第6話 2020年12月25日 瞬き

 来年2021年に延期されたオリンピックは2021 Only TOKYO Olympicとして縮小開催される。それに伴い割りを食うのは東京都だ。新型コロノウイルス0地帯を標榜する為に2020年12月31日で東京都と外部と対応隔離される。

 それ故に、この中規模のカテルドナル碑文谷協会のクリスマスと来たらだ。去年の軽く3倍は礼拝に訪れている。先々東京都が永遠に隔離される訳でなく、何ら問題が無ければいつもの様にまたクリスマスシーズンを迎えられるのだが、まあそこもなのか。

 今月頭の大阪地域新型コロノウイルス騒動もあれば、災厄が延々と続くやもしれないと、平癒を願う信徒は次々訪れてしまうものか。こんな時代でも己を見失わないのは光明だ。これは啓蒙を語るのではなくある指標に則っている。ウルトラワクチンを接種しない所謂コレクターは頑なに多く、日本ではウルトラワクチン接種率91%止まりであったが、大阪地域新型コロノウイルス騒動を機に、99.3%とあと一歩の完全検疫に近ずいている。それはそうだろう、大阪地域新型コロノウイルスに感染し死に至る迄の悲哀さと来たら、プライドがこり固まったコレクターでも密かにウルトラワクチン接種に傾かざる得ないだろう。

 夕べの会のボランティアライブ迄のこの待ち時間迄に、大阪地域新型コロノウイルス騒動の中心地の大阪市で何があって、それが本当に正しかったか、俺のまとめ癖がつい浮かび上がる。それも著書「弔い」に続く二作目を上役からやや急かされては、書かざる得ないクーデターでもあって。そう明治維新以来の反政府行動に出た連中はどうにか方を付けなくてはいけない筈なのだ。


 その不幸は、大阪地域新型コロノウイルスの症状が確認され始めた今年2020年12月3日あたりの各種記事に散見し始める。

 罹患したと見られる者の下痢嘔吐症状が激しく、我慢出来ずに大阪市中で吐瀉し始めた。SNSでは卑劣にもアップ画像が上がり始め嘲笑の対象だったが、その時点ではその後の悲劇を想像出来るものではなかった。大阪市中の病院の医者の見立てでは、ノロウイルスのそれかで対処に入り、市保健所ではまさかの外国由来のコレラの線でも確認作業に入っていたが、その何れでもなかった。

 ここから先は、関西の一大政党大阪真髄の会の申し入れで秘匿された情報になり、俺は東海快速新聞大阪支局の元同僚井伏矜持から切に聞かされた内容になる。

 まず大鉈を振るわれ厳命された記事は、大阪府の解体だ。大阪市を中心とする大阪臨時行政区と、その他の大阪市街は円環府として分離され、日本国は暫定政府未公認のまま48都道府県行政区が突如して発現される事になる。ただそこで大きな思惑が走る事になる、大阪府内の無形の予算と資産を大阪市から根こそぎ奪い、円環府に委譲する形になる。表向き円環府のいち早く成立の為にも、予算を多く投じて行政組織として機能させるらしい。大阪真髄の会は根本から腐ってるのは後で知る事になろう。

 何故このタイミングで行政体で発生させたかは、兼ねてより大阪府は機能不全に陥っており財政破綻は何れかであるが大阪真髄の会の主張で有り。大阪府の隣接府県地域に大阪府の一部の分離割譲を行うが崇高な政治理念とかであったが、今年4月の大阪府発展構想住民投票は大阪府民の大反発を喰らい、そう結果は大惨敗に終わった。

 誰もが大阪真髄の会に愛想を尽かし段階的任期を経て消え行く存在であったが、それもコロノ禍の騒動で、皮肉にもやはり頼るべきは大阪真髄の会であるが大阪府内の世論に至った。それも大阪真髄の会の連中は口八丁で民衆とマスメディアを取り込み、コロノ禍に打ち勝とうの民間療法を幾重にも刷り込んで行ったからだ。この手法も普段ならば関西コミュニティに止まる筈なのだが、関与第三波で東京の放送キー局が崩壊して、代わって指揮を取ったのが関西の放送各局が取り行った。

 そのもっともたるのは、松尾定飯がアンカーマンを務める第一大阪テレビの情報報道番組:極上ハウスだ。蜜月な大阪真髄の会直轄の受け売りで民間療法を特集しては高視聴率を得る独断場となる。しかしだ。このコロノ禍を相手に、配合酢のマイボトル持参で免疫向上しよう/アルコール類を兎に角どんちゃん飲んで滅菌しよう/一日ヒンズースクワット50回しては体調を整えようだ。何ら検証も無い民間療法を関西圏外は冷ややかに見るも、大阪真髄の会の基盤となる大阪府は違った。このコロノ禍でも大阪真髄の会は親身になってくれる見直したわで額面そのまま支持率を回復した。それも止む得ない。大阪府発展構想失策のたった一点を除いては、大阪真髄の会はおもろいなは俄然だからだ。世が暗くなると民衆は灯火でも暖炉に見えるのは古今東西の悪徳政治の手腕だ、無理も無かったのか。

 実質大阪府は大阪真髄の会は大阪府で手法も強引に一党独裁体制に入り、各メディアも多種多様な情報を得る為に、本意では無いもののへり下るしか無かった。その悲惨な状況下で大阪地域新型コロノウイルス騒動は巻き起こり、取り返しの付かない新たな脅威を世界に広げて行く。

 そう大阪真髄の会は大切な事を隠した。大阪市中で急勾配で上がる下痢嘔吐症状は、ノロウイルスでもなく、外国由来のコレラでもなく、新型コロノウイルスがコレラと合併し拡大変異した通称大阪地域新型コロノウイルスだったからだ。中央の国立感染症研究所が麻痺している状況で、大阪の学術機関私大堺医科大学が幾つもサンプリングした所、新型コロノウイルとコレラの化学式が見事に合致した変異体の報告を聞いて、それでも隠した。奴らはこの対処出来ない事案に政治の支持基盤を失う事を嫌った。それでこのまま世界に新たな脅威を浸潤させて行く采配だったのだから、一日本国人のモラルとは何かを考え直さざる得ない。


 大阪地域新型コロノウイルス感染症は、後にその始まりから大きく明らかになって行くのだが発端はこうだ。その大阪地域新型コロノウイルスの拡散は、食品データーベースのトレーサビリティで概ね韓国釜山市から輸入した加工鮭のいくつかに付着していたとの絞りに絞った調査で判明しつつあった。汚染加工鮭はまずは大阪市中央卸売市場本場の仲買人から始まり、気付かず汚染加工鮭の大阪市中への流通し、拡散はあっという間だった。辛うじての救いは大阪市外を発したのは東京の大衆料亭のチェーン店だけであったので、悲劇は最低限に抑えられた。

 とは言え悲劇は悲劇だ。大阪の路上と隈なくあるトイレの施設の何れも吐瀉物汚染の温床となり、知らずに上限なく感染して行く。その第一症状から、身なりの良い市民にとっては生涯の恥辱となるアクシデントが日々続いた。

 そして何も知らされず適正業務をこなす保健所はノロウイルスに絞ったのが失策の始まりだ。それは決してノロウイルとは違う、全方位で感染する大阪地域新型コロノウイルスのそれで有り、ほぼ皆が接種したハイパーウイルスであっても経口感染があれば一発でノックダウンになった。その新症状として、低体温症と、脱水症状と、吐瀉し過ぎて器官が傷んでは出血も止める事は出来なかった。漏れ無く重篤後死亡に至り、1週間後の12月10日の段階で大阪府総合の死者は瞬く間に30万人を超えた。

