おまけ3オルタナティヴって何ですか、ユーリ先生2

「・・・・・・・・・・・・」

「ん? なに、ソラ? そんな人の顔じっと見て。眼鏡の奥が怖い光り方してるわよ?」

「・・・・・・別に。気にしないで」


 ユーリを見つめる視線が知らず厳しいものになっていたようだ。


 でもそれは仕方ないんじゃないかな。

 私にとって、ユーリはそれほど掛け替えのない存在だと思ってたのに、あっちは大勢の人間におんなじようにニコニコと、ああも呆気なく打ち解け合うんだもん。


「あのねえ。私も大概薄情な人間みたいに言われるけどね。ユーリがあんなに社交的な人だとは思わなかったわよ。背中を任せられる女の子なら誰でも良かったんじゃないの」


 あ、わかったって顔でポンと胸の前で手を合わせるユーリ。

 そっかそっか、とニヤニヤするのでこちらはまったくいい気がしないのだ。


「ああ、ああ! ソラってば嫉妬してくれてたのね。そっかぁ。これが嫉妬か。え?! じゃあその内修羅場っていうのも経験出来ちゃうの、わたし?! キャー!」


 何をそんなに喜んでるのか、この魔女は。もし修羅場にでもなったら、もうそれは大分取り返しのつかない所まで来てるはずなんですけど。


「ふふ。大丈夫よ、ソラ。ソラみたいに危なっかしくて放って置けなくて、こんなに小さく愛くるしい、それも魔力のパスが繋がった女の子なんて、そうそう見つからないわよ」

「・・・・・・そう。でもなんか年の功で色々経験豊かな一面を見た気がして」


 結構ウブな感じだと思ってたのに、なかなかどうしてやり手だったのかしら。

 それに微妙にはぐらかされた感じもするのよね。


「そんなことないわよ。ソラは考えすぎ。ここのカエンさんの態度見てたらわかるわよ。頑固親父なんか出て来たら、やっぱりお店には行きづらいって。でも、そうね」


 と顎に指を当てて考える。


「交渉術っていうか、会話をこなすテクニックはちゃんと身につけてるかも。何でもかんでも暴力で解決する訳じゃないしね。まぁ、大体が話し合いなんて無効になるんだけど、でも現地の人とはちゃんと打ち解けて、情報は得られるようにはしてて」


 あ、そうか。

 かなり長い間その老人と旅をしてたから、あちこちの人の間に入れるようにしないと、すぐに浮いてしまうからだ。


 あまり思い出したくないことを想起させてしまったかもしれない。

 ・・・・・・私は嫌な女だろうか。


「でもね。ソラみたいなヒトは全然どこにもいなかったわ! 空っぽなのに満たされていて、それでいて受け流すように生きているのに、でもちゃんと自他の苦しみを苦しみと受け止められる」


 それで、と続けるユーリ。


「何より超レア級の魔眼持ちですもの。まだ充分若くて可愛いのも魅力よ。小さいし!」

「・・・・・・思うんだけど、ユーリのその年齢でそういう発言は問題だと思う。未成年とそういう行為に耽ると罰せられるのは大人なんだから。まぁ、ユーリに人間の法律が有効かは知らないけど」


 それに体が小さいことは、そんなにも美の観点から長所だろうか。

 私は身長の高い女性もいいなと思うけど、ユーリからは小動物みたいな鑑賞としての喜びがあるのかも。

 ま、深く突っ込まないでいよう。


 しかし、ユーリは少しプリプリして、こう言うのだ。


「あ! ひっどーい! ソラってば、私をお婆ちゃん扱い? まだまだ若いつもりでいるんだから。フィンお爺ちゃんにだって『お前は年相応の落ち着きがなくていかん。どうしてそう、子供みたいなままいられるのだ』なんて言われてるくらいなんですからね!」


 それは決して褒め言葉ではないと思うのよね、今のを聞いてると。でも、本人が良しとしてるならいいのかな。


「・・・・・・それなら何も言わない。ユーリがお姫様なら、私はそれに黙って従いますよ」


 ふっふーん、控えおろう近う寄れ、とかユーリが遊んでやってる内に、メニューが火炎さんによって運ばれて来る。


「お、なになに。お殿様ごっこ? いいわねえ、女の殿様。夢が膨らむわ。ユーリちゃんがやると、更に様になってる」

「勘弁して下さいよ。そういう調子の乗せ方させないで」

「なによおー。別にいいじゃない。わたしだって貴族みたいなモノよ? ソラがわたしに謁見出来るのは、とおーっても光栄なことなんだから」


 ・・・・・・さいですか。もうそれに反論してもしょうがないわよね。



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