第10話
「来週から中間テストだぞー」
「ちょ、プリント足りねぇ。見せてくれ!」
「冬休みおわんの早くねぇー?中間テストさぼってやるか?」
時が過ぎると人が一人失踪した程度の出来事は世間から忘れ去られていた。もとよりこいつらにとっては赤の他人より明日のわが身、という事だろう。リューを見つけてみせるといった刑事は今リューの捜索を頑張っているのだろうか?それとももう諦めたのだろうか。
「くそっ。警察は何のためにいるんだよ!」
思わず愚痴が出るが、警察に文句を言ったところでリューが見つかるわけでもない。わかってる、分かってはいるはずだが、行き場のない怒りを体の中に留めておくのも限界だった。その時だった。
プルルルッ
ふいに携帯電話が鳴る。リューからだろうかと期待して急いで相手の名前を確認するが、母からの電話だった。仕方なく電話に出る。
「勝!成績表見たけど、後期の成績酷いじゃない。こんなので2回生になれるの?」
「あー、母さんごめん。ちょっと勉強に集中できなくてさ・・・」
「・・・そう。で、リュー君は見つかった?」
「・・・・・」
「まぁ事情は分かったけど、今は貴方の学業を優先しなさい」
「っ!でもっ・・・」
「勝。貴方が学校で授業を受けられるのも、マンションに住めるのも、ご飯を毎日食べれるのも、全て父さんが働いて仕送りしてくれるおかげなのよ?貴方も一人では生きていけないのよ」
「・・・・・」
「辛いでしょうけど今は耐えなさい。リュー君の分まで勉強して、そしていつかリュー君が帰ってきたときにプリントを見せて、おかえり、待ってたんだよ、休んでる分の間のプリント取っといてやったぞ、って言ってリュー君を支えてやりなさい」
母さんの言葉が空っぽの体に突き刺さる。もしかしたら今俺に出来ることが何かあるかもしれない。警察任せにするんじゃなくて、リューの目撃情報を少しでも多く集められるかもしれない。でも、しがない大学生に何ができるのだろうか。自分一人では生きていくことさえままならないのに・・・。
(リュー、俺は今人生に迷っているよ。リューは今どこで何をしているんだ?)
自分の気持ちを完全に殺すことなど出来るわけがない。親友への未練は消えることはない。丁度いい時間だ。今夜は屋上に登ってみようか。綺麗な日の入りが見れるかもしれないから。
_____
大厄災
「それはほんの神の悪戯だ。魔法の威力や精度が妖精の気分に左右されるように、その大厄災も神の気まぐれで発生した。かつて人間の国から追放された魔族が人間への復讐心を抱いていた時、神はあろうことかその魔族の王である魔王に力と代償を与えた。代償はある程度の期間ごとにこの星、ガダードに厄災を起こすというもの。ともすれば星が滅びるほどの危険性を含むその代償を与えられた初代魔王は、破滅的な厄災がおこる前に人間の預言者に見つかり討伐隊により討伐された。しかし、この神の呪いは魔王候補にそのまま引き継がれていった。魔王の任命は魔族にとって生贄を意味する。」
世界七不思議
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