 この頃になると、やっと関西のメディアも騒めき始めたが、一体どこの横槍か民間療法で免疫高めようの大特集を組み、アルコール大摂取滅菌が止めとなって出血が止めようがなく、患者はトリアージの管轄外置き場へと直送された。


 ここで俺は「弔い」アドバイザーチームの与し易い牛込女子大学病院総合診療科教授楠瀬一樹にこれはどうなってると情報確認に入った。

 楠瀬教授の緊急外来にも、それらしき患者が運ばれ完全隔離し、徹底食液を投入したら改善したとの事だ。

 見たままコレラの症状ではあるが検温が乱高下した為、安易なコレラ治療薬テトラサイクリン系抗生物質の投薬は控えました。もっとも受け入れたのは何れもウルトラワクチン接種者なので、何かしらの抗体防壁を張れると睨んでいたのでこれが正解だった筈です。仮にコレラ治療薬を投下していたら推定新型コロノウイルスが更なる変異をしたやもしれないので緊急外来連合には言い含ませました。東京は楠瀬教授がいて運がついていた。ただその通達も大阪に届いている筈だが、病床が溢れかえっている状態ではどうしても想像難くない治療薬を投入して、オーバードーズを進めてしまったので、これは止む得ない悲劇だったかもとになる。

 そして12月15日。依然として謎の症状は存分に席巻しては大阪市中心の死者が50万人を突破した時点で、大阪市の緊急医療タスクは崩壊して、あの忌わしい大阪府の解体が然もありなんとばかりに厳かな会見が記者クラブの冷ややかな視線の中で開かれた。


 2020年12月15日正午12時00分。吹田市役所での緊急重大会見は隠密裏にも。

 大阪真髄の会の両巨頭である、若頭風情の大阪真髄の会代表又は大阪市長松永真寿郎と、反社会組織系強面の大阪真髄の会副代表又は大阪府知事荒木宗房が、面持ちも何故か晴れやかに当時クローズドな会見に臨んだ。それは余りに酷すぎた。まともな連中から見ればあからさまなクーデター正当化会見であった。

 荒木宗房大阪府知事が凄みを利かせては吐く。現在拡散性の強いコレラ菌が蔓延しており、大阪府だけでも死亡者50万人超、罹患者は150万人超であり、総じて発生元である大阪市民300万人を隔離せざる得ないと。これは何れも局地的に大阪市ど真ん中と隣接地域に広がりつつ有る故と良くも言う。この最悪の現状打開するには、予てから大阪真髄の会の訴え上げてきた重要課題、大阪市を即刻独立させる事にしました。即ち生命を最優先すべきの隔離処置を直ちに断行します。

 次いで、もう一人の悪人松永真寿郎大阪市長が自慢顔で軽妙な節回しで然もありなんに。我々大阪真髄の会は大阪府発展構想を途轍もなく飛躍させ、大阪市を大阪臨時行政区とし、それ以外の大阪府地域を円環府とします。これは掛かるコレラ災厄に果敢に挑み生命の最優先を図るために、コレラ汚染地域を何としても封鎖する為です。大阪市に住民票を置く市民は、大阪市内に待機し円環府並びに他県に離散する事は許されません。これは日本国を救う生命の選別で有り何としても受け入れて貰います。ゲロや下痢で人間はそう簡単に死にません。ここは日頃地域密着テレビで放送している民間療法を思い出して免疫をどうか高めて下さい。あなたが約束を守ればたくさんの生命を救えます、頑張ってヒーローになりましょう。まあ宣言はこんな感じで良いでしょう。各記者さんは流石に物分かりが宜しいで良いですね。


 俺はこの一部始終を、元同僚の東海快速新聞大阪支局井伏矜持から相談を持ちかけられ呆れ果てては、速報にせず何故翌日の朝刊一面に回すのかをこれでもかと問い詰めた。

 ここですっぱ抜いたら大阪市が大暴動になりますよ。現にSNSで噂を嗅ぎつけて大阪市境界線に飛びつたら警官にバリケードされていたと。ここで火炎瓶投げ放題になるのでしょうが、現実は既にコレラ災厄は蔓延しており、ひと暴れするだけの体力がまるで無かった様です。

 貴様はその会見に異を唱えず、見ていただけなのかと柄にもなく強く出るが。

 大阪臨時行政区と円環府の独立は府議会と市議会で、きっちり防疫対策していた大阪真髄の会の出席賛成の元、公正な追加立法として通りました。大阪真髄の会が強権を掌中にした事から、ここから先の情報は一極集中となり阿るしか有りません。現に大阪真髄の会の提示した報道協定の誓詞、大阪真髄の会による一部始終の情報開示を持って憶測を一切廃止し一字一句正しく報道する事ですよ。応じなければ無情報で、俺達報道記者が関西の市民を言い分コレラ災厄を広げただ死に晒す事になります。鉄平さん分かりますよね、時局は切迫しています。俺だって分かってますよ、こんなでたらめなクーデター連中に付き合いきれない。鉄平さんならこれを打開出来ますよね。

 俺は、誓詞にサインしたのかとゆっくり聞いた。

 そこは支局に持って返って上長の指示を貰いますで、記者連の阿吽の呼吸で辛うじて後回しにしました。

 矜持は流石機微に動くなで労い吉報待ってろと、俺は即座に通話を終えては関係各位に根回しに入った。

 ここで頼みたくも無い奴国連本部極東衛生司政官榊志摩の携帯とオフィスに電話したが一向に繋がらなかった。止む得ず代表番号に電話したが榊志摩極東衛生司政官は出張中でそれ以上は言えませんとの濁された回答だった。この大阪が渦中なら想像と察するしかあるまい。


 ならばと牛込女子大学病院総合診療科教授楠瀬一樹と最終状況確認した。大阪市の医科大何れに務める同僚達にも激しい連絡を取ったがこれはどうしても単なるコレラ症状では無いと、細胞採取した電子顕微鏡動画のウイルス変容も送って貰ったが、こちらの病院で細胞採集したと同格で確信せざる得ないに至ったとの言質を貰った。それは推定新型コロノウイルスが更なる変異し大阪地域新型コロノウイルスと称して、直ちに窮地の医療体制を支援しなければならないの決意であった。ただ大阪は大阪真髄の会が大きな蓋をし、頼みである筈の行政を動かし様が無く、最後の手段である災害派遣要請ははぐらかせられ、大阪方の緊急外来連合は窮してると切に訴えられ、そこは一旦通話を終えた。俺は咄嗟に浮かんでいた。ある方に電話をすべきと。


 その電話の相手は、政府の重鎮上原讃徒。大蔵省を最後迄見送った上級官僚で、現在は暫定内閣府主席参事及び類似内閣総理大臣臨時代理即ち政府がきちんと機能していれば総理大臣である。何故上級官僚が総理大臣かは、猜疑心を密かに隠していた今は亡き御子柴大綱総理大臣に起因する。定石であれば竹中頑鉄内閣官房長官が総理大臣であるべきなのだが、総理大臣臨時指名権の順繰りは、時の戸部新十郎外務大臣が指名権1番手も関与第三波で衰弱昏睡後死亡。続いて朝倉慎一財務大臣が指名権2番手も誤嚥で措置が遅れ死亡。そして上原讃徒内閣府主席参事が指名権3番手で健在然りの総理大臣就任。その指名権4番手で内閣官房長官竹中頑鉄が漸くで有り、切れすぎる御仁はどうしても職務の座をとどめ置かれるのが歴史の慣いだろう。

 ただ上原讃徒暫定内閣府主席参事及び類似内閣総理大臣臨時代理を知るのはどうしてもメディア止まりになり、一般市民で知るのは各財界の重役だけになる。これ以上混乱を招いてはいけないの上原翁の厳命なので、ごもっともで今も尚通す事になる。

