序章 4

 二月十七日午前一時四十四分突然の心臓発作により逝去した花咲百合子三十一歳に救い主百合神様が用意してくださった転生先はふとした弾みに百合がごろごろ立ち現れる女子校という百合の園だった。私はフィクションでしか得られなかった様々の百合を間近に、現実として賞味する権利を与えられた。花の高校一年生としてむせ返る百合の香気にあと三年はこの身を浸すことになる。発狂しそうな世界観だった。

 ぼろぼろ涙する私に戸惑いながらも千恵は手を引いて教室へ誘導してくれた。四散したかに見えたクラスメイトたちも私を囲んで心配してくれた。ありがとう、と私は言った。百合神様と百合を信じて生きてきた自分への感謝だった。

 よく分からないうちに教室に入り、よく分からないうちにクラスメイトの自己紹介を聞いた。自分の番で、「花咲百合子です。高校からですがよろしくお願いします」と、知っていることだけ口にした。あとの設定は大至急練り上げなければならなかったが頭はどうにも回らなかった。今はただ百合の地平に立った感慨に陶然とするばかりだった。なんて素晴らしい第二の人生。

 学級委員長がまるでそれ以外の選択肢がないかのように早々とさより女史に決まり、彼女のてきぱきとした手腕で穴埋め問題の穴が次々埋まるように誰某が何々委員と担当する係が淀みなく決定していく。自分に割り振られたのが美化委員であることをぼんやりと認識して、あとはほぼ馬耳東風、大切な情報を風呂桶で流す湯水のごとく聞き流した。床に這いつくばってでも駆けて行く情報を囲い回収しなければならないのに私はそれを怠った。無理もなかった。頭は百合の甘い香りに満ちていたのだから。

 放課後になってやっと頭にかかった靄が晴れ始めた。「花咲さん、雛窪さん、ちょっと」と担任の教師が私と千恵を呼び寄せた。先生は千恵に体を向けた。

「雛窪さん。少し頼みたいことがあるのだけれど、いいかしら」

「はい、何でしょう」

「花咲さんが」一瞬視線が私に向き、すぐに千恵に戻る。「今日から白花寮に入ることになっているの。同じ白花寮に暮らす者として、案内をお願いできるかしら」

 千恵の目が喜びに開く。「え? じゃあ私の相部屋は百合子さんなの? マジかぁ!」

 先生が軽く咳払いすると千恵が照れたように笑う。ここが百合作品で見た典型的お嬢様学校であるという前提に立つと、おそらくマジかなんて卑俗な言葉遣いをたしなめられたのだろう。千恵が初めて私の名を口にした時点で下の名前で呼んでいるのは、心の壁が物凄く低い子なのだろうかあるいは単に卑俗の表れなのだろうか。ツインテールは整っているし、制服は清潔だ。野卑とは違う。

「昨日寮母さんに部屋の掃除させられて、新しい子が入るって言うから。あなたなら大大大歓迎よ!」

 犬が客人に懐くような距離の詰め方に、大人になって失ってしまった何かを見るようで少し眩しい。高校受験組、という要素以外に彼女の気を引く何かがあるのだろうか。

「花咲さん」千恵の前のめりの好意に安心したのだろう、先生の声から力みが抜ける。「寮での生活に関しては、私より雛窪さんのほうが詳しいでしょうから、彼女に訊くといいわ。寮母さんもきっと花咲さんの助けになってくれるでしょう。学校でのことは私が助力できるわ。何か、訊いておきたいこと、ありますか?」

 転生したての私にこの学校に関する知識はない、世界に対する見識も推定でしかない、訊きたいことは山ほどある、私は虱潰しのような綿密さで先生に質問して情報を引き出し尽くしたい。だが女子高生が世界の地理について粘着して問うのは不自然だし案内役の千恵が待っていることもある、質問は簡略かつ自然に行われなければならない。

