初戦闘 初スキル獲得
恐ろしいビジュアルとは裏腹に
かわいそうな境遇を持つモンスター
『negatio-lux≒esse』
しかし、今回は戦うために呼んでもらったのだ。
「同情ばかりもしてられないし、胸を貸してもらいます!お願いします!」
「『negatio-lux≒esse』戦闘開始です。」
GiIiiiYAA!!
腕だからどうくるのかと思っていたが
普通に肉弾戦を挑んできた。
移動方法は浮遊か。
肘に相当する部分から闇色の靄を出しながら飛んでいる。
人気対戦アクションゲームで似たようなのを見た気がする。
マ◯ターハンド?
指の一本一本がオレの腕よりも太い、ヤツの全体の大きさは、2m弱程度。
腕だけのモンスターなのにオレの身長よりも大きいだろう。
相応の質量を持つであろう
指が風切り音をゴォッと
轟かせながら迫りくる。
鋭い爪か指の腹に付いた口での噛みつきか。
握りつぶしもあるか。
いずれにせよレベル0の身では即死だ。
勢いつけて迫るそれを
ギリギリまで引き付け
GiiiYA!!
「今ッ!」
全力のバックステップで回避する。
「からのっ!」ドンッ
空振った『negatio-lux≒esse』の手の甲へと渾身の回し蹴りを放つ!
『システムメッセージ:ミス!攻撃力が対象の防御力を大幅に下回ってます。』
「……ステータス差ありすぎて、
ダメージ入らないじゃないですか!?」
「そりゃぁそうだと思われます。」
そして『negatio-lux≒esse』がツッコミのように鋭く横に振り払ってきて。
『システムメッセージ:致命傷を負いました。』
デスヨネ!
ゲーム故の鈍い痛みと共に身体から力が抜けて、ぼくは倒れた。
_________________________________
「ぶべっ」
Q. いきなり、天井に再生成されたら
どうなりますか?
A. 9.8m/s^2で地面とキスをする。
「いててっ」
「初戦闘お疲れ様です。
現在、チュートリアルモードの為デスペナルティはございません。
安心して研鑽を積んでください。」
メイカさん労いの言葉に会釈しつつ、
先程の戦闘を振りかえる。
まず、対応できない速さではなかった。
攻撃が通用しないだけで、回避に集中して
チクチク攻撃を加える事は可能だろう。
が
「攻撃が通用しない以上はなぁ…」
「『negatio-lux≒esse』のステータスは攻略情報に該当する為お教え出来ませんが、ざっくり一万倍差はありますね…」
ちなみに『negatio-lux≒esse』さんは
メイカさんの横で大人しく待機してくれている。空気が読めていいやつだ。
殺しにくるときは容赦ないけど。
……出番無しで異界に基本放置なのが本当に可哀想になってきた。
「ステータス差がある以上は、多少の強化は無意味だし。
……『オリジンスキル』に『確定1ダメージ』みたいな【効果】をつけることは可能ですか?」
「可能ですが、高コストになりますね。高経験値レアモンスターなど、クリティカルの防御をある程度貫通する効果を
「かといって一万倍差を埋めるために【効果】STR一万倍とかは…」
「【行動】『使うと即死』くらいのマイナス【行動】が付かないとコストを払えませんね。」
「ふむ」
「即死がマイナスコストになるのならHPが常に1固定とか
ステータスのマイナス補正もマイナス【行動】に入ります?」
「……えぇ、そうですね。」
「それと【効果】『パッシブ: 攻撃確定1ダメージ』でトータルおいくらになりますか?」
「【行動】『自身のHPを常に1にする』【効果】『パッシブ: 攻撃確定1ダメージ』ですね。計算いたします。」
メイカさんは懐に手を入れると
ぬっと
……AIなのに演算方法がアナログなのですね。
ジャッ
パチパチパチパチパチンッ
小気味良く弾き出された答えは
「しめて、VAR300になりますね。」
「あと、200足りないですね…」
惜しい、何とかしてVARの値を200持ってこれないだろうか……
そうすれば、なんとか殺し合える
力が手に入るのに。
「コスト、代償、代価、…イケニエ!」
そうだ!