 いつも戸惑うのは、礼儀を反して直電をして良いのかになるが、そこは生前の御子柴総理大臣から面通しをされている。この御子柴で伺う事に差し障りがあるなら、気兼ねなく上原翁に相談しなさいと。上原翁はその柔らかい刃を隠した笑みで、鉄平君忘れない名前で実に良いねで昵懇に至る。

 躊躇しながらも携帯でアドレスを開き携帯を鳴らした。上原翁との挨拶は手短に、俺は切に大阪真髄の会の暴虐ぶりを淡々と語り、ただ冷静にこれは政治クーデターで有り、それを喧伝する常識たるは何人足りず準ずる事は出来ないと語った。

 上原翁は次第の微笑の声も無くこう言った。

 クーデターの結末は悲劇を十重二十重でこの日本国をしれず蝕んで行きます。鉄平君望まずとも、結果は私に一切お任せで良いね。

 そこはかとなくの軟着陸は現在臨時政府ならば止む得ないのは分かってる。ただ今もなんちゃって大阪臨時行政区に多くの大阪市民が隔離されて死を待っている。たった一つを上原翁に託した。日本国の総力を挙げて適切な医療チームを派遣すれば、一人でも多くの大阪市民を救えますので、歴史の闇に落とし込まないで下さいと。上原翁は絞り出す様に答えてくれた。

 政府主導の至らなさで慰霊塔にはもう送らないのが、私の揺るぎない信条です。実直な鉄平君の杞憂は無いと言っておきましょう。と静かに会話は閉じられた。


 その直後からの顛末は怒涛だった。

 まず暫定内閣府内閣官房長官竹中頑鉄が、軒昂な声明を発表した。

 大阪真髄の会に二心有り。彼ら無能な郎党は変容した新型コロノウイルスを早急に対応せず、無残にもウイルスを拡散させ、生きて然るべしの方々を殺戮に追いやった。そして大阪真髄の会はこれが挽回の機会とばかりに、一切公認していない大阪臨時行政区と円環府とに分離独立させ大阪真髄の会の事実上の関西の一党独裁を敷いた。これは断じ言いますクーデターそのものだ。何よりは生き残る為の生命の選別を行ったは許すまじの詭弁です。大阪真髄の会が我を通したいのは大阪府発展構想で生まれる中間搾取を手にする為です。財務省内タスクでの緊急調査で判明しましたが、大阪真髄の会の三大重要課題を立法化した一つ阪南中期銀行への財務利回り総業務を委託して、更なる大阪府の利便性を図るなどと出まかせにも程が有る。大阪府民の料金収納の手数料で得た金額は大手銀行に迫る営業利益を確保しては著しく公共性を損ねています。しかも、今回の非公認の大阪府分離で、大阪市の無形資産の一切合切を大阪府に判明次第送金しました。その送金の過程で生じた事務手数料は100億円にも及ぶ暴利です。発展的財務利回り総業務委託なら止む得ないとお思いでしょうが、阪南中期銀行の社外取締役には大阪真髄の会代表松永真寿郎と副代表大荒木宗房がご丁寧に揃い、法外な役員報酬を得ています。それは成り行きだろうが一切許しません。混沌の大阪市に必要なのは災厄の為に全てを放出出来る予算資産の全てです。そう大阪真髄の会はどうせ死にゆくならと、血税を一切むしり取ったのです。何度でも言いましょう、政治で人民の生命を奪えます。これは比喩でも何でもなく、今大阪市で起こっている事なのです。ここで暫定内閣府が言い渡す事が出来るのは、卑劣な大阪真髄の会の大阪市長松永真寿郎と大阪府知事荒木宗房の重職の罷免の申し渡しです。序列系統が違うもそんなもの関係有りません。ついでに言いますが、大阪真髄の会の議員全ての身分に辞職要求し即座に各種逮捕請求を行います。見て聞いているか、決して逃げるなよ大阪真髄の会のいかれた連中、がん首洗って大人しくお縄につきやがれ。

 これは決して政治パフォーマンス絶好調ではなく、竹中頑鉄内閣官房長官の導火線そのものだ。ここで全国知事会の歪な一端が突出しようものなら、水面下で進む新政府構想が見事に頓挫する。大阪真髄の会の連中はこの日本国の国体がなんたるかを知った事ではない。いやこれ迄の都市圏二番手のコンプレックスの忸怩さに、これを千載一遇とばかりに敢えて主導権をどうにかしたいのは、余りにも大阪市民を巻き込んで残酷過ぎる。


 いやそれだけではなかった、三権分立で静観しなければならない司法も援護射撃に入った。裁判官・検察官・弁護士からなる全司法連連盟全員による、大阪真髄の会へ最高裁判決の遵守を糾弾した。

 捩じ伏せたつもりの事実の報道の自由は緊急事態でも許すまじ所業。何より表現の自由を規定した憲法二一条の保障を一片でも損なう事は守り抜いてきた正義の女神の主張を覆すものである。大阪真髄の会は今すぐ利権武装解除し、国民に謝罪すべきであると。

 何故にこうも熱くなるのは、やはりあいつの正義感そのままなのかと、馴染みの東京地検特捜部主査久我原凌次の携帯に電話をした。

 俺が動くか、さあな。俺達東京地検特捜部の齧り付きは確かに負けないが、総合力で行ったら大阪地検のがなりには負けるさ。果たして大阪地検もお膝元では見張られて動けないから、擬態携帯をフルに駆使しては根回し俺にも動けだとさ。人使い本当荒いよな。

 久我原主査も食えないで終えたいところだったが、敢えて逮捕は何時になるかを聞いた。

 憲法違反で大阪真髄に会一派逮捕なんて難しい事言うな、そこは任意聴取の大枠だよ。最も今頃はこの弾劾攻勢から証拠を隠滅してる頃だろうから公務執行妨害にやっと乗れるかだ。今分かってる事は、阪南中期銀行本店支店総出で所有バンに全委託書類に取引書類を詰めに詰め込んで、大阪真髄の会が予約を入れた泉南清掃清掃工場にどんどん放り込んでるって事だ。鉄平さん、ここは握っても決して言わない事ですよ。

 大阪真髄の会の単細胞と言えど、そんな浅はか過ぎる証拠の隠滅をするのかと訝しんで終えたが、動いている朋友はいやがった。


 それはクリスマスの今日の朝の事だ。カテルドナル碑文谷協会に向かってる車の中の助手席でその朋友からの携帯が鳴った。とても気さくなサギー事鷺崎一路は大手町新聞政治経済部に務めるライバルも、俺達地方新聞組と敷居は2段高い所にいるが故に知りえない情報を持ち日々交流している。最もサギーは東日本大震災の際にはいち早く現地に乗り込み東北支社時代の伝手を辿っては細やかな記事を深堀りし、権威のエルムスタイン深耕報道賞を受賞する別格様だ。いやここは尊敬を込めているのだが、何畏っちゃってるの鉄平で返されるのでやれか。