 何が最もクリティカルな情報なのか。

「先生」

「はい」

「百合って知ってます?」

 先生はそのままの顔つきで、「百合? あの、ヤマユリとかカノコユリとかの話かしら?」と言う。少し自信が覗いて「私、花は好きよ、趣味で写真を撮ったりするのよ」と口角を上げ、それから、「それで、百合がどうかしたのかしら」と不思議そうに訊く。

「私も百合が好きなので、話が合いそうですね」

「そう? それはよかったわ」

「それでは、雛窪さん、寮まで案内していただけますか」

「まっかせなさーい!」

 千恵は握り拳に笑顔で勢いよく答え、先生に注意の眼差しを受けながらも気にしていないのか気づいていないのか分からないが、小走りで教室の出入り口に立つ。「行くよー!」

「失礼します」と先生に頭を下げ、お嬢様学校に相応しいピシッとした歩きで千恵を追う。お嬢様学校に相応しい歩き方を意識した時点で、自分が百合的憧れの対象「お嬢様学校」の一員に組み込まれた感動を直視することとなり再び脳がキメキメの萌えアニソンのようにふわふわし始めたが必死に鎮め平静に歩を運んだ。

「百合子さんはさ、どうしてキボジョに、高校受験してまで入ろうと思ったの? 向上心? 運動部強いから? 実はアスリート志望?」

 廊下に出るなり千恵は鎖をぎちぎちに引っ張る散歩犬の押し出しでぐいぐい来る。

「うーん、まあ、アレかな、未来の保証、っていうか、ある種の浪漫?」

 身体まで寄せてくるので私は手でガードしながら少し後退する。

「やっぱ玉の輿狙いかぁ」

 なんだか面白くないような顔つきになる。見つめていると千恵ははっとして、

「別に悪い意味じゃなくて、その、やっぱ良妻賢母だからかぁ」

 と、急に萎れる。水の行き渡らなくなった植物が頭を垂れるみたいだ。

「まあ、良妻賢母なんて〇〇〇〇〇〇〇だけどね」

 私が米俗語の放送禁止用語を口にすると千恵は驚いたように顔を跳ね上げ真意を探るように私の目を覗くので、もう一度同じ言葉を繰り返すと、下品な言葉を並べ立てられた幼児がするのと同じく、千恵は爆笑し始めた。一通り笑うと、目の縁に浮いた涙を指で払い、「百合子さんって、変な人」と嬉しそうな顔をする。

 アメリカ大陸は存在し、俗語も元いた世界と同じ。たぶん、百合神様はこの百合の園以外に設定を弄っていない。推定でしかないが、百合神様の力が及ぶのは百合の園の内部、つまりこの百合が多発するお嬢様学校という「場」。それを成り立たせるのに必要な範囲のみ弄り、あとはほったらかしだろう。発射されない拳銃など物語に要らないのだ。

「ますます気に入ったわ。百合子さん……ていうか、めんどくさいから百合子って呼んでいい?」

 階段を三段飛ばしで上がるスタイルは、やはり青春の新鮮さの為せる業なのか。「いいよ」と答える。

「おっけ。私のことはちーちゃんでいいよ。ここの子、お堅いでしょ? みんな大概千恵とか千恵さんとか、雛窪さんって呼ぶんだよね。なんか窮屈でさ」

「……分かった。ちーちゃん」

「よろしく百合子!」

 元気に歯を見せて笑う千恵を見ていると、自分にもこんな時期があったことが信じられない思いになる。こんな無防備さを他人に平気で晒していたのだろうか私は。稚拙な将棋を見せられるようで、少し怖気がする。

「よぉし! 演劇部絡みで高校の棟はだいたい見知ってるから、ついでに校舎の案内もしちゃうね!」

 張り切る千恵に、微笑みを返す。三十路のお姉さんが子供を見て微笑む距離感のはずが、彼女の人懐っこさに当てられて私も彼女に同年代のような好感を抱き始めている。まあ、せっかく百合の園に転生したのだし、その舞台を堪能せずして何の喜び有り也、私も張り切って行こうビバ新世界!

