他に妃を娶ろうと思うことはないはずだ。

 国王陛下自身も、三家の派閥に属する女性をこれ以上王宮に入れたくないと難色を示すことは明白。

 だから心配しなくても良いと分かっているのに、彼女達の慌てた様子に、逆にカサンドラがたじろぐ始末だった。


「それでは皆様、また明日お会いいたしましょう。

 ごきげんよう」


 いつまでも彼女達に質問攻めされては敵わない。雑談の切れ目を逃さず、カサンドラは鞄を手に取って周囲を取り囲む女子生徒達に手を振った。



 ふぅ、と。女子達から背を向けて帰宅しようとしたその時、ふとデイジーの席が視界に映った。



 医務室常駐の医師が言うには問題が無いという事だったが、結局あの後帰宅したのだろうか?

 しかしすぐ、それはないと思った。

 馬車で通っているデイジーが徒歩で帰るなんて出来ないだろうし、恐らくまだ医務室で休息しているのだろう。

  この後、急ぎの用事があるわけでもないので、様子を伺いに医務室まで向かおうとカサンドラは決めた。


 誰か一緒に――と思ったが、生憎三つ子の姿も教室に無い。


 新入生として入学してきたテオに校舎案内をするのだと話していたし――今頃あの少年は三つ子三人に囲まれ、案内されているに相違ない。


 うーん、とつい胡乱な表情になってしまう。

 ゲーム内では主人公が一人だったから気にかかることはなかったけれど。

 三つ子相手に幼馴染が一人というのもアンバランスだなぁ、なんてやや俯瞰した視点からそう思ってしまうのだ。


 そりゃあいきなり現れた同郷の幼馴染枠の少年に、ジェイク達も穏やかな気持ちではいられないだろう。

 ゲーム内では一緒にいるシーン自体が無かったから、今一ピンとこなかったけれど。


 身分の差もクリア、親密度の点もクリアしている”幼馴染”セーフティネットはかなり気になるはずだ。

 ゲームで遊んでいる時は攻略対象と結ばれることを目標としているが、当のシリウス達はそんな事は知らないまま主人公に攻略されるのを待つだけだから。


 現状、ただただ、気になる子に親しい男友達がいるという現実を突きつけられるだけである。


 ゲーム内の状況通り、主人公との接触を最低限に出来ないものだろうか? 

 いや、テオの意志もある。それに折角の同郷の幼馴染に冷たくするような彼女達ではない……か。

 自分とベルナールのように、元々微妙な関係同士ならともかく。


 こういう状況になった以上、前よりも一層、三つ子の恋を応援する気持ちが強くなった。

 だからこんな想定内のはずの出来事にも、カサンドラは頭を痛めているのである。


 