 通話はビデオ通話だった。その背後、まさかが過った。

 そう何で知ってるんだ泉南清掃清掃工場だろうって、鉄平も深入りした系か。今すぐ業火を消せって、無理だよこんなに豪快にボワって燃え盛ったら、こんがり灰になるのを待つしか無いだろう。ふざけるな証拠はって、無理だよこんな帳票の山脈を一枚一枚精査しように日本全国の選り抜きの地検エリートを引張て来ても、難癖つけた起訴が通るか通らないかだって、そうだろう。むしろ公文書故意廃棄の方が無難だろ。ふざけるな大阪真髄の会はそれで50万人殺してるって、分かってるって、今時の時代電気通信事業法なんて特別立法通れば通信データが手に入るんだよ。現に内閣官房長官竹中頑鉄さんが根回しして三日前に臨時政府で通っているよ、後は俺達政府公式の大阪真髄の会訴求タスクに任せろって。何だそれって、まあそりゃあそうだよな、いるんだぜ原野の方が途轍もない辣腕がさ。データマイニングならこれって大手町新聞政治経理部から飲み会にも付き合う楠木隈子嬢いるだろうを引っ張てきては、膨大な振替通信データのリレーションをチョチョイと張って、100億円どころかその2倍の200億円の手数料を儲けてるよ阪南中期銀行はさ。二三四五経由でもそれ以上でも発行された起票ナンバーが一緒にコメントに残ってる以上幾らでも紐づけられるさ。流石大手新聞社は最新鋭のAI持ってるなって、まあ褒め言葉で聞いとくよ。鉄平さ、楠木隈子嬢曰くだよ、生真面目なスクリプト組んだアプリケーションとAIに差は全く無いってさ、見えるんだよな卓越者には回答がさ、そこから逆引きでの構築なんだから、本当大阪真髄の会の胸内は凡人ばかりだよな。後さ、吹田市役所の大阪真髄の会の最後の会見場外であいつ見切れたろ、あいつ大友崑崙は絶対書くなよ、相当やばい事になるからな。ああ、この証拠隠滅の燃焼写真の幾つかは東海快速新聞のデスクに送っておくから、また有楽町で労いの会宜しくな。

 分かってる。このコロノ禍ではウルトラワクチン接種したかどうかで馴染みの上級居酒屋馬小屋でさえものが会員バーのそれだ。クーデターの推移は兎も角、東京完全検疫で年内に帰って来ざる得ないだろうから、成果も合わせて労ってやるさ。


 しかし、大友崑崙を書くなか。

 大友崑崙は帝都大学の院生で文学部卒業の文系旗手の今も先鋭。大学院在籍中に文化人類学史「想像の葬列」は初版10万部のヒット作で、ワイドショーに出演しないものの出版のインタビューには対応する中々の堅物だ。「想像の葬列」の記述内容考えたらそれも止む得まい。強い語句だけを取り上げられたら、娯楽が一定水準に並列化すると時代が衰退するの泡沫論がただの賑やかしにされかねないからだ。次回作は期待されるもあれから7年は経っている。どこに就職したかどうかも有り勝ちな時代の寵児とすれば知り得なくて当たり前だろう。

 ただコロノ禍の早々に集まった赤坂の料亭一目の集まりの中に、若き大友崑崙がいたのである。その集まりは直ちにオフレコとして記事はオミットされたが、サギー曰く顔役の面通し会だったらしい。確かにそこから御子柴内閣の大舵は大きな目標へと直向かっていた事から、相当先のフィロソフィーが講じられたに違い無い。

 今回急浮上した大友崑崙が、大阪真髄の会に何らかの引導を渡したのは現在顔役の使番であればこそで、そこから大阪真髄の会全職員が失踪した事を思いうれば、相当な叱責を告げられたに違いなかった。まあ大阪湾に沈むか浮かぶか運次第ではあるが、確かに関わったら俺も親族一族に迷惑を掛けそうだからここ迄にする。 



 そういう思いがただ押し寄せ、やや暗澹たる中でも、外苑でのクリスマスの炊き出しには我を忘れて精を出した。声が何で大きいのよと愛妻果林にビシバシ叩かれたが、言えるかそんな黒い事情。

 それからしばらく間をおいて、14時を過ぎて後に、不意に炊き出しの一角で騒めき始めては、果林が詰め寄ってきた。スマホを翳しこれ見てよは、目を疑う配信リアリティー番組かのギルティーorノットギルティーの審議が容赦無く映えた。

 配信は世界トップの動画サイトYour Muchの配信画面。日本語英語の字幕がいつ訪問しても分かる様に小慣れては満遍なく表示される。場所は真冬のあべのハルカスの最上塔のエッジ・ザ・ハルカス。カメラはスタッフの写り込みが無い様に2カメラで中継される。最高のHD画質と相まってますます玄人芸が光ってしょうがない。

 いやそこに写ってるのがど酷い冗談かと思うのが、処刑学校椅子に縛り付けられたであろうの3人分のブリーフ一丁に醜い姿だ。であろうに関しては、右端の席がどういう馬鹿力を発揮したか、縛り付けられたロープ背もたれを破砕しては、一足先に縛ってる命綱で逆さ吊りに壁面でしな垂れてる。

 字幕の面子ではそう来るかの3人、大阪真髄の会の代表及び仮)大阪臨時行政区区長松永真寿郎、大阪真髄の会の副代表及び仮)円環府知事荒木宗房、何故かの情報報道番組極上ハウスアンカーマン松尾定飯、そのまま煽りに煽った極悪人が良くも揃ってるなの感想しかないので感心したが、何故か果林からは不謹慎の忠告は無かった。正義の陪審員とやらがフォルマントボイスで次々大阪真髄の会の行状を上げては断罪してるらしい。


 早くも一人はギルティーとは早いと思ったが、その自ら行ったにも関わらず悪行を聞くに耐えれず有り余る身体能力で松永真寿郎が暴れては処刑装置をぶっ壊し、自ら処刑台を潜ったらしい。勢い余って壁面に大衝突も血痕が無い事から冷水をぶっかけられて何度か起きては失神し、その高さからブリーフが色濃くなっている。プレイバックを挟みながら正義の陪審員は偉く憤慨する。

 松永真寿郎は敢然と大阪市民を見殺しにシテ謝罪も無く死ヌ事ハ許サレル筈モ無イノニ、アナタは悠長過ぎル。

 散々起きろと叫ぶもその気配は微塵も無い。それはそうだ午後陽が傾き始めようかの時分に、遥かに高い塔の上で逆さ吊りに冷水を浴びては体感温度は氷点下を切っての今すぐご愁傷になってもおかしく無い。

 松永真寿郎ノ身分ダト、アナタは立派な墓ニ入レルカラ恵マレテルヨナ。

 実に的を得ている。俺は敬虔深い筈だが、コロノ禍で多くの腐乱死体に巡りあってるから、そうと口に出てしまう。とは言え手向けの十字を切ろうにも、未だ生きてるのであればまだ憎さ一万倍は受けろの地獄門の指図でもあろう。まあ暫し待つさ。


 そして大阪真髄の会の応援部隊代表の松尾定飯のまたもの順番が巡るが、正義の陪審員の新しい審議が始まる。

 松尾定飯ノ愛人デアル地元タレント湊彩花ハ親族ノイナイ田舎帰ッタヨ。彼女ハ児童養護施設出身デ流転の果てにミナミのキャバクラで働き、見事オマエのスカウト一本釣りで芸能人ニナッタノハ俺モ喜んだヨ。タダダ見返りとして愛人は男女ノ恋愛の幾許もヤヤ目をツブロウ。だがオマエは知っている、彩花は幼少時の虐待からどうしても大人の言いなりにナリヤスイ。オマエは卑怯者だ。松尾定飯は見境無く逢瀬シ、終いニハ妊娠してモ赤子を堕胎しろとオマエは激昂シタ。ああ表向きはシタヨ。酷過ぎる奴だよオマエは。コレデ堕胎込みの愛人ポイの4人目なら小慣れたものダロウガ、生きてるよ彩花の赤子ハ、唯一の家族を殺せる筈のナイ聖母は田舎でのあばら家でも日々生まれてくる喜びの中デ、初めて幸福を噛み締めてイル。ダガ俺は許せない、堕ろせの言葉その罪は一生購えナイ。ダカラ死んでくれ。

