第8話「その……外してもらえないかしら……」
「ちょっと、あんまりこっちに詰めてこないでよ」
「こんな狭いとこに引きずり込んだのはお前だろ」
……下着姿の美少女との距離が
なんかいい匂いするし柔らかいし吐息は近いし。いろいろよろしくない。
ちょっと事情があって、俺はランジェリーショップの試着室に入っているわけなんだが……
行き場も逃げ場もなくなった俺は、ただ無心で
「おい、俺はあっち向いてるから服着ろ」
俺は小声で
「それは……ムリよ」
「なんでだよ! お前そう言う趣味でもあんのか?」
「そんなわけないでしょう! 今つけてる下着が試着させてもらってるやつだから、外さないといけないのよ……」
なんで……もう泣きたい……。
「お客さまー。大丈夫ですか?」
俺が絶望していると、追い討ちをかけるように、カーテンの外から店員が声をかけてきた。
恐らくずっと試着室の中にいる咲良を気にして声をかけてきたのだろう。まぁ、その試着の中には俺もいるんだがな!
「あっ、すみません。もう少し大きいのをいいですか?」
だが、こんなのはこんなのは少しの時間稼ぎにしかならない。考えるんだ……なにか策を!
……とりあえず紫陽花御一行をこの店の外に出さなければならない。
「おい、お前紫陽花の連絡先わかるか? 電話で誘導できると思うんだが」
「そんなことしたらこっちの声が聞こえてしまうでしょ」
「そうでもしないとあいつらを外に出せないぞ?」
だめだ……俺にこれ以上の策はない。なかなか短い人生だったなぁ……。
「……こうなったら仕方ないわね。この上から服を着て、それから下着を脱ぐから……あっち見てなさい!」
「マジかよ……つか、それってノーブ……悪りぃ。何でもない」
事実を言いかけたところで睨まれてしまったので、もうそこに関しては気にしたら負けだな。
とりあえず、俺は言われた通り壁の方を向こう。言いがかりつけられてもやだし。
「いいわよ、こっち見て」
「おぉ」
俺は再び咲良の方に向き直った。だが視線は天井へ。見たら絶対ころされる……!
「見ても大丈夫よ。付けてるから」
「先にそれを言ってくれ。首が変な音立ててる」
俺は視線を元に戻し、首をコキコキと鳴らした。
「ねぇ、一つお願いしてもいいかしら?」
「なんだ?」
「その……外してもらえないかしら……」
「なにを?」
「ホック……」
「は?」
さぁ皆さんご一緒に……『は?』
この女はなに言ってんだ? 密閉空間でおかしくなったのか?
「ここ狭すぎて背中に手が回らないのよ! 早くして!」
「さすがに俺にそんな勇気はないんだが」
「警察に捕まるか外すか……選びなさい」
「よし、じっとしてろ」
さすがにその選択肢だと……ねぇ?
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