第6話⚔️3人の勇者と2人の女神

 準備は整った、決行するのは20時に決まった。


 その前に夕飯を食べて腹ごしらえをすることになった、俺たちは今回は和食を選んだ、レストランで食べることも選べるのだけど、話し合うこともあることから部屋で食べることにした。

 刺身や炊き合わせ天ぷらなどこれも素晴らしかった、和食なんて家で食べるものしか知らないけど、全く別物で繊細な味付けが素晴らしい。

 絶品だったのは茶碗蒸し、大きな海老の入ったもので、出汁がいいのかあっという間に平らげた。


 美味しい料理を食べながらアスカは自分の思いを話し出した。


「私のおじいちゃんとおばあちゃんは例の客船に乗ってたんだあのダイアモンドプリンセス号、結婚30周年の記念にとずっと貯めていたお金を使って豪華な旅に出てコロナウィルスに感染した、そしてそれが最後の旅になってしまってん、優しくて大好きだったのに、私たちが協力してこのウィルスの広がりを止めたとしてもおじいちゃんとおばあちゃんは帰って来おへんけど、私のような思いをする人を無くしたいって思ってるのは確かやし、それが召喚された理由だと思う、親友を巻き込むことになったのは申しわけないと思うねんけど」


 俺たち3人の中ではヒロトが、ユカとアスカの中ではアスカが、コロナウィルスのために大切な家族を亡くしていたんだ。


「アスカ何を言ってんねん!私は巻き込まれた事を後悔なんてしてないよ、親友なんだからむしろ喜んでる、てかこの茶碗蒸しめっちゃ美味しい、みんな食べた?」


「ユカありがとう、うんうん茶碗蒸し美味しい、ていうか5人ってさ何とかレンジャーみたいやね」


 確かに5人揃うとアリだなと思った。タダシは赤レンジャーか?でも女子2人はピンクレンジャー?

 いや1人はイエローか?


 とにかく3人の勇者と2人の女神ってことだな。


「てかさ、Twitterもインスタも2030年フォロワーが多くても10年前のこの時期に機能するんやろか」

 タダシはご飯を食べ終えてお茶をすすりながらアスカとユカに言った。


「タダシ君任せなさい!ユカは小学校の時からティーン雑誌でモデルをしてたのよ、その頃から続けてるから繋がってると思う」


 なるほど、キャンパスクイーンになるほどの美形だ、学校でもいつも人に囲まれているのを見ていたし、とりあえず俺たちとは住む世界が違うんだと思っていた。

 学食でも「ここ空いてるよね~」って

 他にもたくさん席が空いてるのに俺たちのところにやってくることがあった。


 そんな時は周囲の男子のジト目を耐えるしかなかった。

 悔しいがタダシはその絵に登場しても別に浮くことはないが、俺とヒロトなんて地味の中でも最上級の地味キャラだ、こうして一緒にご飯を食べることすら気恥しい。

 それでもとにかくアスカとヒロトの協力もあってタダシとユカが登場するビデオは出来た、美男美女だし注目はされると思う、タダシがイケメンだと思うのはちょっと癪に触るけど、この後の計画はこうだ。


 タダシとユカの動画を厚生労働省と首相のホームページに載せる。

 アスカは自分とユカのSNSを最大限に使ってそのホームページの動画の情報を拡散希望というタグをつけて投稿する。


 きっとマスコミが放って置くわけがないし、たくさん取材を受けるだろう。


 訳の分からないカルト集団だと思われることだけは避けたい。


 俺たちがやろうとしていることは犯罪だ、でも俺たちにしか出来ないことなんだ、そして同じ思いの仲間たちも傍にいる。

 やり遂げようと心に刻んだ。


 でもさ、タダシとユカ、アスカとヒロトって構図が出来てるやん

 俺1人だけがぼっちってことか?


 4人が笑いながら話しているのを眺めながらちょっぴり悲しくなった。


 運命の時間まではあと45分だ、気合い入れてくぞ。

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