第349話 宿題



 夕食を終え、父とアレクの三人で話をするために場所を移動する。

 普段全く使用されていない、父がこの場所に滞在する時のために設けられた書斎だ。


 もはや書物や資料の保管庫となっている一室であるが、使用人達がきちんと掃除をし、丁寧に管理してくれているおかげで埃臭さは全く感じない。

 話の内容が内容なので完全に閉めきった室内、部屋中央に置かれたテーブル中央の箱を空けると――

 中に入っている光石の淡く白い輝きが、真っ暗だった書斎を隅々まで照らす。



「――さて、話をしようか」



 ゆったりとした皮張りのチェアに腰を深く下ろし、父はこちらを仏頂面で見据えてくる。

 この厳めしい顔はフレンドリーさとは程遠く、話す相手を無駄に委縮させると思う。


 カサンドラとアレクはお互いに同じソファに横並びに腰かけ、緊張した面差しのまま固唾をのんで侯爵の発言を待つ。



「私の意見を述べておこう。

 アレクからも伝わっていると思うが、改めて言う。

 ――私はお前と王子の婚姻に反対の立場だ」


 単刀直入。

 父の放つ言葉の槍がカサンドラを深く貫く。びくっと肩を揺らし、カサンドラは口を一文字に引き結んだ。


「現状、クローレスの統治機構の在り様に異論があるわけではない。

 王より賜ったレンドールの地を治める事が私の役目だと考えている。王家に迎え入れられたお前を通し中央に牙城を築こうとも思っておらん。

 中央との交流が増え手間なだけだ。

 お前が王家に入ることは私にとって足枷にさえなりうるということを、まずは分かってもらいたい」


 それは重々承知している。

 父は偏屈で真面目な頑固者だとカサンドラは捉えているが、その頑なな保守的思考は領地を切り開くのに向いていない。

 既に治めている領地をいかに安定、発展させていくか。完全に内政型の主である。


「王家の現状も知っている以上、猶更だ。

 何故、そんな面倒でややこしい事情を抱える場所にお前を向かわせねばならん」


 彼に野心があったら、また話は違っただろう。

 でも娘を危険と思われる場所に向かわせ、離れた安全な場所で枕を高くして眠るような人ではない。  


「だが知っての通り、私はお前に機会を与えた。

 この話がどう進むのか、転ぶのか、それとも私が終わらせるのか――お前次第、という賽を振ったわけだ。

 それはまぁ、陛下にお前が請われていたという事情、お前が王子の事で騒いで手が付けられなかったからという理由もあるのだが」


 はは、と。隣に座るアレクが小さく笑う。

 父の照れ隠しのような言い方だと、義弟はそう捉えたのかもしれない。 


 王子と結婚したい!


