第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に7
紅茶を飲んでから、ユーリに促されて、私の部屋のベッドに行く。
心臓は高鳴るとか、そんな次元じゃない。ユーリも心なしか顔が赤く染まっている。
・・・・・・この前から変だったのは、それでなのかしら。全部って全部ですよね。えーと、ホントに脱ぐの? 全部?
ベッドに座ると、ユーリが隣に座って、ギュッと手を握って来る。
――それが妙に恥ずかしくて、変な気持ちになっちゃいそうだよ。
「あの、ね。同調するのに、二人とも全裸になって、それで濃厚なキスもしないといけないの。い、嫌だろうけど、我慢して。そうしないとソラの命、ううん、精神の柱の部分が危ないから!」
そう強く言われると、こちらも何も言えなくなる。というか、ユーリも脱ぐんだ。かなり裸を見てみたい欲求に駆られるけど、まだ大事なことを言っていたよね。
「ってキ、キス?! 濃厚って?! それでホントに同期されちゃうの。え、いや待ってよ。そうだわ、確かに魔術師の回路を繋げる儀式には、とてつもない危険が伴うものか、ちょっとエッチなものがあるって聞いたことある気がする。それ? それなの?!」
真っ赤になって俯いてしまったユーリが、静かにこちらの詰問に同意するように、小さく首肯する。
「あ、後、少しは触らないといけないの」
「うん! もうこうなったら、どこまででもやっちゃう。アレガドウシタノ本番さえ要求されなかったら!」
言っててこっちが恥ずかしい。流石にユーリはそこまでは言ってない。はず。後、私も自分で何言ってるのかよく分からなくなって来ている。
「じゃ、じゃあ脱ぐわよ。そのあっち向いてて貰える。ってユーリもだったよね」
そう言い、私達は回れ右して、お互い背を向け合う。
それにしても、裸で抱き合うとか。キスとか。そりゃあ、私もユーリみたいな美人はいいなぁと思ってたけどさ。
女の子として、それを軽々しくやっちゃうのは、私もユーリも本来はどうなのって話じゃない?
だって、もっと貞操観念はちゃんとしてなくちゃいけないわよ。性解放だなんだって時代だけど、自分の体はもっと大切にって、先生にも言われてたわよ、私。安易に決断するべき行為じゃないのよ。
でもでも、もう今は覚悟を決めるしかないのよね。ユーリに色々されたり、ユーリの肢体を見る興味の方が勝ってしまって、私は恥ずかしながら、ゆるゆると服を脱いでいく。
私も脱衣している間、視界の向こう側でも衣擦れの音が聞こえて来る。
や、ヤバい。ドキドキして来た。変にパンツが湿っちゃうんじゃないかってほど、ユーリの脱衣シーンを想像してしまいそう。
服を脱いで下着にも手を掛ける。お風呂に入る時は、女性同士でも平気だと思うけど、こんな時は何でこんなに緊張するんだろうかと困惑する。そう、二つは同じはずなのに。
全部脱いでしまって気づくのだけど、やはり少し陰部は濡れている。これはすぐに悟られてしまうだろうし、聞かれたら素直に興奮してしまっていることを白状しよう。生理現象なんだから、恥ずかしがりすぎることはないはずなのよ。
「い、いいかしらね。・・・・・・ユーリ、いいわよね?」
「うん・・・・・・。見ていいよ、ソラ」
その言葉がどれだけ甘く、私の耳に響いたかを誰かに分かって貰えたら。とにかくその魔女の誘惑に応じて、私は生唾を飲み込んでから振り返る。
「あ・・・・・・!」
ベッドの中央に座り込んで、枕を抱いているユーリ。やはり長生きしてても、羞恥心は人間と同じなのね。そこは少し安心。
でもそれ、私の枕なんだけど。
そんな陶磁器のように美しい肌に、私の枕がギューッと羽交い締めにされているかと思うと、いけない気持ちになっちゃいそうよ。
「ソラ、やっぱり体は小さくても、綺麗な肌をしてるわ。手入れがキチンとされている感じがする。あまり日焼けなんかもしてなさそうだし、ううんそれ以上に胸の形も凄く綺麗よ」
「え? え? あ、あの・・・・・・」
「あ、靴下もちゃんと脱いでね?」
「え? あ、やっぱりそうよね。素足か・・・・・・。え、うん。そっか」
恥ずかしくて上手く返事が出来ない。咄嗟に何か返事はしてしまうのだけど。そう、私なんてユーリに比べたら、肌の白さなんて大したことないのに。
そ、それに、胸が綺麗だなんて初めて人に言われた――。
――――やだ、凄く嬉しい。
歓喜と興奮を隠せないまま、私もベッドに座って、向き合う。
ユーリは枕を脇に置いたので、魔性の魅惑の力が作用したかのように、そのスタイルの良さが際立つ、素肌がこちらに露わになってしまい、全てが私の目に見えてしまう。
あ、ああああああ。と理性が崩壊しそうな音がする。私は、こんなこの世のものとも思えない魅力の持ち主とずっと一緒だったんだね。その生まれたままの姿を見て、とにかく感動してしまった。思わず眼鏡を整える仕草をしてしまう。外してるのに。
――いけない。
そう考えてたら、余計に濡れてしまう。素足になってから入った布団を少し汚してしまったかもしれない。隠せない体の反応はしょうがないから、開き直ってそのままでいようか。
