第7話🏙勇者は叫び続ける

「じゃ、さっきと同じところ行くよ、タダシ緊張し過ぎやって~!」

 本番まではあと5分なのにタダシは噛みまくっていた。

 ユカは堂々としていて呆れた顔でタダシを見ている。

 ユカはYouTubeにメイクの動画やゲーム動画をアップしているし、慣れたものだ。


 冒頭部分を話すことになっていたタダシの言葉をユカに任せるか?


「ユカ、タダシのところ代わりに変更していいか?」


「うーん、だいたい覚えてるから大丈夫だと思う、やってみる」


「オッケー頼んだ早速やって見て」

 そしてメッセージ動画は生放送で始まった。

 ◆◇◆◇◆

「皆さんこんばんは、私はユカです、隣にいるのはタダシです。

 これから大事なお話をします。

 信じて貰うことは大変だと思います。

 私たちは10年後の未来からやって来ました。


 信じられない?まったく同感です。私たちだって信じられなかった、でも事実なんです。

 2030年の私たちは今の皆さんに警告するために呼ばれました。

 今のままではもっとたくさんの命が犠牲になります。

 信じたくなくても事実なんです。

 中国の武漢から始まったこのウィルスは次第に世界中を闇の世界へと変えようとしています。

 それを手助けしているのが、今この動画を見ているあなた達なんです。

 緊急事態宣言が出されたにも関わらずたくさんの人達はいつものように出歩いてお年寄りや小さな子ども達、これから新しい命を生み出そうとしている妊婦さんにまで危険に晒そうとしました。


 人口が減るのを今のあなた達は知らない。


 でも私たちは知ってるんです。

そしてみんなの命を救いたいんです」


 いつの間にか涙ぐむユカの言葉に撮影している俺たちも言葉を無くしていた。


 今まで隣に立っていたタダシが興奮して叫んだ。


「あんたらの大切な人が、死んで行くんだ、今隣にいる友達や恋人、誰が死んだっておかしくないほどにこのウィルスは怖いことをわかってくれ!来年に延期されたオリンピックだって来年実現することがなかったことを俺たちは知っている、知っているんだ!信じてくれ!いや信じてください!信じてください!!!」



 ネットに張り付いていたアスカはこの動画が世界中で注目され出していることを知った、それは予想していた人数よりもたくさんだった。


 テレビからは街の様子が映し出されていてその動画を一生懸命見る人たちを捉えていた。


 ━━━━━━

 皆さんこんばんは

 予定されていた番組の時間でしたが、緊急速報をお伝え致します。

 たった今厚生労働省のホームページが乗っ取られ、未来から来たと言う人たちが現れて警告という名の違法行為を行っています。


 警察はその現場を探すと共にたくさんの警察官や機動隊を配置した模様です。


 ━━━━━━


「ヒロト大丈夫か?位置を特定されたらヤバいぞ」


 パソコンに向かって、恐ろしく早いタイピングを打っていたヒロトが手を止めて振り向いた。


「タケル……僕を誰だと思ってる?

 覚醒した僕は止められないよ」


 小さく手を振ってもう一度パソコンに向かうヒロトを見ていたアスカが呟いた。

「大丈夫!ヒロトを信じて!」


 タダシは叫び続けている、それは未来から来た俺たちの叫びなんだ。


その動画は全世界に映し出されてていた。

Twitterにはたくさんの応援コメントが流れている


「なんかホントぽくね?」

「やべぇーカッケー!」

「犯罪かもしれませんが、私もそう思います」

「救世主かも知れないぞ」

「てかユカって可愛い」

「俺の妹は今ICUで苦しんでる、コイツらが嘘を言ってない気がする」

「信じる、だからこれから助けてあげれるなら頑張る」


その動画は夜中まで続いていた。



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