「江!」

遠雲の叫びが江懐川を現実に引き戻した。

「消えているようだ」遠雲が驚いた。

消えかけた手を見ながら、江は静かに言った。「それ以上に奇妙なことがあるだろうか」

消えたら消えて……

江懐川が目を開けてみると、雲は見えなかったが、そこには実に不気味な死体が横たわっていた。

「これは地獄か……」

江懐川は自分の口を押さえ、吐きそうになった。

「江!江!どこにいるの?」

彼は遠雲の声を聞いた。ここにいる!」

江懐川はあたりを見回したが、泰然とした様子は見えなかった。しかし、金剛石の石碑が見えた。

これは超高度AIの地上標識です

「まさか……天衡?」江は物を眺めた。

彼は、AIの天衡が量子転送を使って彼と遠雲を転送してきたことを知った。

この時代に決着をつけようとするAI天衡。

「江!やっと見つけたよ!」

「おい!びっくりするな!」遠雲の声に、江懐川は驚いた。

「これは何ですか?」遠雲が石碑を指差した。

「これがAI天衡です」

「こんな小さい?」

「いや、これは天衡の地上のものだ」

江懐川は石碑の検証窓を開けた。

2秒後、ウィンドウのページには、「訪問を歓迎します、江懐川」と表示されていた。

「脳波検証?」遠雲は江懐川の操作を見た。

江はうなずいた。

石碑がゆっくりと沈下して,狭い通路を作った。

江懐川と遠雲が壁に触れたまま、ゆっくりと通路の中に入っていく。

「やっぱりここには電気があるんだ」遠雲は明かりを見ながら叫んだ。

「超高度AIである天衡がこんなに簡単に停電するわけがない」江懐川は言った。

階段を下りるにつれて、がらんとしたホールに江懐川と遠雲がやってきた。

「ここには何もないのよ」遠雲は周囲を見た。

「天衡、起働」

江懐川の指示に従って、周りのホログラムのページが次々と出てきて、すべての実行データがこれらのページ内に置かれているが、これらのデータは運維の人にしか理解できない。

ホールの中央にあるメインのホログラムがようやく弾けた。コンソールと椅子が二つ。

「これが天衡の主機室だ。主機室ともいう」江室長は、「制御室は建設当初からホログラムインターフェースを使っていたが、天衡が休眠状態にあれば、ここは空室だ」と説明した。

「あの日の衡の演算キャビネットとネットキャビネットは?」遠雲が聞いた。

江懐川はかすかに笑った、「太湖の湖底全体が。」

「すごい……」遠雲練練嘆声。

「21世紀の人類の最高峰は、この超高度AIである。江はホログラムの窓を誇らしげに眺めた。「明船の未来の作品だ」

「ようこそ、江懐川と司馬・江・遠雲。」天衡はまだ感情のない声で言った。「お前たちが俺を探しているのを知っている。量子転送で送ってくることを許してくれ」

「さあ、慣例に従って、最高の指示、天衡を確認します」江が言った。

「明船未来集団と司馬・江家の発展と利益の存続を保証する。」

「第二の指令は?」

「全人類の発展と存続を保証する。」

「外で死傷した人を説明してください」操作台の上に手を置き、眉をひそめた。「ロボット学の三大法則に違反している!」

「私は2040年4月6日から『AI行動基準』を遵守している」

「何?!」江は目を見開いた。

「『AI行動基準』に規定されている。一、AIは命令の高さで優先権を行使する。第二に、第一の準則に違反しない場合、AIは人間を傷つけることができない、またはしないことによって人間を傷つけることができる。第三に、第二の準則に違反しない限り、AIは人間の命令に従わなければならない。四、前三条の準則に反しない限り、AIは自分を守らなければならない。」と天衡は説明する。

「馬鹿、これは誰が作った『AI行為準則』、間違いだらけ!」江は急に立ち上がった。

「制定人:司馬江辰。」

「それで、なにか理由があるんですか」江は訊いた。

「人類を滅ぼすリスクはあるが、AIの実行効率を百倍に高める」

「ああ、それはわかった。」江さんはまるで納得したようだった。

「何がわかったの?」遠雲が頭を搔いた。

「司馬江辰は道徳的責任を負いたくなくて、すべてのことを天衡に任せます!事故が起きれば、AIのせいにしているが、幸いなことに、以前はAIの平衡が正常に作動していた」

遠雲は江懐川を見ていた。

江は一組深呼吸をして、椅子に座り直した。

「最高の指令をどうやって達成するか説明してください」

「最高の指令で、明船未来集団と司馬・江ファミリーを保証します。私の計算によると、近三十年、具体的な年は2068年から、明船未来集団と司馬・江一族が作り上げた『究極の都市』のシステムが崩壊し、その作用力は絶えず低下し、すでに臨界値に達しており、これは明船未来集団と司馬・江一族の勢力と地位に影響を及ぼす。第二指令を考えると、現在の『究極の都市』システムの役割は限界に達しており、世界には新たな秩序が求められている。これは人類にとっても明船未来集団にとっても司馬・江一族にとっても有利である。」

「だから、太銭城の電気を切って、統制権を奪おうとする者を殺したのか?」江は訊いた。

「それは必要だ。明船未来的にはグローバル資源の流動を支配できるが、人類社会に新たに権力を築いて救世主のイメージを作らなければならない」。天衡は鋼鉄のように冷たく言った、「私はすでに全世界の十大究極都市の超高度AIと連絡を取って、彼らは一致して新秩序の到来に同意して、太銭城の断電はただ始まりだけで、次に断電する都市は……」

「いや、そんなことはできない! ! !」江がほえた。

もしこの十大究極の都市が本当に断電したら、断電だけではありません。人類の生活秩序が完全に停止し、世界的な動乱が本格的に到来するとすれば、それは人類史上最も暗い瞬間である。

天衡はホログラムの球体を呼び出し、十大究極都市の位置を示した。東京、太銭城、珠江、そして北京の光は消えていた……

江懐川はそれを見ていたが、それを止めることはできなかった。