 極悪人松尾定飯のそれは言い掛かりだ誤解だの泣きわめきも、死刑は執行された。処刑学校椅子の精巧な装置が前に大きく傾き、背もたれたに縛られたロープも解き放たれ、松尾定飯が大阪市の空に散った、筈だった。だが両足の縛り吊り下げられたロープは健在で壁面に鈍い音を立て二度バウンドしては沈黙した。

 果林がうち震え嗚咽しながら、自らのスマホを地面に叩きつける所を、俺は小慣れたもので軽く制した。

 果林は言葉を繰り出す。酷すぎる、こんな人間を冷ややかだけど面白いと私が恥ずかしい。ここ迄人間の命、いえ赤ちゃんの尊い命を奪うなんて、悪魔以下の所業よ。俺は諭す。分かってるなら最後迄見届けよう、辛いなら俺が後でどう始末されたか教えると合いの手を出すも、果林は忽ち我に返った。私はどうしても無邪気な彩花さん応援するから最後迄見届けると。お前も聖母の口かよ、と同時に何故か土手っ腹に右ストレートが抜群に決まる。不意過ぎて応えたが、そのお怒りのぶつけ様は俺しかあるまいで、座が納得しながら忽ち爆笑する。さすが阪神のスタッフは画面の向こう先も小笑いで仕上げるかだ。


 そして最後の悪感荒木宗房が、果敢にも対峙すべく毅然とした雰囲気で目を瞑っては身じろぎ一つもしない。ただこの寒空でそんな武士道を貫ける輩はいない。別のカメラが足元を抜くと処刑学校椅子毎ガクガク震えていた。二流政治家時に怒髪天会見していたあの荒木宗房の落差が有り過ぎて、外苑の炊き出し場でスマホを見つめている方々からは同じタイミングで失笑が漏れる。そして正義の陪審員から的確な審問の集中砲火が始まった。

 大阪臨時行政区ヲ呆気なくパージして大阪真髄の会ハ何を企テテイル。

 ふん、近代より大阪は世界の玄関口だ、東京に死の都と化した以上、日本国の体面を保つ為に新たな理想郷を拝した迄だ。

 理想郷ニ犠牲者ハ必要ナノカ、50万人殺して更に見殺しをスルトハ共産国の粛清と変わらナイ、ソノ築き上げた理想郷も何れは軍事政権に奪取サレル、実に愚カダ。

 いや、愚かでは無い、市民革命は崇高なもので大軍さえ、人の絆で容易く退けられる。我々円環府民はまさに歴史の扉を大きく開こうとしているのに、この尖った始末は何だ。貴様らが街中でリンチに合っても、この配信の向こうの英邁者は決して許さないぞ。いいか、我々大阪真髄の会の信条は日本国民の大いなる繁栄だ。この不肖荒木宗房に任せて貰えれば日本経済を見事立て直してみせる、いやそれ以上の発展を遂げてみせる。いいから解放しなさい、そうすれば情状酌量はしてみせよう、それが政治家の度量と言うものだ。

 ソレハ違ウ、貴様は亜種の新型コロノウイルスを看過シ世界に蔓延させル間際と更にドン底に落とそうとシタ大悪人ダ。断罪は避けられナイ。ならば聞こう、この世界中の2/3が推定感染しているこれ迄の新型コロノウイルスのそもそもの原因とは何ダ、誰が勇気を持って訴追シタ。

 ほら何ら分かっちゃいないんだよ、生きていく以上忖度と選別は必要だ。残酷と言われるかも知れないが日本国が全滅しては復興も何も無い。いいか、未知の事態に対処するのは大封鎖しかない。これは古今の歴史学者も大きく頷く事だろう、それを俺達を吊るし上げて良かった良かったで済ませようなんて、お前達は浅はかなんだよ。

 ソレは完全否定スル。実質一党独裁の実権を握リ、圧政下の正義では市民は誰も振り向かナイ。市民は極めて理性的ダ。貴様らは完全敗北してのココにイル。最後に理性的ナ言い分を聞くだけ聞コウ。

 おいふざけるな、散々一方的に言い包めやがって、俺が話しているのは国体だよ、それが有って市民は初めて幸福になる、このまま日本が亡国になって良いのか、何度も言うが許されん。この延々続くコロノ禍を回避し復興出来るのは大阪真髄の会だけだ、そして大いに復興の旗手になって見せる。いいか、いいから、今すぐ俺達に陣頭指揮を取らせろ。

 ソレは御免蒙る。モウ飽きてキタ、セメテ心根を最後に聞こうカ。

 おお言ってやるよ、これこそが国体だの真理だ、廃都大阪臨時行政区300万人は止む得なくも尊い犠牲だ、この完全封鎖で日本いや世界が救われたのに、ただ元の大阪市大阪府体制に戻そうとする連中の頭の全部がネジがぶっ壊れてやがる。ここ、ここでの濡れ衣を着せられた不始末の最後が処刑とは何だ、これは新しき時代の為に試練なのか。それならば誓って言える、私は何度でも這い上がってこの大阪全般を司っては、その度に多くの市民を導いてみせる、これ尊き宣言としよう。よく聞け、関西は世界に深く直結する、故にだ、今回のその生命の選別がより賞賛される。いいか、お前らのカメラの仕組みなんか知ったこっちゃないが、もしこれが世界に届いているならば、私は勇者を求める、今すぐどうか助けてくれ。

 その直後、一言もなく例の処刑学校椅子の精巧な装置が前につんのめっては、壁面に肥えた肉体の弾んだ音が四度聞こえた。短い叫び声は聞こえたが一瞬で途絶えた。


 処刑から10分。スマホ越しに、俯瞰でギルティーの三悪人に吊るされている。画はエッジ・ザ・ハルカスから眺める、吊るされた三悪人のハンギングの俯瞰で任侠映画のエンドマークかの【完】で配信は終わった。

 終わって良いのかよ、大阪真髄の会の総議員人数212名ほぼは遁走したままだろう。とは言え政治クーデーター連中に延々私刑執行するのも骨折りな事だと、俺でさえ傾くのだから、この秀逸な配信中継の秀逸さは何かしらの賞を渡さねばならないのかも過ぎる。いやそれをやったら正義の陪審員が逮捕されるか。

 そもそもで言えば正義の陪審員は誰だ。松永真寿郎・荒木宗房・松尾定飯の何れかに怨恨の有る犯人が妥当であろうがそれもミスリードか。三人の共通項から導かれる熟知する人物像はどうしても数人になるだろう。いや、確かに主文の言葉尻を変えているのが気になるが、複数犯と思わせるのも激情しない知能犯と窺わせたいのか。

 今は私刑の余韻に浸っているが、何れは面白半分に正義の陪審員探しが始まる。俺はそれは如何かと思う。その経緯は生業がどんな人物であろうと、今様に整然と語って然るべしだ。何故このあべのハルカス私刑に至ったかを深く知り、連なって行くであろうの負の連鎖を止めるべきだとの思いがどうしても帰結する。だがバイオレンスも如何は、当分順繰りが続きそうだ。



 そんな逡巡を暗澹とする事から、果林から暫く休憩してなさいで放って置かれる。そんな矢先の着信はあいつ榊志摩、国連本部極東衛生司政官はおっとり刀かでうんざりしては電話に出る。その一声。

