災禍の名は
「次にスキルの設定に移ります」
「ワクワクしますね!」
「フフ、【ヒューマン】の初期ステータスはこちらになります」
_____________
【Name:未設定】
種族:ヒューマン
LV:0
HP:105
MP:110
STR(力):5
INT(知力):5
DEX(器用)5
AGI(敏捷)5
MIN(精神):5
VIT(頑強):5
SP(スキルポイント):100
VAR(拡張性):100
スキル:【未設定】
_____________
現状のステータスがこれか!
……あっ!
「そういえば名前も決めてないですね!」
「おやおや、
「……すみません、プレイする事は楽しみでしたが、名前の事は全く考えてませんでした。今から考えても?」
身体を動かすゲームが好きなぼくは、オンラインゲームはスマホアプリくらいしか実はやってない。
ニックネームが必須でも『田中 太郎』とかで済ましてきたタイプだ。
「せっかく、こんな夢のようなゲームを遊べてるのにテキトーな名前をつけるのは…しばらく考えますね。」
「ごゆっくりお考えください、時間はまだまだございます。」
お言葉に甘えて本気で考えてみよう。
……二時間後
ダメだ、今まで考えた事ないネーミングについて、センスがない。
普段使って無い筋肉を無理矢理動かすのに似た鈍さや力の無さを感じる。
「……
「では、
ほぉほぉ?
「桔梗の学術名Platycodon grandiflorumからプラティコドンを抜き出してさらに切り取って『Laty(ラティ)』なんてどうでしょうか?」
おぉ!シンプルだし呼ばれやすそう!
「ありがとうございます!」
「フフ、気に入って頂けたら何よりです。ネーミングは連想ゲームみたいに考えるといいですよ。」
「はい!メイカ先生!」
ぼくの名前は【ラティ】で決まった。
_____________
【Name:Laty】
種族:ヒューマン
LV:0
HP:105
MP:110
STR(力):5
INT(知力):5
DEX(器用)5
AGI(敏捷)5
MIN(精神):5
VIT(頑強):5
SP(スキルポイント):100
VAR(拡張性):100
スキル:【未設定】
_____________
「それでは、スキルの説明に入ります。」
「お願いします!」
「このVRオンラインの世界にある、『スキル』は『アクティブスキル』、『パッシブスキル』の2つの『システムスキル』と『オリジンスキル』いわゆるユニークスキルに別れます。」
ほぉほぉ
「基本的にポイントを消費して獲得するのが『システムスキル』になります。
そして『オリジンスキル』はプレイヤーの『創造』するスキルになります。『創造』のキャパシティを決めるのがVAR(拡張性)のステータスです。
『オリジンスキル』は一度創造すると消せませんので、VARの上限を意識しながら計画的に『創造』してください。」
「また、VARは各種ステータスのパラメーターに振り分ける事も可能になります。一点突破のスキルを作るも基礎ステータスを伸ばすも貴方の自由になります。」
なかなか難しそうだなぁ。
「難しそうだと思いましたか?
ご安心下さい。プレイヤーの最初のスキルはこの『オリジンスキル』を作ってもらう所からスタートになります。」
おぉ!?
「『オリジンスキル』はここや、街の教会で基本的に作成が可能です。作成ルーム内にいる限りはスキルが確定されないので作り直しが可能ですが、部屋から出ると『オリジンスキル』として確定しますので、取り消し不可能となります。」
「スキルを構成する要素は主に2つ【行動】と【効果】になります。例えば」
メイカさんは言葉を切り、
パチンッ ボワァッ
「私が発動したスキルは指をならすという【行動】とMP消費5で火属性ダメージ小の火を生み出す【効果】で構成されています。」
おぉぉぉ!?
「コストは【行動】がコンパクトだったり、発動が速い物ほど高く。【効果】は高威力、高効率の物ほど当然高くなります。それらの合算がスキルの作成コストになりVARからマイナスされます。」
なるほど、なるほど
「ちなみにメイカさんの使ったスキルのコストはいくつになりますか?」
「こちらのコストは【行動】フィンガースナップが500【効果】MP消費5火属性ダメージ小で500のトータル1000VARになります。」
お高い!?
「手軽に発動が可能なフィンガースナップが高いのはもちろんですが、こちらのスキルにはクールタイムを設けておりません。
つまり」
パチンッパチンッパチンッパチンッパチンッ
ボボボボボボワワワッッ
「MPの続く限り、かなりの効率で発動が可能になります。」
あ、強いですね、そりゃ高いですね。
うぅむ、どんなスキルを作ろうか。
「【行動】ってどんなものがありますか?」
「1番有名どころでは『詠唱』も【行動】として適用されます。長ければ長いほどコストを減らせます、その分【効果】にコストを割けますね。」
おぉぉぉ!!
「あ、自分で詠唱呪文とか考えなきゃダメなんですね……」
試される厨二力と理性と羞恥のせめぎあい
「無言で待機とかも【行動】ですか?」
「【行動】にはなりますが、『詠唱』の方が詩を
……本気で考えないと
無駄遣いで終わりそうだ。
「行動、動作、動き、コスト、戦闘、威力、効率、効用の最大化」
思い付くワードを並べる、
オレは何を望む?
全力で暴れたい!
その為には適切にスキルを作っていく必要がある。
「メイカ先生」
「はい?」
「スキルが作れても試せないと困るよね?」
「ですね。」
「練習用のモンスターを召喚とか出来ます?」
「ご明察です、可能です。」
「1番 モンスターの中で 強いやつを出せる?」
「よろしいのですか?まだ、スキルの影も形もありませんが。」
「かまいません、現状でのオレの動きを把握したいだけですので」
「かしこまりました、では…
【行動】なのだろう、
複雑精緻なな魔法陣を指先に灯した黒い光で書き上げていく。
AIでないと不可能なレベルの速さと正確さで、指だけのフリーハンドで陣を構成する姿は大魔法使いじみていて感嘆の吐息を溢さないのがやっとだった。
一分にも満たない早さで完璧な六芒星と円を融合させた陣を異界の文字で綴りきった。
「顕現せよ 祝福され得ぬモノ」
白い部屋に異様な存在感を放つ
黒い魔法陣
ピシリッ
精緻な陣は役目を果たし
異界への門へと変わる
亀裂の入った魔法陣から
闇がこぼれ落ちる
津波が窓ガラスを圧で割るように
取り返しのつかない事が起きる事を
予感させる怒涛の奔流で亀裂を
抉じ開け流れ落ちる。
ドロリと粘性の闇
それが繊維になるより合わさり肉となり爪となり皮膚となる。
GiSYAAAAA!!
闇の腕だ。異形な人の腕。
指の先にある大きな口が飲み込まれたら
終わりだと感じさせる深淵を覗かせる。
掌にある大きな目玉も黒曜石のような
テラテラとした艶のある黒い目玉。
唯一の色彩は指先の口から伸びる赤黒い舌だけ。
その咆哮は世界を呪うようで、
悲しげで。悲痛な怒りに満ちていた。
「『negatio-lux≒esse』…私が召喚可能な範囲で最強のモンスターです。」
「……うん、ラスダンとかにいそうなやつだよね」
「いえ、今のところユニークモンスターになります、神に見放された憐れな闇の申し子。
……ぶっちゃけますと、設定したのはいいもののサービス開始初期に、こんなん配置しても誰も倒せないと遅れて気付いた、愚かな神がとりあえず異界に封印した正真正銘の怪物です。」
……割りと本気で同情しそう。
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