2.ようこそ、森の奥へ
朝食をちゃんと食べた私は前からきたかった、グレイ公爵家の裏にある森に来ている。この森は昔からグレイ公爵家が守ってきた森でグレイ公爵家以外のものが入ることを固く禁じている場所なのだ。
だから裁縫が苦手なべリス姉さまや馬術が苦手なエド兄さまが先生から逃げるためこの森に来ているのをよく見ているので一度来たかったのだ。まあ、許された使用人は入れるからすぐ姉さま達が連れ戻されるのを見るのですけど。
考え事をしていたらずいぶんと遠いところまで来ていたようです。この森をグレイ公爵家が守っているには理由があります。それは、いま私の目の前に建つ神殿におられる神に近い方を良からぬ者から守るためなのです。
この神殿はグレイ公爵家の血を受け継ぐ者しか開けることができないというのも理由にあげられるのでしょう。
「こんなにきれいなとこがあったのね。ちょっとだけなら入っていいよね。」
コツコツ…
”こっちおいで……”
「え?なにかきこえる。こっちから?」
そこにはフクロウの像が飾られていました。2歳のアイリスの体の3倍はありそうな大きさで見上げないと顔が見れないほどでした。
「こんな大きな子いたらもふもふしほうだいだな…」
フクロウの像だがどんな感じなのか気になって触ってみると
[珍しいお客さんね。お嬢さんは誰だい?]
ぱちくり………
アイリスは驚いて大きな目をさらに大きくして黙ってしまいました。
なぜならフクロウの像から声がするのです。
[驚かせてしまったかい?久しぶりにわしを呼び起こす力の持ち主にあったのう。ところでお嬢さんの名前は?]
「わたしはグレイこうしゃくけ、じじょのアイリス・グレイ、2さいでしゅ」
[ふふふ、かわいい子だね。そうかグレイ家の子か。]
「フクロウしゃんのおなまえは?」
[わしの名前はミー・ワシミミズクだよ。]
「よるのおうしゃま?」
[そうさね、昔はそう呼ばれていたこともあったね。]
グレイ公爵家には子供たちが寝るときに聞かせるお話がありました。
それはシャノン王国がまだそこまで豊かな国ではなかったころ一人の少年がそれはそれは美しいフクロウを従えて国王様のところにきました。
その少年は国王様の目になり王国中の情報を集めだし王国が発展できるように助言していきました。少年が助言したものはどれも王国が発展することばかりで急発展したシャノン王国には他国からの移住民が増えてきました。
違う人種が混ざることは争いの火種になるのですが、少年が従えるフクロウはどんなに暗くても人が何をしているのか見えてしまうため争いがおきてもすぐに対処できたのでした。またそのフクロウは未来を予言でき少年が王国の発展するように助言できたのもそのお陰だといわれました。
そんな王国を発展した少年とフクロウは国民から崇められ、少年は公爵の位と共にシャノン王国の宰相になり、フクロウは夜の王と呼ばれるのでした。
その少年はグレイ公爵家の祖先でフクロウはミー・ワシミミズクという名だった。
[久ぶりにグレイ家の子と話したわ。アイリス、礼にそなたの未来を見てやろう。]
「おはなしのとおりね!」
未来を覗いた夜の王は彼女のこれからを知り悲しくなりました。
なぜなら……
[アイリス、そなたそのままいくと婚約者になる者から婚約破棄を言い渡され国外追放されるよ。]
「え?どうして?」
[婚約者になるやつが好きになった伯爵令嬢にそなたは嫌がらせをした。それは婚約者を愛しての行動だったのだが、度が行き過ぎたのか証拠をだされ言い逃れができず、呆れられた公爵家の者からも見放されることになる。まあ、婚約者がいながらほかの女とイチャつく男の方がどうかしているとわしは思うがな。]
「わたしお家でていくの?」
[このままいくとそうなるな。]
アイリスのかわいい目からは大粒の涙がこぼれていました。
「そんなのいやだ!わたしはもふもふできればいいだけなの!おうこく追いだされたらどうぶつしゃんとおわかれしなきゃいけないのよ」
シャノン王国では王国内で罰せられた者は魔法の源である〈ガルディエーヌ〉を取り上げられるのです。そうなればアイリスの大好きなもふもふライフとは程遠い人生が待っているといえるでしょう。
シクシク……
[賢くてかわいいアイリス。泣かないでおくれ。わしがそなたの〈ガルディエーヌ〉になりそばでそなたが安心できる人生を送らせると誓おう。]
「グス…そんなことできるの?」
[ああ、安心しなさい。わしはそなたが気に入った。]
「アイリス様ー?どこにいるのですか?」
[アイリス様ー!ハンナ、神殿の方からアイリス様の匂いがするぞ]
心配して見に来た侍女ハンナとユウの声だ。
[わしのかわいいアイリス、時間が来てしまったようだ。そなたの体力がもたなくなっているし、迎えもきたようだ。来年の〈ガルディエーヌ〉選定式までに王国の事や他国のことをたくさん学んで待ってておくれ]
「よるのおうしゃま……まって…ケホケホ」
アイリスの体は重くなり動けなくなった。さらに視界がだんだん暗くなり夢の世界に飛んで行った。
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