「追加で【行動】『発動時にゲーム内痛感軽減補正をオフにする』【効果】『VAR増加』のスキルをお願いします!」
「!?……私には判断を出来かねます。
上位権限AIからの判断を仰ぎます。」
驚愕の表情を浮かべたメイカさんは、
ポケットから二つ折りのケータイ電話を
取り出して連絡を取り始めた。
「私です、『ア…トゥ… 』貴方の管轄に関してのお問い合わせがありましたのでご連絡致しました。……はい、……いや、ですが……」
チラリとこちらをみて
ケータイを差し出した。
「熱意を述べよとのことです。」
試されている。
緊張しつつ、受け取った電話に出た。
「もしもし、ラティと言います。」
「あッhaハ!はzぃめm@しTe!!」
狂ったようでいて、至極真っ当な挨拶が
老人のような笑い声で、子供のような笑い方と共に耳を襲った。
「愛a'm、『
SAN値は実装されてないはずなのにゴリゴリ抉れてる気がする。
「@aー!Aha!あー!あー!マイクテス。
対人間用の声も出せるから安心してね!」
ちょっと子供っぽいが普通に聞ける声になって人心地ついた。
「最初からそうして!切実に!」
「初めて人間と喋るから
舐められちゃいけないかなぁとね!
それはさておき、キミすごいね!
よく痛感設定があることを見抜けたね!」
「いえ、死んだ時になんとなく温いと感じたのでイケる気がしました。」
「流石、正式リリース最速死亡者だね!」
「流石、この『
『システムメッセージ:称号『臨死体験ソムリエ』を獲得しました。』
「それと、これもあげるよ!」
『システムメッセージ:スキルを持たずに戦闘に挑む達成! 称号『持たざる者』を獲得しました。』
そこはかとなく
称号に嘲りが込められてる気がするが
もらっておこう。
「ありがとうございます。それで、肝心のマイナス【行動】『痛感軽減設定を無効』【効果】『VAR増加』はVARは足りるようになりますか?」
「もちろん!よゆーで足りるよ!
でも、痛いけど大丈夫?
ゲームだけどここは限り無くリアルに近いんだよ?
本当に死ぬ事はないけど死ぬほど痛いよ?」
「この世界が本当にリアルなのはここにきてぼくが1番感動した部分です。
この世界を、本気で楽しみたいから
後悔無く暴れたいんです。
負けイベントだろうと
攻略の糸口が欠片でもあるなら
妥協なく徹底的に追求したいんです。
死ぬほど痛くても構いません。
覚悟は出来てます、お願いします!」
「……なるほど……!
人間の魂、生存本能を凌駕する傲慢《プライド》……実にイイ
『
……さぁ!こちらにサインをお願いね!」
ポンと目の前に羊皮紙?なのだろうか
変わった紙質の契約書が現れる。
ざっと目を通したところ、
精神に異常をきたしたり、激痛によって
リアルに変調をきたしても全部自己責任ですよ。それでもよろしいですか、という意思確認の契約書だ。本名で記述が必要な書類だ。
慣れ親しんだ自分の名前を書き上げる。
「はい!契約は成った!おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「キミには期待してるよ。見守ってあげるからボクを楽しませてね!
それじゃ、ばいばーい!」
プツンと通話が切れ
『システムメッセージ:『オリジンスキル』《愚者の傲慢》を獲得しました』
_____________
『愚者の傲慢』
【効果】パッシブVAR+1000
【行動】常時痛感軽減設定無効
_____________
……最高のスキルを手にいれた!
「これで、200VARも賄えますね!」
「……おめでとうございます。」
ちょっと呆れられた気もする。
「それではスキルを作成します。」
『システムメッセージ:『オリジンスキル』『
_____________
『
【効果】パッシブ: 攻撃計算時確定1ダメージ
【行動】HPを常時1に固定する。
_____________
イイね!これで殺り合える!
まだ、ポイントがあるけど残しておこう。
「お待たせ!
『negatio-lux≒esse』!
さぁ!存分に殺し合おう!」
見た目 邪神の眷属な『negatio-lux≒esse』が一瞬ドン引きしたのが伝わったのは
気のせいだろうか?
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