 そんなに騒いでいたかなと思い返すが、確かにお城の舞踏会から帰って来た時に物凄く叫びまわっていたような気がする。

 さながらアイドルに直に会えた一ファンのように、きゃあきゃあとみっともなく騒いでいたような……

 当時を思い返すと顔が真っ赤になる。なんてミーハーだったんだ。


「今一度聞こう。

 キャシー、お前の望みは何だ」


 今の父の話を受けて、なお自分はどうしたいのか、か。

 本当は王家の事情に関わって欲しくないという彼の意見を聞いた上で、カサンドラはどう答えるべきなのか。


 いや、最初から分かり切っている事だ。




「わたくしは王子に幸せになっていただきたいのです。

 どうか、お父様のお力添えを願います」



 この世界で記憶を思い出してしまった時から、その決意に変わりはない。

 彼を破滅の未来から守りたいと思った、そして幸せになって欲しいと思っている。

 カサンドラ一人では無理だと言うのなら、力と知恵を貸してもらえる相手に協力を申し出る他なかった。



「…………。」


 しばらくの沈黙の末、クラウスは大きな溜息をついて肩を竦めた。


「そうか。ならば私もそのつもりで話に臨もう」


 嫌な顔の一つでもされるのかとドキドキしていたが、クラウスは淡々とした口調でカサンドラの言葉に頷いた。


 出来る事なら子供に苦労させたくない親心。でもカサンドラがそうしたいと強く望むのなら協力は惜しまないだろう。

 以前アレクが父のことをそう言っていたけれどまさしくその通りだと思えた。


 とても有難く、暖かい。


「では目的の確認だ。

 お前は王子の幸せというが、どうすれば王子は幸せになれると考える」


 急に直球ストレートを投げつけられ、つい仰け反った。

 だが確かに目的をはっきりさせるというのは大切な事だ。自分は現実がどうなれば満足なのだろう。


 どういう状態が、彼にとって幸せなのだろうか。


「復讐や恨みを晴らす事を考えなくても、満たされた状態……でしょうか」


 自分でも、かなり抽象的だなと思う。


 彼の境遇を考えれば、御三家の当主を恨み同じ目に遭わせたい、復讐をしたい、権力を奪い返したいという想いは正当なものだと思う。


 だが彼は優しい人だ。自分がそうすることで、多くの人が悲しむことを知っている。

 彼本人も言っていたように、大きな混乱を巻き起こして傷つかなくていい人が傷ついてしまう事態を望んではいない。

 恨みを晴らしたその後、壊れてしまった全てを再建していく事は王子一人ではとても困難な事だ。

 だから彼は踏みとどまり、一人哀しむだけにとどまっている。


 王妃が殺されてしまった事は悲しい。

 つらい――その想いは当然だ。


 でも彼は復讐をしない道を選んだ。

 世に訴え糺すよりも、呑み込んで受け入れると彼は決めた。


 ならば、辛いことがあったけれども、これからは楽しい事や嬉しい事も沢山あるのだ、と。”その選択は間違っていない”と寄り添いたいと思う。

 王子がどうしても復讐や暗殺などを考え望んでいるのなら話は別だが。

 そんな事を考える人ではないとカサンドラは知っている。


「では質問を変えよう。

 私がお前に何を与えれば、どんな協力を約束すれば――王子は満たされるのか」



 その瞬間、色んな要素が脳内を駆け巡る。

 王子を満たすもの……

 お金でも、物でもない。


 ハッと思い付き、カサンドラは膝に乗せた手に力を込める。




「――わたくしの身の安全……だと、思います」




 自分をどれほどのものだと思っているのだと恥ずかしく思う気持ちは強い。

 だが先日の王子の言葉を思い返せば、彼がいかに大切な人を”失う”ことを恐れているのかと胸が痛い。

 その彼の根底にある不安を、カサンドラが払しょくすることが出来るのなら……


 王子の心は自由になれるのではないか。

 自分の気持ちを偽る必要もなくなるのだし。



「ではお前の身の安全を確保する事を目的にし、話を進める」



 クラウスは眉一つ動かさず、そういう希望が突きつけられることが分かっていたかのように軽く頷いた。

 それはカサンドラには拍子抜けの事態だ。


 カサンドラが安全になれるとは、王子の様子から察して思えなかったから。

 そんなに容易く、簡単に安全が手に入るのだろうか。



「まず考えなければいけないのは、どうして先代の王妃が亡き者にされたのかということだ」


「ええと、それは国王が三家の意志を無視して法を強硬に……」


「――原因はどうあれ、何故王妃を殺すことが可能だったのだろうな」


「……? 下手人を雇って……」