 案内に付き従う。運動場、体育館、テニスコート、図書室、調理室に被服室、音楽室に美術室、茶道室まであった。アスリート志望の子が来るのも頷ける立派な運動施設だけでなく文化部への援助も手厚い様子だ。それがこの学校から出荷される嫁の質を担保する、というからくりかもしれないが。

 自販機も備えた歓談場はまだ理解できるが、立派な食堂とはまた別にカフェーなんてしゃらくさいものまであり、高校生にしてこの豪華設備、女子ならば誰しもが抱えるセレブ欲、虚飾虚栄を早期教育する場なのかと訝しむ思いもあるが生前それなりでしかない人生を送ってきた身としては特権階級にのみ門戸の開かれた社交場に出入りする許可を得られたのは無上の喜びだった。華やかで煌びやかなお嬢様学校生活への参画。それだけではない、カフェーで女学生たちがティーカップを摘まんで良し無し事を語らい笑いさざめく、その濃厚でnobleな百合の現場に、私は立ち会えるのだ。それを思うと、暫し目頭を押さえずにはいられなかった。

 大方案内が済むと千恵は、背中に満足を宿して鼻を伸ばしやや歩幅を広げて歩く。私のほうが身長も高く歩幅も広いので遅れることはない。頭の中で案内された場所の位置関係を整理する。記憶力や方向感覚が傑出して高いわけではないがどこをどう行けばどこに着くかは凡そ把握したし忘れたら千恵にもう一度訊けばよい、高校受験組を言い分けにすれば嫌な顔をされることもあるまいて。

 下足場で靴を履き替え、いよいよ寮へと向かう。ホールを迂回するように曲がって下りる坂と階段主体の通用門の二か所、学校の敷地から出入りする門があるらしいが、正門は坂のほうで寮への接続もそちらのほうが速いので迷わず坂を選択する。

 鳥の軽やかな鳴き声を耳に、まだ透明な昼光と散りゆく桜の儚さが交差する坂道を、青春の逸りを胸に下る。小高い丘の上に在る設定まで踏襲する百合神様の王道学園百合への徹底ぶりに感涙しながら一歩一歩を踏みしめる。生きててよかった。頑張って生きてきた甲斐があった。果報は寝て待て。でも正確には死んでるから死後まで待てになるのか。

「花粉症って感じでもないけど」千恵がジト目で私を見上げる。「なんか涙ぐむ理由があるの?」

「いや、うん、人生素晴らしいなって」

 私のむせぶ姿に、次第に慣れた結果千恵は心配でなく不審が先立つ様子だ。「百合子、ホールから出たとこで百合の花が咲いたとかなんか言って爆涙してたじゃない? それに、昭島先生に百合の花のこと聞いてたでしょ? なんか泣いてるのと百合が関係あるわけ?」

 私が担任の昭島先生に知っているか訊いたのは百合のことで百合の花とは一言も言っていない。これでほぼ確証が得られた。

 百合が頻発する女子校。しかし、彼女たちはその意味を知らない。女子と女子が感応して生じる「百合」という概念が無い世界。行為は行われているのにそれを指す言葉がない、概念欠落型の世界観だ。ゆえに昭島先生も千恵も百合という言葉を植物の百合としか受け取れない。

 もう一つ分かることがある。私は百合神様に百合への信仰を認められてこの異世界に転生した。つまり、転生要件として百合に対する帰依が求められる。どこの馬の骨とも知れぬ輩が入り込む余地はない。ならば。転生者は全員百合練達者のはず。そんな世界で、誰も百合を概念の段階で知らない。となると、転生者は私一人。ただ一人百合を知る者として、その甘やかな蜜を吸いつくしなさいと百合神様は仰っているのだ!

