初めてのクエスト 棚ぼた編
異世界に転生して現地で出会った中性女子と初めてのクエストで爆薬を使用したら地底湖に落ちて魔剣を発見しました。
現状を端的に現すと前世でのライトノベルの長文タイトルのようであるが全て事実であり、現実は非情である……。
何を言っているのかわからないかもしれないが自分でも訳がわかっていない。
超展開だとかテンプレ構築やテンプラ作品だとかそういったチープなトリックなんかじゃあ断じてないもっと恐ろしいものの欠片が目の前に突き刺さっている。
「何をブツブツ言ってるの?」
「え……。あ、いや何でもない。ちょっと色々なことが起こりすぎてて処理が追いつかなかっただけだ」
思わずどこぞの世界的な腕前でスペース移動を喰らったピエールさんのような状態になってしまったがトロンに話しかけられて現実に戻ってくる。
「と、とりあえず一回水から上がろうか」
「それは賛成だけど……。どうやって?」
トロンの言うとおり足がつくほど浅い箇所があるとはいえ周りは岩壁で滑り落ちてきたところまで登れそうな所は見当たらない。
「そこは大丈夫」
ツルハシを浅瀬に突き立て『土の
そして岩壁に横付けし、そのままツルハシで壁を崩して階段を作成する。
「あー思ったよりも急になったから気をつけて」
キツイ急斜面の階段に手を差し出すとトロンはなんとも言えないような表情でノロノロと金属の手で握り返す。
「うん、スゴイんだけど思いついたってやろうと思う?普通……」
「まぁまぁ」
そんなやり取りをしながら一度水からあがり、トロンの収納魔法に入れておいたキャンプ用の装備で暖を取る準備をする。
「さっきの言葉を返すようだけどトロンの収納も大概常識外れだよね。普通だったらこんなのは大所帯のパーティか大規模なキャラバンくらいじゃないと無理だし」
「色々入れてるから」
実家で行われた母を始めとした規格外の人たちによる野営訓練(サバイバル形式)だと多人数の輜重隊で色々分担、兼任するか場合によっては現地調達しないと行けないから大変だったことを思い出しながら薪、火種用のティンダーロッドと並べて火を起こすと二人して服と体を乾かし始める。
「で、どうするの?ヤッパリそれで掘るの?」
「学長からはある程度好きにしていい、持って帰っていいと許可は貰っているからそのつもりだよ」
体を炙りながらトロンの質問に答え、ダイナマイトポーションを何本か用意しつつ自分の考えを話す。
「じゃあ始めようか」
粗方乾かし終わり、軽い休息を挟んだあと作戦を実行に移す。
先ずはトロンから入り口で使ったものよりも太く大きいポーションの包みを受け取り、魔力を流して地底湖へ向かって投げ入れる。
さっき使ったのが爆竹ならこちらはまさにダイナマイトというべき代物で威力も衝撃も段違いのそれは
地底湖に水柱とそれに伴う飛沫を発生させる。
視界がクリアになると湖面には生息していたであろう小魚や水棲のモンスター達が腹を上にして浮かびあがる。
「さしずめポーション式ダイナマイト漁法といったところかな」
「何それ、後で教えて」
昔読んだ本で出てきた爆発物を水中で起爆させて一気に大量の獲物をゲットする漁法、いわゆる『ボカチン漁法』そっくりの状況にふと呟くとトロンは眼をキラキラさせる。
普通の着火式ダイナマイトでは導火線の火が水で消えてしまいこういった使い方はできず、トロンの作った魔力で起爆するポーションを使ったダイナマイトもどきだからこそ出来るためコレである程度水中の障害を一掃でき、まだ息があると思われる一部のモンスターも衝撃で気絶しているか、生きてこそいるが瀕死の重症といった具合で水面に腹を見せてピクピクと蠢きながら浮かんでくる。
「今のうちにやるから何本かまとめてくれるか?」
「分かったよ。ハイこれ」
今しがた使ったものと同じポーション爆薬を4本ばかり受け取り、魔剣の元に泳ぐのだった。
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