「先代の王妃の出身を知っているか」


 先代の王妃。

 勿論三家に連なる立派な出自のお嬢様のはずである。何といっても、王妃様なのだから。


「エルディムに所縁ゆかりのある家だ」


「あっ……」


 何となく父の言わんとすることが理解できた。

 一国の王妃ともあろう人間、それも正統なる王子を生み国母としての務めを果たした人間が亡くなったとすれば、当然適当な誤魔化しなど出来はしないはず。

 事故に偽装したとしても、遺族は納得できないことがあれば間違いなく精査するだろうし……

 あの不審な状況を”事故”の一言で片づけられたとすれば抗議するに違いない。

 身内の王子や国王が明確に殺されたと判断できるような状況だったとすれば、猶更。

 彼女の生家が黙っているはずがない……


 でも、そういう声を簡単に抑え込めるだけの力関係にあったから、実行に及べたのだな。

 王妃の出自から、エルディムの当主エリックを相手取って真っ向から対立できるような関係ではなかったと推測される。


 大袈裟に騒ぎ立てることさえ許されない、絶対的な支配関係にある家の娘だからこそ、王妃は……

 あんな見せしめとも言える形で、いともたやすく手を下された。


 ぞわっ、と全身総毛立つ。



「子飼いの家から出した王妃だからこそ、事に及べたのだろう。

 慎重で荒立てたくないというあいつらしい話だ。


 ――では、お前が彼らによって先代の王妃のように害されないようにするには、何が必要か分かるな」


「……。

 それが、レンドール……?

 ……彼らが簡単に押さえつける事の出来ない家の出身なら、そんな無茶は出来ません」


 カサンドラに何かあれば、絶対に口を噤むことなく、泣き寝入りすることなく。

 真っ向から対峙出来る実家の存在があれば、彼らも易々とカサンドラに手をかけることはないだろう。


 王国内に大きな変化を齎すことを三家の当主が厭っているとするなら、レンドールという地方侯爵と対立することを何よりも嫌うはずだった。

 彼らは決してこの国を破滅に導きたいわけでも、全ての富や栄誉を手中に収めて暴政を敷きたいわけではない。


「重ねて言うが、私はエリックらの政治方針に特に言いたいことはない。

 この西大陸をクローレスという王国が音頭をとってまとめ上げ、戦争を繰り返す時代を終わらせた功労者の子孫。広い王国をそれなりに善く治めていると一定の評価も可能だろう。

 王家の存在だろうが三家の力によるものだろうが、私はその恩恵にあずかっている身だからな。

 大きな不満がない以上、彼らと相まみえるなど勘弁願いたいところだ」


 一拍置いて、クラウスは話を続ける。


「だがお前の身に何かあれば、レンドールは全力で彼らの非道に対抗する心積もりがある。

 それこそ、独立戦争も厭わない。

 エリックらがこちらの覚悟を理解すれば、お前は先代の王妃のような末路を辿ることはない。

 お前を害することで得られる利益が、レンドールと一戦交えるには見合わない――と彼らに都度思わせれば、お前の身の安全は確保される。


 私はお前の意志を尊重する。

 彼らを牽制できる程度には、軍の再配備を進めよう」


 それが本来の”後ろ盾”ということか。

 カサンドラに何かあれば、絶対に妥協せず引き下がらず、真相解明を求める。

 例え挙兵してでも抵抗を試みると伝われば、丸め込めないと悟ってカサンドラに手を出し辛いのは理解できる。



「本当に……それだけで、わたくしの身の安全は保障されるのでしょうか。

 その言い方では、彼らが得るメリットがデメリットを上回ればその限りではないと判断することも可能だと聞こえます」


 実際に彼らがカサンドラを害そうと思えば、きっとそれ自体は難しい事ではないのだろう。王子がカサンドラを守れないだろう、絶対に失ってしまうだろうと最初から諦めてしまっていたように。


 レンドールは地方貴族としては大きな力を持っている。

 国王陛下が何とかして取り入れ、自分の味方になって欲しいと冀い続けた豊かな領地なのだ。


 だが所詮、一地方の領主。

 ロンバルドがその気になれば、正規軍隊になすすべなく蹂躙されることになるだろう。

 抵抗すれば一矢報いることが出来るかもしれないが、兵力の数も質も段違いなのだ。


 確かに手折ろうとすれば棘が刺さって痛い花。

 でも痛い事を我慢すれば簡単に手折れる花。


 レンドール領と引き換えにしてもよいと思える、もっと大きな利益が見込めることがあって。

 王となった王子が、その政策に難色を示し、反対した場合……

 

 メリットデメリットを天秤にかけ、利益に傾けばその限りではないのでは?


