学校の話



 二人の『男子高校生』が、朽ち果てた『廃校舎』のグラウンドで話している。



「あ、『理科室』じゃん。最近よく出歩いてるよな」

「まぁな、『運動場』は相変わらずか?」

「あー、うん、まだ校舎内には入れないな」

「そんなお前に朗報だ、また『校長室』が食い物にされてる。そっちにも何人かは行くんじゃないか?」

「それは嬉しいなぁ。野球部が来てくれたらもっと嬉しいけど」

「俺は女子高生が来てくれれば嬉しいんだがなぁ……」

「それだけ聞くと変態だな!」

「うるさいぞ」

「『図書室』は?」

「いつも通りだが……あいつばかり贔屓されてないか?」

「オレ、『図書室』のことそんなに嫌いじゃないけど」

「『女王』のお気に入りってだけで虫酸が走る」

「まぁ、そこは仕方ないだろお互い。『女王』様をもう一度殺せるってなったら正直興奮するだろ?」

「……まぁそれは、って良いのか? そんなことを口に出して」

「『女王』様は今、騎士様のお世話で忙しいからなー。オレらの妄言なんて聞いてる暇ないだろ」

「あぁ……正直アイツを一番殺したいな……」

「ははは、わかるー」

「しかしこっちに迷い込んできたら守ってやらなきゃいけないんだろう?」

「流石にオレらがついてて事故死じゃあ『女王』様は納得しないだろうし」

「はぁ……」

「まぁお互い頑張って騎士様以外の人間殺そうぜ、『女王』様のために」

「『女王』のために、な」



 同じ頃、二人の『男子高校生』が、朽ち果てた『廃校舎』の中で話していた。



「あれ、『図書室』君だ。おーい、おーい」

「何ですか、『家庭科室』」

「うわ、ボクは君づけしたのに呼び捨てにされた」

「僕は敬意を払える人にしか敬称はつけないと決めているので……」

「喧嘩を売られてるのかな?」

「むしろ用事があったのはそちらでは?」

「いや、特に用事はないんだけど、珍しいなって」

「最近たくさん取り込めたので、多少出歩けるようになったんですよね」

「いいなー、あれでしょ。『校長先生』がひどい目に遭ってたヤツ」

「それですね。血肉だけでも量があればそこそこ得られるものはありますので」

「ボクには何にもくれなかったんだよ!」

「まぁ、『校長先生』が弱ってるとこの『廃校舎』全体が危ないですからね……優先度の問題では?」

「ボクだってもっともっとほしいのに!」

「君、何だかんだ言いながら一番殺してるじゃないですか……」

「良かれと思ってお菓子あげてるだけだもん! お腹空いてて可哀想だなって! 結果的に死んじゃってるだけで!」

「彼の怖い所はこれを心の底からそう思って口にしている所なんですよねぇ……」

「何か言った?」

「いえ、新作のお菓子はありますか?」

「あるよ!! 食べる!? 嬉しい!!」

「まだ食べるとは言ってないんですけど」

「春だからピンク色のマカロンとね!! 黄緑色のカップケーキとね!! あ、カップケーキには黄色いちょうちょの砂糖菓子をくっつけてるんだ、可愛いでしょ!!」

「僕はあまり可愛いもの好きではないので」

「でも『アリス』は可愛いもの好きだと思うなぁ、お菓子は食べてくれなくなったけど……」

「これまでもこれからもお前のお菓子を彼女が口にすることはないんですけどね」

「三回くらい食べてくれた思い出があるんだけど」

「記憶の捏造ですか? 今すぐ訂正しておいた方が身のためかと」

「おっかしいなぁ……食べてくれたと思うんだけど……あ、今のは別におかしとおかしいをかけた訳じゃないよ! 『校長先生』みたいなクソギャグは寒いだけだもんね!」

「無邪気に無関係な人を刺しますね……」

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