「百合はね、雛窪さん」

「ちーちゃんって呼んでってば」

「そうだったね。ちーちゃん。百合はね、この世の何よりも素晴らしくて、尊いものなのよ……」

「……キリストにマリア様じゃなくて?」

「私の主は百合よ。百合神様なのよ」

 千恵は、完全に意味が分からないという顔をしている。胡乱げに私を見つめ、ふふっ、と笑った。

「百合子って変な人! 学校でそんなこと言ったらお説教だよ。でもなんか面白いからいいよそれで、私の前ではね」

「〇〇〇〇〇〇〇とか言うしね」

「それは本気で止めなさい。一緒に話してた私まで反省文書かされるかもしれないから」

「育ちが悪いもので。これでも地方では有名な豪族の出身なのだけれど」

「あ、そう言えば」と千恵が真顔になる。ツインテールの毛先を指でいじる。「……私、百合子に、どこの中学校出身か訊いたじゃない?」

 しまった。まだ練り上げていない架空の履歴の話に自ら踏み込んでしまうとは己が設置した地雷で爆死する愚。急いで設定を練らねば、たぶん都道府県はそのまま存在する、なら、お嬢様学校に相応しい中学校は、って、それなりの人生だったからアッパークラスが通う学校名なんて知らないし興味なかった、とりあえず百合漫画で有名な鎌倉の、でもそれ高校だし、と纏まらないうちに千恵が口を開く。

「なんていうか、私、不躾だったかなって」彼女の目が右へ流れる。何か弱みがある様子だ。「実は私さ」一度観念したように目を長めに閉じて、顔は前、視線を合わせずに語り始める。「私、一般家庭の子なんだよね。お父さんは平凡な公務員、お母さんは、しがない会社員。巷じゃごくありふれてるけどこの学校じゃ少数派の、平民の出身なの。地方の豪族でもない。なんでここにあなたがいるの、みたいにびっくりされちゃう、白鳥足り得ないアヒルなの。そういう、ステータスっていうの? 家庭や経歴の話をすると、自分とは所属が違う人だって露骨に嫌がる人もいるし、急に表面的な付き合いに態度変える人もいたし、逆に、妙に気を遣われてこっちが惨めな思いしちゃったりとか、いろいろあってさ。だから、相手の生い立ちを突っ込むのはタブーかなって普段は遠慮してるんだけどさ」ツインテールの毛先が揺れる。「なんていうか……高校からの子だったら、私みたいな中流家庭の子もいるのかなって思っちゃって、期待しちゃって。でも、身辺調査するみたいでよくなかったなって。ごめんね」

 自分の目的を素直に晒し、その非を素直に認める。真っ直ぐに謝る千恵に、私は私が恥ずかしくなる。世界観を知るために相手を大人の話術で巧みに誘導することしか考えていない自分の悪辣さが白地に舞い降りた黒い蝶のように際立ってしまう。何か言いたい。言い訳でない本物を差し出したい。だが、今の私には差し出せる真実がない。

「……ちーちゃんさ」

「何?」

「……ちーちゃんの親は、なんでここに通わせようと思ったの?」

 うーん、と眉を寄せて考え込む。「そういえば、訊いたことなかったな」

「今度訊いてみな。周りの、ステータス絡みの軋轢を予期しないはずはないけど、それを承知で入学させたのには何かしら意図があると思うから。それに、平民だろうと受かったからには通っていいってことなんだから、もっと自信持てば?」

「それなんだよね。逆に考えると、上流階級の中に平民が食い込めちゃったってことでしょ? ていうことは私めっちゃ頭いいんじゃない? 少なくとも度胸には自分でもけっこう自信あってさ、面接でも元気いいねって言われた! 気がする! よく憶えてないけど」