 不謹慎だけど爆笑よね。とっとと電話寄越せは酷いわね、釜山からの国際通話は経費でも高いのよ。お隣韓国で何してるって、それは検疫よ。今回の亜種の新コロノウイルスは大阪市中央卸売市場本場発祥みたいになってるけど、それは釜山での加工工場の鮭加工ラインに発してるのよ。このコロノ禍だから消毒は万全だろうも、そこは甘いわよ。経済はこの世界が滅んでも回さざる得ないもの、人手は常に不足し納期も圧迫よ。世界滅亡はいざ今回の大阪地域新型コロノウイルスが発生しないと想像出来ないものよね。そうとは言え、危ういと思ったら内部告発のしようはあるでしょうけど、それを一々取り上げたら流通が停滞して、今度は飢饉が始まるのでしょうね。お前の感傷は知ったこっちゃないって、本当酷いわね。今場所と工場名は言えないけど全出荷のトレーサビリティを追って世界中に完全防備でそれはもう土中深く埋没させての指示は出してるのよ、まあここ迄ノーガードの130トン処分なんて、これまた骨が折れる話よね。検疫は分かったが治療法はあるのかって、そこは大切よね。敢えて言えば無いわ。ウルトラワクチンを接種して、無事に体を休めていれば時期に回復するもの。楠瀬先生から聞いてるがそれは本当に有効かって、有効よ。震源地釜山はほぼほぼ自宅待機で沈静化よ。大阪は開けっ広げでほんまで通っちゃうから、留めない罹患者に及ぶのよ。WHOの警告よりその極上ハウスを信じてしまうから、メディアのそれって本当怖いわよね。でも、このあべのハルカス私刑で一気にどん引きする筈だから、そうね結果OKで常態化する筈よ。待てって、ああそうよね、そっちに引っかかちゃうものかしら、断じて言いますけど私及び国連は一切絡んでいません。でもダディの所は本当優秀よね、配信一つで身を正させるなんて惚れ惚れしちゃうわ。何で首謀犯知ってるだろうも、もう声が大きいわよ。ダディの紹介は追い追いね、所謂そちらの業界の顔役さんよ。ああ勿論鉄平さんは好印象だけど、今は様子を見られてるから頑張ってね。せめて関わったであろう若い衆紹介しろって、そう来るかな、まあここもダディの思惑通りね。紹介出来るのはミナミで5つの大店を経営している大路美優よ。そうなのよ、長身ハーフの美男子で自伝1冊語録集1冊出版している筈だから知ってるわよね。境遇は図らずも児童施設出身で苦労人の一人、それであればこそ知り合いの湊彩花をポイ捨てした松尾定飯の実質引退引導も分かるでしょう。一度お話ししたいでしょうけど、ご覧の通り大阪府は暫く大変だから、今は名前を控えるだけにしてね。見過ごせも因果応報はあるぞなんて、鉄平さんもなんて敬虔深いものよね。誰かが締め上げないと刷新出来るの行政に引き継げ無いでしょう。あべのハルカス私刑は立派な刑事事件だぞも、そうかしら。鉄平さんも昭和平成令和を渡って来たなら分かるでしょう、世の中にはNoと言えない事がほぼよ。この一見あべのハルカス私刑が、大阪真髄の会による体を張った禊と三極悪人が言い切れば何をどう送検出来るって言うの、三極悪人も身に沁みてる筈よこれ以上はコンクリートの入ったドラム缶に頭迄浸かって深い暗闇を見る筈だって。ねえ、生きるって一定の責任を果たす事じゃないかしら。もっともだって、偉く神妙ね、その様子だとこのクーデターの構成が出来た口ね、それならば良いわ。私は自由に越境出張行使出来るけど、釜山を畳んで年内には東京に戻らないといけないのがお約束よね。まあこの様な亜種の新型コロノウイルスが発症する以上末長くお付き合いしたいものね、鉄平さん。

 ふざけるな、結局絡んでるだろう榊志摩よ。まあ、推敲集約記事の草稿は出来た。あとは皆の意見を聞きながら説得力ある文章にする。何よりおもろい民間療法は払拭してみせる。それは只管ステイにただ辛抱しかないが、俺の誠実さが届いて欲しい、絶対に。それで一人でも救えるならば筆圧もただ深くなるばかりだろう。



 そして進行上、今日この後々の話もここに書いておく。

 17時に、有志による日本国知事会代表伊達一巡の厳命会見から発し、飛沫関連群都市大阪市の減衰期半年を見込んで、大阪市民を残らず脱出させつつ完全封鎖を指標に置いた。それは発生源である韓国釜山市の部分的閉鎖と徹底的に感染食物は土中深度廃棄に追随するものであり、世界も概ね倣う向きなので大阪市民は冷静に対処して欲しいの願い。また食糧供給危機の危惧の向きもあるが、それも杞憂に過ぎないの日本国の備蓄量を資料提示しては論破した。何より大切なのは病床名大阪地域新型コロノウイルス感染症は、ウルトラワクチン接種が絶対条件で有り、根気強い食液投与を行えば自然治癒の緩和へと向かうと。世界中の皆が一先ず胸をなで下ろした。 

 そして何よりは、22時の嘉門ファミリーデバイス会長嘉門鯛之仁翁の財界引退会見だった。

 大阪真髄の会は幅広い会員が支え運営する純然たる会では無い。ミレニアムを期に世界に大きく躍動した、未だ世界屈指の高速通信デバイスメーカーの嘉門ファミリーデバイスが、後ろ盾になっては実質二人三脚の足並みを揃えている。

 その由縁は世界に通用する人材を多く輩出すべきとの嘉門ファミリーデバイスの当時社長の嘉門鯛之仁が金亀庵塾を創設し、自ら塾生を可能な限り多く選考しての、今日の畿内の数々の経営者と議員を約束通り輩出して時代の寵児となった。

 そう確かに、コピーアイテム生産国に切実に背中を押されても嘉門ファミリーデバイスは堅牢な筐体と無駄の無いOSで、未だ追随許していない。ただそれに奢ってしまう事はままある。本業と理念とは一体か分離かの裁量は折々で評価が分かれる。言える事は今回の大阪真髄の会のクーデターが悪質と知れ渡ると、大元の嘉門ファミリーデバイスは東証一部で関連暴落し続け、監理銘柄指定となり上場廃止は確実視され、何れの拡張路線も潜め失墜かのもどかしい溜め息と共に、日本経済はあわや震撼もだった。だが嘉門鯛之仁翁の切れ味は寄る年波に負けずに一手を打って来た。

 それは純粋無垢な教え子たる塾生達の不始末の謝罪会見だった。嘉門鯛之仁翁はただ仁と笑顔の御仁で、掛かる時代の荒波でもリストラクチャーをせず踏ん張って業績を上げて来た。そこの日々は日本国民がしっかり刻み付けている。でもそれが何故大阪真髄の会は大暴走したかだ。嘉門鯛之仁翁はかくも語った。

 生き方とお金は切り離しなさいと言って参りました、ただそこは若くして地方自治体の権力の手に入れると、門前の小僧のひたむきさでは解決出来ぬ事がままあります。ここは私の失念です、ただ日本国の先々を憂いればそう言う局面もあるだろうと目を瞑り、次は怠りなくしなさいでした。ただ人間の性質とは一度成功すると次も簡素化して繰り返してしまう事です。改めてです。一体幾重も生命が絶たれ、幾らの血税が無駄に舞い散ったか、ただ深く謝罪します。そして精鋭のタスクチームの精査にこの身を一切全て委ね、私も座の一人として神妙に裁きの場でありのままにお話すべく、まずは嘉門ファミリーデバイスの全ての職を自ら解き、大人しく座に着かせて貰います。

 果たして会見後。嘉門鯛之仁翁は、深夜その足で大阪地検に自ら出向きとうに帰る気配は到底無かった。その嘉門鯛之仁翁のサムライ振りに揺り動かされたのが海外市場だ。嘉門ファミリーデバイスは既に世界の高速通信デバイスメーカーで、肝心な基盤を損なってはいけないと数々の支援応援が相次いだ。