 考えても、カサンドラの出来る事が思いつかない。

 人の気持ちを変えることなど、神ならぬ自分には出来ないことだから。





「……カサンドラ様!」


 一階に降り、医務室に向かう自分の上方から呼びかける声が聴こえる。

 声に気をとられ、顔を上げると階段の上で手を振るリナの姿が見えた。


「まぁ、リナさん」


 とんとんとん、と軽い足取りで階段を下りてくる彼女を待つ。

 どうやらこの場にいるのはリナだけのようで……そして、彼女は何故か鞄を二つ抱えて降りてくる姿が見えた。


「今、お帰りですか?」


 トン、と。

 カサンドラの正面に降りたリナ。彼女はにこっと微笑んでそう尋ねて来た。


「医務室に一度寄ってから帰ろうと思っています」


「それでは私もご一緒させてください。

 デイジーさんのお鞄をお持ちしました」


 成程、抱えている鞄の一つはデイジーが教室に置いていたものか。

 彼女の提案にカサンドラも頷き、二人並んで医務室まで向かう。


 ――とても懐かしい。既視感さえ覚えるこの状況。



「ふふ、去年を思い出してしまいます」


 彼女も同じことを考えていたのか、はにかみながらそう呟いた。


「その節はリナさんにはお世話になりました。

 お気遣いいただき、とても嬉しかったことを覚えています」


 入学式の日、気分が悪くなってしまった。

 前世の記憶を思い出したばかりで、押し寄せる不安、緊張、絶望……

 一人のはずの主人公が三つ子として自分の目の前に現れて混乱して。

 正気を保つことも難しい状況だったなと今思い返しても背筋が凍る。


 もう一度一年前からやり直せ、もっと立ち回り方に良い方法があったはずだ! と言われても絶対にごめんだ。


「一年がこんなに早いとは思いませんでした。

 こうしてカサンドラ様とお話出来るようになって、より楽しく過ごせたのだと思います。

 いつも気にかけて下さってありがとうございます」


 この廊下をリナと歩いていたのは、去年のことか。

 そう言えばあの時はラルフと会ったな、なんて益体もない記憶が過ぎっていく。


 懐かしくもあり、”もしも”を想像すると身が竦む。


 ……あの日リナが話しかけてくれなかったら……彼女達と会話をするきっかけは無かったかもしれない。

 そうなった場合、全く違う状況だったのではないかと思うのだ。



 何も言わずとも、デイジーの様子を見に行こうと思い立てる彼女だからこそ縁が繋がったのだろうなとしみじみ頷くカサンドラ。



「そう言えば、リゼさんとリタさんはどちらに?」


「二人はまだテオ――私達の幼馴染が新入生として入学してきましたので。

 彼のところにいると思いますよ」


 リナは何故か歯切れが悪かった。


 ああ、やはり三つ子とテオの接触は避けられないのだなと、胸の奥がチリチリ痛い。

 彼女達が誰と仲よくしようが、カサンドラにそれを妨げる権利などないのだ――


「リゼがテオに説教を始めてしまい、何となく居づらくなって……デイジーさんの事もありましたし、抜けてきてしまいました」


 長くなりそうでしたから、とリナは苦笑いを浮かべる。


「説教? 何かあったのですか?」


「……いえ。そう言うわけではないのですが」


 リナは遠慮がちにカサンドラに教えてくれた。


 ――テオに向かって、自分達に会いに来るなとリゼが強く訴えたのだと、その時知った。



 自分達はそれぞれ好きな人がいる。

 万が一でも誤解を受けたくないから、会いに来られると困ると。


 それはもう、かなり淡々とした口調でバッサリと、ショックを受ける彼に畳みかけるように言い聞かせ始めたらしいのだ。

 実の弟でも何でもない男子生徒と仲良くしているところを見られでもしたら、誤解を生みかねないというのがリゼの言い分。


「それは……お相手にとって、寝耳に水でしょうね。

 仲の良い幼馴染なのでしょう?」


 何故かカサンドラがテオの事を可哀想に思ってフォローを入れたくなるくらい、けんもほろろな言い草ではないか。

 三つ子と一緒の学園に通えると喜んできた彼の出鼻を完全に挫いている、非情な物言いである。


「私もそう思ったのですけど……

 でもリゼは逆の立場だったら絶対に嫌だからと、聞かなかったのです。

 目的もなく、ただ遊ぶために入学したならセスカに帰れと……」


 相手の立場にたったら、か。


 確かに、もしも王子に仲の良い異性の友人がいて。いつも傍に纏わりついていたら絶対に嫌だと思う。

 しょうがないと思いつつも、モヤモヤしてしまうに決まっている。。


「……カサンドラ様は、リゼを自意識過剰……だと思いますか?」


 相手が自分に好意を持っているかどうかさえ分からないのに、相手の視線を意識した行動をとる。脈もない相手を思って行動するには、いささか過剰すぎる話だ。


 リナに恐る恐る聞かれ、静かに首を横に振る。


「そのようなことはありませんよ」


 確かに全く脈の無い相手にそこまで交友関係まで気を遣うなど、自意識過剰と思われるのは道理だ。

 でも好きな相手がいるのに仲が良い異性の友人を纏わりつかせているのも違うと思う。その辺りは難しい、何が正解とも言いづらい。


「私も、リゼも、リタも。

 お相手の事を完全に諦めたわけではない以上、テオと一定の線引きは必要ではないかというリゼの考えには共感出来ました。

 ……だからと言って言い過ぎかなとは思いましたけどね」


「リゼさんのご意見、御尤もだと思います。

 いくら仲の良い幼馴染とは言え、異性同士であることに変わりはありません。

 それに今後の学園生活において、テオ少年の”出会いの幅”を考えるのであれば――異性として距離を置くことは噂を断つ意味で良い事だと思いますよ」


 男女間に友情が成立するのか、というのは人それぞれの価値観だと思う。

 でもジェイク達はどうあがいても恋愛ゲームの攻略対象という存在として生を受けたわけで――物わかりの良いタイプではないだろうし。

 正解に限りなく近い判断……!


 しかし、本当にあの娘リゼのストイックさというか真面目さには恐れ入る。

 性格的に三角関係と無縁のタイプなのだろう、他所の男性との間で想いが揺れる状況が一切想像できない。

 恋愛脳は恋愛脳だが、あそこまで一本気だと別のカテゴリに放り込みたくなってしまう。


 まぁ、何よりカサンドラが忠告しなくても、自分から意識してもらえるならそれに越したことはない。

 ホッと胸を撫でおろす。


「良かったです!

 カサンドラ様にそう仰っていただけ、私も気をつけないといけないと思いました」


「わたくしの個人的な意見しか申し上げる事が出来ず、忸怩たる思いです。

 リナさんもお悩みの際はお話しして下さいね。……その、頼りにならないかも知れませんが」


「勿体ないお言葉です、ありがとうございます。

 ……確かに悩みはあるのですが……

 他人様にお聞かせできるようなものではなくて」


「シリウス様の事でしょうか」


 彼女は少し戸惑った様子を見せた後、一度だけ微かに頷いた。

 目を下方に伏せ、二個重ねた鞄をぎゅっと抱きしめる。



「いつか……カサンドラ様に、ご相談出来ればいいのですが。

 中々勇気が出なくて」



 あまり他人に悩みを相談する性格ではない彼女にとって、恋愛関係の話をカサンドラに打ち明けづらいものかもしれない。

 リゼやリタとは全く異なる彼女を見ていると、やはり性格の差異に驚かされる。





 ※




「まぁ、カサンドラ様。リナさんも! わざわざ訪ねて下さってありがとうございます……!」


 血色も良く、医師も席を外していて問題が無いと思えるほどには元気なデイジーである。

 聞けば、そろそろ馬車が着く時間なので医師が戻り次第、一言お礼を言って帰宅しようとしていたところらしい。

  