 しゅんとしていたのが弾ける花火のように勢いを取り戻す。なんだか、らしいな、と、自然と微笑んでしまう。

 街路樹に飛びついた蝉が騒がしくなるように、千恵が語り出す。穏やかな父の話、まるでマンボウが回遊するようなのんびりとした母の話、お洒落で元ギャルながら今はぴっちりスーツで会社に通う少し年の離れた姉の話、己が信じる正義ゆえに誰に対しても絶対に壁を築こうとしないさより女史の潔癖さと融通の利かなさの話、中学時代から仲の良い演劇部同学年の話、その他諸々。寮のことは少しも喋らんな、と思いながらも彼女が幸せであることに深く頷いてしまう。こういう明るい子には笑っていて欲しいと思う。

 学校の小丘から下りて敷地に沿うように歩いた先、続いていた丘の斜面が下降してついに道路と同じ高さまで下がり、現れた広大な平地のぐるりを装飾された鉄格子が囲う、その中央に巨大な門があり、二車線分を優に超える広さの平らな道が伸びてその先は見えない。道の両脇は芝生に雑木が茂りヴェルサイユ宮殿の庭ほどではないが管理維持にどのくらいマネーを費消しているのだろうとくらくら来る豪奢さだ。百合が咲くに相応しき舞台。百合神様の御力に合掌する。

「寮は、何人ぐらい暮らしてるの?」

 話が一段落した隙を突くと、千恵は出し抜けに北欧神話の神の名前を出されたような、つまり頭に微塵もなかったという顔つきで、「そっか、寮の説明何にもしてなかったね、私」自分に驚いている。

「庭がこれだけでかいと、百人は優に入るのかな?」

「ん? いや?」

 千恵が何でもないように首を振るので「二百ぐらい?」と訂正すると、彼女は「三十二人」と、やはり何でもないような顔つきで言う。

「三十二人? たったの? この広さで?」

 驚く私に首を傾げている。地球を無理に平面に落とし込んだ正距方位図法とメルカトル図法が生むズレみたいに、千恵と私の中で世界の縮尺が食い違っているのか。

「他に寮ってあるの?」訊いてみる。

「あるよ。赤花寮と青花寮と黄花寮。あ、ここにはないけどね」

「他の敷地にあるの?」

「うん。白花寮って凄いんだよ」千恵が胸を張る。「はっきり言って六年生が最強なの。あ、六年生っていうのは、中学まで三年、で高校生はそこから数字を加えて四年生、五年生、六年生って数えるのが慣習になっててね、だから分かりやすく言うと高校三年生のこと」

 百合漫画や小説で知悉した中高一貫校独特の数え方だ。

「でね、六年生がもう最強でね、私一年の頃から、中学一年生ね、の頃から寮住まいだけど、お姉さまときよ――」

「お姉さま?」口上の途中で斬りつける不躾と知って、だが私は訊き返さずにはいられなかった。お姉さま、だと?

「お姉さまは、もう、お姉さまとしか呼べないわよ、もうパーフェクトだから、完璧超人、頭脳明晰眉目秀麗、選りすぐりのお嬢様たちが通うこの学校でも別次元なの、カリスマなんだから」

 我が事として誇る千恵が放つ言葉がいくつもの像を結ぶ。あの百合漫画で見たお姉さま。あの百合小説で描写されたお姉さま。あの隠れ百合映画でしっとり存在していたお姉さま。全ての像が収合してお姉さまのイデアが生まれる。理想のお姉さま。そしてそれを慕う下級生。超超超王道の、姉妹百合。なんて。なんて。

「なんて甘やかな響きなのでしょう……」

「うわ、またなんかスイッチ入ってる」

 千恵が住宅地で熊を見たような警戒の眼差しで私を見ているが気にしない。神様って怖い。百合神様の全知全能ぶりが恐ろしい。ロード・オブ・百合の偉大さよ。

 私は今日何度目か分からない感謝としての合掌を決め、「早く行こう。この世の真理を早く拝もう」「寮まではもう五分くらい歩くけど」「ダッシュしよ。青春とはダッシュなのだから」正しい道も知らぬまま千恵を引き連れて明日へと駆けた。

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