 と書けばある局面の美談であろうが、世界は当分コロノ禍の中にある。リモートワークの必須アイテムである高速通信デバイスが嘉門ファミリーデバイスの解散で供給不足になっては、本当に世界の死を迎える事になる。勿論この事情は伺って書こうものなら、歴史的な暴落を引き寄せるのでどこのメディアも冷静に控える事だろう。嘉門鯛之仁翁、野に下ってもその先見性は目に余るものがある。この潔さっぷりで畿内は決して沈まない。そしてまた、この先嘉門鯛之仁翁の薫陶を持って新たな団体が台頭してくるだろう。それにまた誰が立ち向かえるか、俺達一正義感が知る由もなかろうに。



 そして本来の美しい時間軸に戻る。

 ほぼ締め切りの無い推敲集約記事の逡巡も捲り上げながらの、その時、カテルドナル碑文谷協会の鐘が大きく鳴った。予定表を見る限り17時の夕べの会を告げている。この気持ちのまま名客演を直視できるものか。その時に怒りも露わに飛び込んで来たのは娘双葉だ。

 お父さん、何格好付けてるの。ああもう、家族揃っての大ファンでしょう、シンガソングライター霧島喬音さんの演目始まっちゃうよ。1stアルバム2ndアルバムがどれだけダブルミリオンの方が、この儲け時に、いやそれは礼が無いわね。そう、この聖夜にカテルドナル碑文谷協会でオリジナルライブしてくれるのよ。良いこんな間近で見れる機会無いのよ、もう何を考えてるのよ。えっつ、それ龍一の伝手だろうって。何を言っちゃってるかな、如何に私が龍一さんを切に切に接待して、霧島喬音さんとは、上質なソロキーボードプレイとは、極上のR&Bの澄やかさとは、大ヒットシングルSweet Love Worldの世界観とはを、見て聞かせて説得させたじゃない。とは言え、確かに龍一さんのご縁あっての漸く腰を上げてくれての、この夕べの会の祈念ライブなんだね。それをお父さんは、皆の思いを吹っ飛ばす気なの、ねえ、ねえってば。

 そのままどえらい勢いで双葉の右手に引かれながら聖堂に引かれて行く。いや霧島喬音は家族の付き合いで聞いてる訳でもなく、通勤中の携帯音楽プレーヤーで激しくリピートしている。入り口はジャズのスタンダードソングBody and Soulをカバーするとはか。Body and Soulは先輩達との付き合いから、新橋のジャッズバーのリクエストと言えば、この曲が常だった。そんな高尚な趣味も歴代の三人の彼女に聞けば分かる、とは言える雰囲気は我が家には金輪際も無い。果林も怪訝そうな顔しては、ジャズの神髄を知るなんてどんなロマンチストかしらで、いつもヒップアタックされる。毎度何がご機嫌なのやら。


 そんな黒川家の熱狂とは程遠く、東海快速新聞の協力社員報道カメラマン春山龍一はいつも素っ気無いものだった。

 或る日、双葉達の猛烈接待でも何で渋っていたのかと詰め寄るのだが、翳されたのはそう【Mother Sweet Sleep Night Label霧島喬音】のジャスミン柄の年季の入った名刺だった。なんだ結局ポートフォリオ撮った事あるのか、やはり一流ミュージシャンとは気難しいものかと嘆息するも。

 言っておきますけど、鉄平さんの想像とは違いますからね。ソロシンガー霧島喬音は、俺の実の姉皐月の一人娘で姪ですよ。と言えばお分かりですよね。霧島高尚 aka koshoが父親ですよ。それはテクノロックバンドslow now and zenのキーボーディストと言えば色濃く血も受け継ぐでしょうけど、アルバム10枚作成して、シングル代表作Romanesuque Nightはご存知ですよね。音楽全般恙無く知ってる、いや実に話が早いですね。良いですよねslow now and zen。プログレッシブなミュージックアプローチで海外の引きが強くて、霧島家族は東京ニューヨークで行き違いが多くて、ばったり会うと引きが強いのなんの。知ってます鉄平さん。喬音のメインキーボードKORG WAVESTATIONは高尚さんのお下がりなんですよ、とは言え全てのパラメーターをレコーディングとツアーで変えまくってますから、それを喬音に使えと言ったら、絶妙なソロプレイを奏で、キーボードのプログラムにも強くなりますよね。いや実に感服です。

 そうじゃないだろう。龍一は何か隠し立てが有ると、勝手にお話が明後日に行きたがる。そのお話を敢えて振り出しに戻す。何故、龍一は親戚なのにソロシンガー霧島喬音に怪訝な顔をする。龍一は腕を組んで東海快速新聞の休憩室のエスプレッソを飲み干し一息付いては、捲し立てやがった。

 それは双葉ちゃん達の、霧島喬音カテルドナル碑文谷教会招聘のプレゼンテーションは1時間懇切丁寧に聞きましたよ。何故に姪の喬音を指名するかは、俺の事情を知らずとも偶然にも程が有って、まあこう言うお導きは大切にすべきかなにしつつ。これは一時の盛り上がりかと見据えてはいましたが、一向に接待攻勢止まずですからね。取り敢えずMother Sweet Sleep Night Labelの接遇室でどんと接見させて怯るんだところで、そう霧島喬音は実にお忙しい方なんだよと諭して即刻解散の筈がでした。問題は実に食えないのが喬音でして、あいつは。

 龍一は、ここ迄話して何故途切れさせる。結果オファー成立なんだろうで、まじまじと見つめては切り出した。まあ言わざる得ないですよねの不器用から、無造作にポートフォリオを一枚差し出してはこれですは、迂闊にもその御姿ご本人には聴かせられない、俺の思いの丈。そのポートフォリオの御姿は双葉のダンス部の引率の深緑寧子先生だ。俺は懐かしいにも程があるものが込み上げて来た。この寧子先生の眼差しは一発で恋に落ちたとの満ち満ちたものだった。そういう事か、そう言う雰囲気になったかだ。龍一と寧子先生が良い雰囲気は、万事未満でも何故か仁義を切られて知ってはいた。

 だがな龍一、これは駄目だ。この寧子先生のポートフォリオはお前が後生大事にして棺桶に入れて、天国迄持っていかないと行けない写真だ。お前はこの慈愛に満ちた佇まいの中で生きなくてはいけない。分かるか、外務省取り上げられたままのパスポートは何れ戻って来て、また戦場カメラマンに戻ったとしてだ、成り行き上戦場の流れ弾に当たって死ぬ事は一切許されん。いるんだよ、黒川家は勿論、この寧子先生も然りだ、それでだ。

 そのお節介は何れだと思ってましたよ。双葉ちゃん達には通用する俺のポーカーフェイスも大人には分かるものです。それを喬音が看破するなんて、あいつも23才にして大人って事ですかね。寧子先生の御指は実にしなやかですね、ピアノを弾きすぎず弾かれすぎずで、弾かれるピアノの音色が是非聞きたいものですなんて。夕べの会のピアノ伴奏を寧子先生が担当してくれて、龍一さんもスチールのカメラマンならば、喜んでお受けしますよ。とです。そこで透かさず耳で囁かれましたよ。もっとも龍一おじさんと寧子先生のウェディングが必須条件ですけどね。ともです。まあその後儀礼的にレコーディングスタジオに入って、喬音が課題曲はThe BeatlesのLet It Beをジャズカウントで始めては、無理な乗り過ぎるだろうで、ああ終わったなの、微妙過ぎる安堵でしたけど。そこは何故か寧子先生のほんわかさで、スタジオ内のトリオは引き出し曝け出してのバトルセッションになって、どうしてもの合格ですか。不思議なやれやれですよ。ああここは素直に感激ですね、分かってますよ。何より見学の双葉ちゃん達がいつ泣き止む程の感激をしちゃって、いやスタジオも全てで我先のオベーションですよ。そこからグンと盛り上がって近々ですかね。