 リナと一緒に顔をひょっこりと出すと、彼女は寝台の端に座ったまま両頬を掌で覆って恥ずかしそうに笑んだ。

 はきはきとした口調、そのフットワークの軽さが持ち味のデイジー。

 そんな明るい彼女は、黙って座っていれば可愛らしいお人形さんとしか表現しようのないまごう事なき美少女である。


「もうお体の具合は宜しいのですか?」


 カサンドラが問いかけると、彼女は大きく頷いてくれた。


「はい、すっかり大丈夫です」


「良かったです。

 デイジーさん、教室にあった鞄を持ってきました」


「ありがとうございます、助かりました」


 そう言えば、と。デイジーはリナに鞄を手渡してもらい、ぺこりと頭を下げた。

 去年カサンドラも医務室で休んでいたは良いものの、鞄は持ってきていなかったことを思い出す。

 あの時もリナがこっそりサイドテーブルに置いてくれていたなと、懐かしい。サンドイッチがとても美味しかったことも。


「デイジーさん、一体何があったのですか?

 あの教室で、何か衝撃的なことでも……?」


 興奮して倒れるなど、尋常ではない。


「え? そ、それは勿論!

 カサンドラ様と王子の親しみを感じるやりとりを拝見したからです!」


 デイジーは力強い口調で言い切り、ぐっと拳を固める。


 まさか王子の挨拶のせいでデイジーが医務室送りになったとは思っていなかった。カサンドラは言葉を失って瞠目する。


「そ、そうだったのですか……」


 何と答えれば良いのか、一瞬怯んだ。


 そう言えばデイジーは王妃として立つカサンドラの側近になるよう、家族から厳しく言いつけられているらしい。

 だが事情を度外視しても、カサンドラが王子の婚約者として盤石な状態であることを――こんなにも心から喜んでくれる女生徒はデイジーだけではないだろうか。


 喜びの余り意識を飛ばしてしまう程、カサンドラのことを気にかけてくれていたとは……

 王子とのカフェデートを演出してくれたこと、そしていつでもカサンドラの味方でいてくれたことに胸が詰まった。



「本当にようございましたね、カサンドラ様。

 とうとう王子と身も心も結ばれて……

 影ながらお祈りしていたことがまことに叶って嬉しく思います」



 ほぼ涙ぐんでいると言っていい。

 目じりの端を指先で拭うデイジー。その仕草に誤魔化されそうになったが、カサンドラの耳は彼女の言葉をしっかりと拾い上げていた。



「……………え?」



 デイジーは、今、何と……?



「ああ、これは失礼いたしました。はしたない言動、申し訳ございま――」


「いえ、あの、何故……?

 わたくしと王子は、その、全く……デイジーさん! 貴女、もしかしてとんでもない勘違いをなさっているのでは!?」


 信じがたい誤解を目の当たりにし、カサンドラこそその場に卒倒しそうになった。


「……? 何がでしょう……?

 え? でも、その……

 殿方があれほど慕わし気に態度を変じるということは、そういうことなのでは……?」


 カサンドラの焦り具合に、ようやく彼女も自分が事実ではない間違いを抱いているのだと疑い始めたようだ。

 だが、そうですよね? と傍に所在投げに立ち尽くすリナに縋るように視線を遣った。


「……。

 何かあったのだろうなぁ、ということくらいしか……

 ごめんなさい、私にはお答えしかねます!」


 両手を突き出して左右にブンブン振るリナは、完全にカサンドラと目を合わせず顔を真っ赤にして叫ぶ。





 ……え? ………? 




「そのようなことは一切ございません! 誤解なさらないでください!」




 もしかして周囲のクラスメイト達が一様にあんなに動揺した中には、そういう根も葉もないストーリーを勝手に作り上げた者もいたから!? 馬鹿な! あの王子に限って、あるはずがないではないか、失礼極まりない話だ。


 だが……そうだとしたら、もう恥ずかしくてどんな顔をして教室に入れば良いのか分からない。



「カサンドラ様。私とリナさんは口が堅いです。本当の事を教えて下さっても」



「もう一度申し上げます、そのような事実はありません!

 デイジーさん、学生の身で何という事を口になさるのですか」



 この乙女ゲームは全年齢対象だ。

 そのような事故はまかり間違っても起こるはずが――



 あれ? でもシナリオが崩壊してしまったら、もはやゲームの設定と言う括りはなくなってしまうのだろうか?

 当然、そんなIFストーリーの事など今のカサンドラに分かるはずもない。



 頭の中は大混乱だ。



 気まずそうに視線を逸らすリナ、そして呆然とするデイジーの視線から逃れるようにカサンドラはその場に蹲ってしまった。

 穴があったら入りたいとは、まさに今のことであろう。



 

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