 カサンドラの身の安全は本当に確保されるのだろうか。

 レンドール共々、踏みつぶされはしないだろうか。



 だって、彼らは慎重だがとても大胆。

 いくらエルディム派の貴族とはいえ、王子諸共王妃を殺そうなんて冷酷な判断が出来るのだ。

 そんな相手に、常識や理性を期待しても良いのだろうか。


 レンドールがしっかりとした後ろ盾になってくれれば全てが解決するなら、王子もここまで苦悩することはなかったのではないか……?




「はは、キャシーよ。

 お前は物事を穿って考えられるようになったものだ。

 ……そうだ、これから私はお前に『宿題』を出そうと思っている」




 ここにきて、初めてクラウスが破顔する。

 彼の考えている事をちゃんと追っていることを認めてもらえたようだが……


 宿題……?



「残りの学園生活で必ず、”地方の生徒”達の待遇を何かしらの形で改善し、報告するように」



「……待遇……改善?」



「先ほどお前が言ったように、確かにレンドールだけでは彼らへの抑止力とするのに万全だとは断言できないな。

 お前が王家に嫁入りするというのなら、私は他の地方領主たちの協力を取り付けに行かねばならん。

 地方の貴族連中全て・・を、お前の後ろ盾にするつもりでな。


 お前が王家に入り王太子妃だの王妃だのに立っている間は地方に大きな恩恵があると思わせれば、交渉もやりやすい。

 ――学園という一つの社会で彼らの待遇を改善したという実績を示せば手っ取り早く説得力も増す。


 これが宿題だ」


 余りにも突飛な発想過ぎて、見開いた目が瞬きを忘れて乾燥してしまった。

 パチパチと瞼を何度も上下させながら、カサンドラは唖然とした顔で父を見遣る。



 地方の貴族全てをカサンドラの味方にしてしまおうなど――アレクも似たような事をこの間言っていたけれど、冗談ではなく本当に考えていたのかと驚きを禁じ得ない。


 自分の身の安全を確保することは、王子の負担軽減に繋がる。

 堂々と彼と共にこの先も一緒に歩いていくための絶対条件であった。


「現在中央は地方における内乱の頻発で頭を痛めている状態なのはお前も知っているな?

 ここで一斉に彼らが牙を剥くと想像するのは悪夢だろう。

 そうなると予測できる状況に填めこめば、間違いなくお前に手は出せんよ」


 三家でさえ、手が出せない状況。

 その言葉はとても希望に満ち溢れていた。



「それだけの力があれば、王家は本来の実権を取り戻せるのではないでしょうか」


 身の安全を飛び越えて、王子の理想とする本当に王家を中心とした”王権”を復活させる足掛かりになるのではないか。

 一足飛びにそこまで想像してしまい、身が震えた。

 彼の役に立てるかもしれないと。


 だがその興奮に冷や水を浴びせるように、父は厳しい顔で叱咤する。



「キャシー。」



 まさに親に叱られた子供そのものだ。

 調子に乗って、頭上に拳骨を食らった気分である。



「私はお前の身の安全を確保する事に全力を尽くすと言っただけだ。

 王家――王や王子のために”実家”レンドールを使う事は絶対に許可しない。

 お前たちが強引に三家の領域に踏み込めば、間違いなく衝突し争いが生じる。……分かるな?」


 気迫に圧され、頷く他なかった。

 

 確かに……

 三家の要望を聞き入れるよう、言うことを聞かない王子への見せしめとしてカサンドラを害するのと。

 彼らの持つ実権、権力。それらを取り戻そうと王子が動き出した場合では全く違う話だ。



 後者の場合は、こちらが彼らを攻撃した形になる。今持っているものを返せ、渡せと詰め寄るわけだ。

 そうなれば、彼らも自分の身を護るため――国を二分する覚悟ででも徹底的に争うことを選びかねない。


 そうなったら、まさに悪夢だ。

 混乱どころでは済まない。中央と地方を分かつ争いになり、多くの人間が不幸になってしまうだろう。

 


