おまけ3オルタナティヴって何ですか、ユーリ先生1
「お待たせ。ちょっと学校の課題してたら、時間大分経っちゃってた」
お店に入って、ユーリが陣取る席の方に向かう私。
今日も喫茶〈メガ・ムーン〉だ。
「おっそーい。ソラったらもう、大物の貫禄充分ね」
冗談を言うほどだから、あんまり怒ってなさそうで良かった。少し急いで来た甲斐があったかな。
「ここのカフェオレも美味しいのよ。ソラも頼んでみて。それからチーズケーキも結構イケるんだから」
うーん。いつの間にそんなにこの店のメニューに詳しくなったんだろう。
「えへへ。何日かソラとの待ち合わせじゃない日も通っちゃった。このお店の雰囲気好きだし。ちょっと森のイメージよね」
ははあ。常連さんになってた訳か。
しかしですね、それにしても魔女さんはお暇なのでしょうか。
「そりゃあ普段は暇よ。あんまりあれこれ退治屋みたいなことは、わたししないもの。だって、日がな一日お爺さんのお喋りに付き合わされてみてよ? ね、嫌でしょう。だからこうやって羽根を伸ばして、この国に滞在してるんだから」
ああ、それでそんなに頻繁に会う約束を入れるんだね。
ようやく合点がいった。飛行機代とか大丈夫かなと心配しないで良かったのね。
「うーん。今日もカフェオレにしよっかな。後、パンケーキにするわ。この国のは結構拘りが面白いしね。お姉さーん」
うわっ、こんなに気軽にウェイトレスさんを呼べるなんて凄いなぁ。
「はいはーい。ユーリちゃん、いつもありがとね。今日はこの前のお連れさんね。お姉さんイイ仲のお二人に何かサーヴィスしてあげよっかな。あ、お砂糖は塩と入れ替えたりしなかったら、自由に使ってね」
「どうも」
お辞儀をする私にウェイトレスのお姉さんは、へへへと何やらにこやかに笑顔になる。
「ほほー。少女よ。君、私がウェイトレスだと思ってるな? 残念。私はこんな若々しいオーラが隠せなくても、このお店のマスターなのだよ」
マ、マスターでしたか。これは失礼を。それにしてもテンション高めのお方だ。
良く見れば、でも綺麗な人で流石に一国の主には見えないかもだ。
綺麗な黒髪を後ろで留めていて、前髪もキチンと短く揃えられている。
「名をば
「なんだか反発し合いそうな、芸名っぽいお名前ですね。・・・・・・芸名じゃないですよね?」
ふふー、と笑って腰に手をやり、またもニッと白い歯を見せて眩しい笑顔。
「そういう遠慮のないのは大好きだよ、少女よ。そう、この名前って芸名みたいだけど、本名なの。水に火炎とはイカすお名前でしょう。絶対平凡な名前のとこには嫁ぎたくないよね! その辺の女の子には名前負けしないぞ?」
確かにこの火炎さんは、その態度も明るいので、隙がない様な大きい器に見えて来る。
というか、さっきの隠れ家的なお店という話は、やはり今はそこまで繁盛してる訳ではないのでは?と突っ込んだ方がいいのかしらね。
大体、現在見渡す限りお店にはあなただけのようですけど。
「うむ。手伝いの子は一人だけだ。今は買い出しを頼んでいるのさ。さあ、ゆっくりしていってくれたまえ」
そう言って去ろうとするお姉さんを、ユーリがもうちょっと、と言い引き留める。
「オーダーでしょ、カエンさん。えーと今言うわね。これとこれを二人分と後・・・・・・」
幾つか注文していくユーリだが、それは私の分も含まれてるのよね。
最早予断を許さないんだ。
「オッケーオッケー。マルマルだよ。オーダー入りましたー!」
これお客さんが少ないからいいけど、常時こんな調子なのかなぁ。
ちょっと不安になって来た。
「ね、ちょっとネジの外れた子だけど、腕は確かよ。それにソラとある意味で近いタイプだから、気兼ねしなくていいし楽しいわ」
どこが私と近いタイプ?
私はこんな元気印みたいじゃないわよ。
それにしても、この人だからか、ユーリももしかして割と人と仲良くなるの得意なんじゃないかな。とても寂しく暮らしてた魔女とは思えない。
む。そう思うと微妙にオモシロクナイ気持ちになるわね。
あ、それと砂糖を塩と入れ替えるのは、あそこが出典だな、なんて突っ込まないわよ、私は。そんな悪戯許されないし、やる訳ないじゃない。
それにそんなお塩の用意なんて私には無いもの。
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