第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に6

 家の鍵はポケットに入れていて、そこからユーリがもぞもぞやって取り出し(くすぐったかったけど、しんどさでそんなに感じなかったかも)、そのままソファーに抱かれて連れて行かれ、優しく寝かされた。


「待ってて。今紅茶を容れてあげるから。甘いミルクティーがいいわよね。少し休まないと。ソラ、随分辛そうよ?」


 ああ、そっか。確かに私は今ぐったりしている。気づけば、眼鏡もまだしていない。


「はい。これでしょ。眼鏡、付けてあげる」


 そう言い、眼鏡を目に装着してくれる。これがあると、おかしいわね、安心感が違う気がして来ちゃう。


 ユーリはニコと微笑んでから、台所に行くので、寂しさで死んでしまいそうな気がしてしまい、胸がズキリとした。今はちょっとでも長い間、傍にいて欲しい。そんな欲求がどんどん膨らんでしまう。


 ボンヤリしていたら、今日のことが思い出される。シン・クライムはまだ残っている大きな力で、魔術式の起動でコトを為そうとしている。


 これを止められるのだろうか、とまた不安な気持ちが押し寄せる。


 私が最大限にこの魔眼で、ユーリの手助けをしなくてはいけないのだけど、今の状態じゃそれもままならない。

 果たしてユーリが言っていた儀式で、そんなに劇的に改善するものかしら。魔力の逆流で、かなり精神を消耗する濃度も使う度により濃くなっていってる予感もするのよね。


 そういえば、あのイニュエンドゥとかいう変な女の子を最近見ないわね。何か歪みを正す存在らしいけど、あれもまたこんなことになって動くのだろうか。

 そんなことを考えながら、少しばかり微睡んでいたかもしれない。


「ソラ、ソラ。お茶は熱い内に飲んだ方がいいと思うわよ」

「ふぇ? あ、うぅん。そうね。頂くわ」

「ほら、ヨダレ拭かないと。こんな所は、子供って感じね。ふふ、可愛い♪」


 何やらご機嫌なユーリ。でも私は口元を拭かれて、かなり恥ずかしい。寝ている姿を見られるのはもう慣れてしまったかもしれないとはいえ。

 いやそれにしても、起こして貰うのは初めての体験ね、と新鮮さも感じている私なのだけど。


 とにかくお茶を貰おう。こくこくとちょっとずつ飲む。

 まだ温かいし、熱いのは割と苦手でもあるので、そんなに一気には飲めない。

 ミルクとお砂糖の甘さがちょうどいい感じに胸を満たす。これでかなり体力が回復した気分になりそうかも。


「良かった。多少は落ち着いたみたい。その分だと、相当戦闘行動で疲弊してるのね」


 キミエが戦闘要員に駆り出したがらなかったのが分かるわ、と一人納得している。


 確かに私って、機関では見捨てられているみたいなポジションなのかもしれないな。改造人間の処置を本気で検討した方が役に立つのかなぁ。


 ショボンとしている私に向かって、ユーリは何やら意味深な怪しい発言と共に、私を勇気づけて励ましてくれる。


「大丈夫! サポートは最後までやるって言ったでしょ。人生の先輩をちょっとは信用して? 恥ずかしいかもしれないけど、すぐ終わるから」

「なに、その天井の染み数えてる間に終わるからね、みたいな言い方?! 恥ずかしいことって、また裸になったりするの?」


 けほっけほっと咽せてしまう私。この前より何か嫌な予感がする。するわよ。


「・・・・・・うん。その、ね? 全部、脱いで欲しいの」


 全部と来たか。それってどこまで全部?



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