「ソラ。こっち向いて。ジッと眼を見て。ああ、やっぱり。チャームの力が効いてるみたいね。だけど、今はそれでもいい気がする。ソラ、わたし、貴方のことが好きで好きで堪らないかもしれない」
そっと私の頬を両側から手で包むユーリ。逃げられずに直視してしまうけど、そんな潤んだ瞳で見つめられたら、私も思わず思ったままを言ってしまう。
「私もユーリが大事よ。私の性質を看破しても変わらずに接してくれるし、何より今までと違う刺激を貰えた。これからもずっと付き合っていけるなら、一緒に行動していきたいくらいなの」
ふふ、と微笑むユーリ。ヤバすぎる。綺麗なお姉さんに、私がこれほど弱いとは。
その紅い潤んだ瞳が蠱惑的で、私は陶然としてしまい、ギュッと強くその体を抱きしめてしまう。
そうすると、胸に胸の感触が。当たっているのよね。
それにユーリも裸足であって、足が絡まっているのが分かる。とっても恥ずかしくて、多分顔は真っ赤になっていた。でも、このユーリの感触は――。
――――温かい。これが人の温もり。
先生との師弟関係は、それほど濃密な家族って感じでもなかったから、思わずその体温に安心してしまう私がいる。
「ソラ、本当は凄く怖かったのね。その恐怖から目を逸らさないといけない人生だったんだね。ええ、でももう大丈夫よ。わたし達は支え合っていけるわ」
抱き合ったまま、ユーリは私の頭を優しく撫でてくれる。安心感からか、つぅと涙を流していた。それだけ緊張の糸が張り詰めていて、今それがほどけたのかもしれない。
「う、うん。こほん。じゃ、じゃあ始めましょうか。ソラは嫌じゃないのよね?」
咳払いして雰囲気を戻そうとしてくれるユーリ。声すらも極上の砂糖菓子の様な甘みを帯びているように聞こえているようだ。
「う、うん。キスしてもいい。寧ろ、私がユーリとしてもいいのかな、って感じで」
「わたしはいいのよ。ソラの唇に触れたいって思ってるのだから」
私の唇をそっと撫でるユーリ。私の口はあわわわと、ビクリと反応してしまう。
そうして、見つめ合う私達。
熱を帯びているのはお互い様だろうけど、ユーリのポーッとしたみたいに熱気を含んだ熱い視線に、こちらも同じようになっていたかと思われる。
「ん・・・・・・んちゅ。ん。ん。むにゅ」
唇と唇で求め合うように、キスをする二人の女。
片方は少女なのに、こんなことしちゃって大丈夫なの、と冷静なツッコミを頭の中でするのも忘れて、舌と舌も絡み合い、濃厚に激しく互いの熱を確認し合うように、長い間ディープキスをしていた。
足も縺れているのだけど、私の小さい足と呼応しているかのように、ユーリも意外に可愛く小さい足で、足の感触だけでもこっちは凄く敏感に感じてしまう。
そ、と手を当てられる。左胸の付近だ。
そのユーリの柔らかく美しい素足と同じように、小さくて細やかな手に触れられると、体と心の奥底まで直に入れられていく様な鋭敏な感覚になってしまうので、堪らなくなって喘いでしまう。
恐らく、儀式の準備も忘れていないのが分かる。だから、そのまま我慢しようと思っていたけれど、我慢出来ずに素のままの甲高い声を上げてしまう。
嬌声の様な媚態の様な――――。
「んあっ。ユ、ユーリ。気にせず続けてくれていいよ。儀式には精神が同期していかないといけないのよね」
「ええ、失礼するわよ、ソラ」
その手がお腹の辺りにも向かい、何かを描くかの様な手の動き。
どうもここまでされたら、下半身がモゾモゾして来ちゃって、切なくなってしまう。でも私はその性的な欲望に、甘い感触の電撃の様な熱の連続に、毅然と耐え続ける。
もう一度、ユーリが私と唇を重ねる。
すると、何か大きな紅い器の様な光に包まれて、私の小さな炉心を呑み込んでしまうように、全ての魔力の流れが一つに合流していく。
これが他人の魔力が入り込んで来る感覚なのかしら。
でも魔女だといっても、星の守護者でもあるので、悪い気分にはならない。魔力の性質はとても美しく濁りすらない。
それよりも、巨大すぎる器と流れる魔力の量に、精神的高揚にある私の気分が酔ってしまいそう。
紅い、まるで地球の核の部分が燃えているみたいな、そんな熱い力。血潮の燃える成分が流れ込んで来る感触。
私の裸の心が、ユーリに触れられて、そして幼い時の封印していた、暴走していた、あの恐ろしく、この世の終わりだと感じて絶望していた、あの時の生の質感を思い出す。
私は、それに触れて、途端にパニックに陥りそうになる。
――――おかしいな。あのことはもう先生に救われた時点で克服したはずなのに。まだずっと尾を引いていたのかな。
「大丈夫。それを乗り越える為に、今こうしているのよ。気をたしかに保っていて。ソラは強い女の子だって知ってるから」
ユーリの激励。その声が力をくれる。私は未来に向かって生きていていいんだ、という無限の肯定。
そうして、紅い光と温かなものに触れている、強い強いそのユーリの魂の形に包まれながら、いつしか私は気を失い眠りに落ちていった。
赤ん坊が何も不安に思わずに、安らかに眠るのをまた再現しているように。
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