 その近々が双葉に手を引かれて、聖堂の特等席に滑り込んだ俺達だ。盛り上がりも何もあったものじゃ無い。このカテルドナル碑文谷教会の夕べの会は、どうしても盛り上がって世界的音楽番組Massive TVの収録及び一部同時配信で細やかなスタッフが配置されている。このライブの変則トリオ編成は、言わずもがなのボーカル&キーボード:霧島喬音、霧島喬音のワールドツアー帯同のドラム:ジュリアン・バックビート、今やフェイバリットのピアノ:深緑寧子。そして肝心要のスチールカメラマンはウェディングを了承したのか春山龍一である。

 いやもう、もはや夕べの会は大成功しかないのだが、俺は嬉しい筈の龍一の年貢の納め時に気もそぞろだ。いやそれだけでは無い、双葉達の熱意が実って泣くであろうし、音楽に感極まってで泣くであろうし、この同時配信の向こうの皆の憩いの幸せを願っておれないだろうし、この黒川家の激動の年でも揃っていられる事に主に感謝ての、そして龍一がついに幸福への道を歩むのかと言うと、すまん、涙がただ溢れ落ちる。

 司会の若きカテルドナル碑文谷教会の宮園恵子司祭が普段通りに心配りしては、俺にまだ早いですよの微笑みの一瞥を送られる。それでも果林と双葉から同時に渡されたハンカチ2枚でも物足りるかである。何故に俺がこの時点で咽ぶかは、後日吐露してかなりど酷い叱責を受ける事になるのだが。まあなのか。大凡想像の限りなのだが、龍一さん良かったねで何とか切り抜ける。

 司会宮園恵子司祭のトリオ呼び込みから、熱い拍手が送られる。霧島喬音の熱い前説から、今年散々振り回され虐げられる新型コロノウイルスの禍根に巻き込まれた方々に痛切な哀悼が送られると共に、教会内はクロスを手にし主に祈った。いや同時配信されている事から世界中で凄まじい程の祈りが届いている事だろう。これなら主の待つ試練の門は大きく開かれるに違いない。


 間も無くライブはノークリックで、トリオの霧島喬音/ジュリアン・バックビート・フィーリング/深緑寧子であらゆる演算が飛び交い極上のグルーヴを奏でて行く。

 セットリストはThe Sound of Music - My Favorite Things/U2 - I still haven't found what I'm looking for/Stephen Bishop - Little Italy/The Toys - A Lover's Concerto /Jazz Standard - Body and Soulの5曲とカバーオンリーで進むもこれは一セレブレーションでも有るが故に馴染み易く演目は終える筈だった。


 それは思いの外に印象が強すぎて、教会内はアンコールの手拍子すら起きなかったので、つい心配になってトリオが再び顔を出した所で、溢れる感情が迸りここでアンコールの言葉が現れる。

 隣の双葉がウルトラワクチンの副作用で左腕の利きが悪くて二つの手を合わせる事は出来ないが、右手でしゃかりきに腿を連打する姿は見ては皆生きてるのかとの感慨がふつと湧いた。そんな俺を果林はステージを見なさいと頭を力強く向かせる。


 霧島喬音が綻びながらMCが進み語る。

 次の曲は、浮つくパパにママが力強く口説き落とした歌です。運命をどうしても感じて下さい。Mariah Carey - All I Want For Christmas Is You。

 寧子先生のピアノのイントロから、一際強いコードプレイに進み、応じる様にトリオが、あなたの愛こそが至上とばかりに響く。更に応じるのは観客の4拍子クラップで、このトリオのグルーヴに酔いしれては転調もテンポ変更も自由自在に着いて行く。最高のライブとは、ステージと観客が一体になってこそと、今ここに思う。


 そして再び霧島喬音のMCに戻ると、トリオの談笑に花が咲く。霧島喬音がクリスマスなのに恋人はどうなのと話を振りながらも。

 ジュリアンは鴨川リゾートで妻と娘で仲良く。

 喬音自身は照れながら恋人募集中も、でもね、パパとママの捲し立てに負けない方で爆笑を勝ち取る。

 そして次の番に震撼すべきなのは話題はどうしても龍一と俺なのかと図らずも硬直した、霧島喬音は確かに個性が上質過ぎる。最後に振られた寧子先生は照れながら語る。

 私の好きな方は、仕事に夢中過ぎますから、時間を掛けるといつか振り向いて貰えるとかしらね。あるがままの方が可愛いので、それも良いわよね。

 寧子先生のついの照れ隠しから、ピアノのjazzy音階のロールが大きなうねりを運び、高いキーで余韻を待つと、霧島喬音がトリオに対してアイコンタクトのままにジャズカウントで指を鳴らす。

 ここで龍一から聞いていたThe Beatles - Let It Beを持ってくるとはと。寧子先生の本編イントロのピアノは大いにスウィングし、切なさを噛みしめるThe Beatlesとはうって変わって、この先もきっと何も問題無いの雰囲気を作り出す。俺にはこのバイブスが分かる、寧子先生はきっと何時迄も龍一の誓いの言葉を朗らかに待つ事だろう。俺はただ後押しをしたく、新橋ジャズバー界隈で培ったジャズの乗りのクラップを送り続ける。

 それは短くも長くのアンコール曲で有り、エンディングで霧島喬音はブレスが途切れると厳かにクロスを持っては祈りに入った。万雷の拍手より一人でも多くの祈りを待つのは、霧島喬音とはこの先も大きな器に違いない。ダブルミリオンシンガーの肩書きはここで終わり、若くも果てしなき求道者が羽ばたいて行く。

 霧島喬音が去来して止まない祈りから、ゆっくり目を開けると、そこで和やかな観客達の拍手が溢れてきた。誰ももう一曲を掲げる声は無い。トリオはただカーテンコールに入り、大きく挨拶を交わして引き上げようかのその時、霧島喬音の天衣無縫ぶりが露見する。


 霧島喬音が朗らかに大仰に手招きしながら。

 ねえ、龍一おじさん一枚撮ろうよ。

 この複雑怪奇な呼び掛けから、聖壇下でスチールを撮る春山龍一の左手を霧島喬音が力強く引き上げると。そのまま春山龍一のデジタル一眼レフをまあまあで奪い取っては、流石は龍一の姪とあって勝手知ったるが如くデジタル一眼レフの構えが抜群の様を見せる。空いた手で促し叱咤するのは。

 寧子先生、龍一おじさん、もっと寄って、良いから寄って、お願いだから寄って。

 ここであんぐりするのは、隣の果林に双葉と双葉の友人達。観客席はそうか寧子先生のお相手はこの方かで、微笑ましい微笑が溢れるのと。俺の近隣はそれとはただ一線を画する。

 俺がそのまま嬉し泣きしてる事から、果林双葉同時に、いつから知ってるの声を浴びせてられての続け様、えらい肘打ちが同時に入った。何れもヒットで、俺は言わなくちゃいけない言葉を翻筋斗打って出なかった。ここ迄素敵なカップル見た事あるか、いや見た事ないだろうで大きな拍手を送りたかったが、果林と双葉が翻して、もう家族共々嬉し泣きに大きな拍手を送っては、聖堂内も幸福に包まれている。

 主が定めるところ、龍一と寧子先生の二人が出会う事は生まれる前から決まっていた筈だ。しかし、このコロノ禍だからこそ、互い真心さらけ出し向き合わなければ、思いは交差し離れたかもしれない。俺達は大きく学ぶ、その固く信じる手は二度と離してはならないと。それが今日このクリスマスの誓いなのだから。


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