第30話 お昼ご飯

「好きなだけいっぱい食べてね。おかわりもすぐ作れるから」


「はい。いただきます」


「エイタ君なんて食べ盛りよね。マサミさん頑張っちゃった」


 机に所狭しと置かれた料理は30分くらいで作られたとは思えない量があった。見たこともないようなヨーロッパ系っぽい料理は手も込んでいるようで、白い大皿に盛られた料理にはパセリも添えてある。


「ルリちゃんも遠慮しないでね。よしよし」


「やめてください」


 ルリにデレデレな態度のマサミさんが我慢できないといった様子でルリの金色の頭を撫でる。その様子は我が子を甘やかしているようだった。



「ちょっとあなた。いただきますを言ってから食べ始めてよ」


「いつも言ってないじゃないか」


「今日はお客さんが来てるでしょ」


「はいはい。いただきます」


「もう遅いわよ」


 まだ会って間もないがエイタは大体マサミとダイスケの関係が分かった。基本的にぼんやりしているダイスケにマサミがあれしろこれしろと言うのだろう。ダイスケも言われるのに慣れている感じだった。


「ルリちゃんおいしい?」


「……」


「おいしいでしょ?」


「……はい」


 ルリのマサミへの塩対応は続いた。


「よしっ」


「エイタ君もおいしい?」


「はい。おいしいです」


「よしっ」


 公民館で食べていた給食みたいな料理と違って家庭の味がした。料理にハマっていると言っていただけあって味もたしかにおいしかった。


「それで、僕の研究を手伝ってくれるんだって?」


「あ、えっと……」


「さっきマサミから聞いたよ」


 お昼ご飯を食べ終わったらエイタは自分で言おうと思っていたが既に把握してくれていた。


「ダメ……ですか?」


「うーん。気持ちは嬉しいよ。とってもね。でも、僕の研究を手伝うのは大変だと思う」


「なんでもやります!」


 エイタは口にあるものを飲み込んで自分の中のやる気を吐き出すように言った。


「そうかい?じゃあどうしようかな……とりあえず今日はここでゆっくりしていくかい。この研究所に泊っていくといい」


「……はい」


「そうだ、エイタ君。あとでキャッチボールでもしないかい。最近運動不足でね」


「はい!」


 手伝う内容に納得がいく前にとにかく良い返事をする。



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