第3話 悪魔たち
本田賢太郎は小学生時代の良平の友達だ。
小学校4年生で同じクラスになり、学校が終わると毎日のように一緒に遊んでいた。何をして遊んでいたかはあまり覚えていない。そんな仲の良かった賢太郎とあまり遊ばなくなったのはいつだっただろう。中学校は同じではなかったから、その時にはもう仲良くしていなかったのは確かだ。小学校の高学年の時はどうだっただろう。卒業式の時はいただろうか。思い出せない。
そんなことを考えながら、前を走る賢太郎に置いて行かれないよう、走った。余裕というよりは錯乱に近いかもしれない。
「はあ、もう大丈夫だろう。追って来ていないみたいだ」
良平の腕を掴んで走り出した男、本田賢太郎はあたりを確認して道の脇によりかかった。
「賢太郎だよな。なんでここにいたんだ?」
少し落ち着いてきたのか、良平が問いかける。
「もしかして、何か知っているのか?あれは何なんだ。急にナイフを持った女が出てきて、それで・・・」
賢太郎は黙って良平の言葉を待つ。
「俺の友達が血を流して倒れてた」
「俺のことも殺そうとしてた」
「落ち着けよ」
賢太郎が口を開く。
「俺だって驚いているんだ。襲われているのが良平だなんて気がつかなかった。何から話したらいいか、整理できてないんだよ」
「そうだ、警察。警察を呼ばないと。救急車も」
慌ててスマホを取り出す手を、賢太郎が止める。
「やめろ。警察は意味がない」
「どういうことだよ、俺の友達が通り魔に切られているんだぞ。早く呼べば助かるかもしれなじゃないか」
「駄目だ。あそこにいた女、あれはヒーローだ」
「ヒーロー・・?」
良平はナイフの女の姿を思い浮かべる。どこかで見た姿だ。今日家電量販店で流れていたニュース。
「スナイパーガール」
「そうだ」
「どうしてヒーローが勇輝を刺すんだ!ヒーローが倒すのは悪魔じゃないのか!?」
賢太郎は立ち上がり、歩きはじめる。
「とりあえず、ついて来いよ。このままじゃお前も危ないし、話も長くなるからさ」
* * *
良平たちの通う高校は郊外の都市部から少し外れた場所にある。電車を途中で降りて寄り道すれば多少栄えた街もあるが、進む方角によっては急に田舎の景色になる。
良平と勇輝が寄り道をしていた繁華街からしばらく歩くと、廃屋が並ぶ場所がある。人口の現象によりそのまま捨てられた家だ。
賢太郎はその中の1つの家に入っていくと、その廊下の先、地下に続く階段を降りて行く。
「なんだここ。こんな場所があったのか」
「何十年も前に捨てられた家らしい。中は結構広いぜ。俺たちはこういう場所をいくつも見つけて暮らしてるんだ」
「暮らしてる?」
階段を降りると、学校の保健室くらいの広さの部屋に7人ほどの人が集まっていた。
「ついたぜ、紹介するよ。“悪魔”と言われる人たちだ。」
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