「……私は、お前のために領民に戦い傷ついてくれと言う覚悟はあるがな。

 中枢の権力闘争の内輪揉めのために傷ついてくれなど、絶対に言うつもりはない。

 ゆえに陛下が私を利用するような動きを見せようものなら、お前の意志を無視してでも婚約を一方的に破棄する決意は変わっていないぞ。


 良く覚えておくように。

 それが、お前に協力する条件だ」


 あくまでも、盾。

 それ以外の使い方をされたくないから、クラウスは国王の申し出にずっと難色を示していたのだ。

 間違っても、奪われた王権を取り戻すためや王妃を殺された復讐のため、自分クラウスが用意した味方を巻き込むことはしたくないから。


 ……カサンドラが強い意志で王子の傍にいたいと思わなければ、協力を申し出るつもりがなかった。

 もしも約束を破ってカサンドラが父の威を借り、三家に敵対するような真似をして争いが生じたら……

 その時は父も自分を見限り、見殺しにするという選択を選ばざるを得ないのかもしれない。カサンドラもそれだけは避けたい。



「承知しました。

 お父様のご助力を頂き、とても心強く思います」



 クラウスとの話をしていく中で、自分の中でも整理が出来た気がする。

 これから自分は味方を増やしていくべきだと、すんなり腑に落ちた。そうすることでより安全になれ、ひいては王子も安心できる、と。



「宿題の件も承りましたが……

 わたくしが学園で目立った動きをすれば、その、身に危険が迫るなど……?」


「今の段階でお前に害をなして、一体あいつらに何の利益があると言うんだ。

 お前を殺して得られるメリットは王子を悲しませて絶望させるくらいしか思いつかんが……

 ……彼は今でも十分、三家に遜って従順ではないか。


 ただ、重々襟を正し、足元を掬われないよう心掛けなさい。

 お前が王子の婚約者として相応しくない行いをすれば、婚約を解消させる口実を与えるわけだからな。……まぁ、私としては……そちらの方が安心ではあるが、お前には辛い事なのだろう?」







       カサンドラ・レンドール!

       お前を学園から追放する!






 ぐっ、と息を呑んだ。

 過去のゲームの断罪シーンが脳裏を過ぎったからだ。


 殺されることはないのかも知れないが、婚約を破棄されて追放される……という未来は起こり得るのか、と。





「……肝に銘じます」



 


 だが少し、気が楽になった。


 王宮は彼ら三家の息が随所に掛かった、危険な領域かもしれない。

 でも学園に通っている間は、別にカサンドラをいきなり傷つけたり殺そうとする意味がない。

 目障りだと思われて足を引っ張られる危険はあるが、王子が危惧しているように命の危険まではないと思う。



 そして――

 自分が王宮入りした時には、クラウスが三家の不穏な動きを抑制しカサンドラの身の安全を約束してくれる、と。 



 勿論そのためには父に出された宿題をこなさなければいけない。


 漠然としているが、クラウスに話をする前の何をしていいのか分からない右往左往感が消えた。

 やるべきこと、今後の展望が見えて来たお陰だ。




「後のことはアレクとよくよく話し合うように。

 ……私はお前の要望に応え、お前の身を守れるよう動くだけだからな」




 今まで黙って座っていたアレクは、静かに頷く。



 何故か、一瞬彼の表情は沈みがちに見えたのだが……



「良かったですね、姉上。

 及ばずながら僕も力になりたいです、一緒に考えましょう。


 ……ですが……」



 やはり、彼は目を伏せる。



「アレク?」




 いえ、何でもありません。と。彼は首を横に振って、『不安』を打ち消しているかのようだった。



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