第5話🎭新しい仲間は……

 まず初めに伝えることを書き出してみた。

 ◇俺たちが10年後の未来からやって来たこと(信用して貰えるのか?)


 ◇このままだと感染でたくさんの被害者がでること。(2030年の人口を伝えること)


 ◇今ならまだ間に合うと言うこと。(今やらないと間に合わないということ)


 俺たちが未来のことで知りうることを伝えたとして信用して貰えるのだろうか?

 ただの愉快犯だと思われはしないだろうか?


 でも俺たちは知っているんだ、不運のオリンピックで金メダルが何個取れたか。

 ラグビーワールドカップで日本チームが8強に入れたのか。

 あのアイドルグループがもう一度1つになったのか。


 午前中から皆で話し合った、こんなに真剣に話すなんて今までまったくなかったことだ、たまに集まってはゲームをしたり、カラオケ屋に行ったり、ごく普通の生活は出来ていたけれど、その影でコロナウィルスが原因で命をたった人や、家族を亡くして生活が安定せずに進学の夢を諦めた人がいるのも事実だった。


 俺たちは2020年から2021年に起きたことは、学校の授業で知った位で詳しくは知らなかった。

 父さんや母さんには聞くこともあったけれど、結局自分が体験していないから少しも実感することが出来なかった。


 テレビには緊急事態宣言が出された地域の様子が映し出されている。

 それは自分達が知っている場所とは別の世界のように見えた。


 大阪で一番賑わってるはずの道頓堀や、渋谷のスクランブル交差点や、中洲の屋台がある川べりさえ

 まるで、終焉の時を迎えたみたいに閑散としている。



 もちろんそれから、人々の努力で復興はしたことも知っている、でも命は蘇ることはないのだ。



 最初は大人しく国の意向に従っていた人々は、我慢の限界に達して外を出歩いたり、一度減っていた感染者の数が劇的に増えることを今の人々は知らない。


 色々と調べていくうちに、ヒロトは尚更自分達の使命だと重く受け止めていた。



「ヒロト大丈夫か?何か辛い思いをさせてるみたいで、俺らも苦しくなるよ」


「違うよ、そうじゃないんだ、色々と知って行くうちにやらなきゃって強く思えてきた、もちろん母さんが死ななくていいようにしたいのも確かだけど、みんな死んで欲しくないんだ」


「だよな、ヒロトと違って俺たちは、他人事でしかなかったもんな」


 ヒロトもタダシも今日ばかりは真面目に受け止めているみたいだ。


「タダシ、お前の出番だスマホで動画を撮るから準備してくれ、原稿はさっき話し合った通りで一度撮ってみよう、ヒロトは引き続きホームページにアクセスが一番多い時間を調べてくれないか?」


「オッケーわかった!任せとけ!」


 スマホで試し撮りして、ビデオカメラなどを用意してもらうことになっている。そろそろ届く頃かなと思っていると、ドアがノックされた。


「よっしゃー来たぞ、仮面も用意してくれてるかな」


 そう言いながらドアを開けていたタダシが叫び声を上げた。

「なんでお前がおんねん!!!」


 慌ててヒロトと俺が開けたドアに目をやると。

 同級生がいた。


 俺たちが通った大学の同級生でキャンパスクイーンでもあった五十嵐ユカだった。


「ビデオカメラお持ちしました!みんな頑張ってる?」

 ジーンズに薄手のシャツ、淡いグリーンのパーカーを着たユカがビデオカメラを持って立っていた。

「なんで?意味わからん」


「はい!私も意味わからんねんけど

 、ミステリートレインに召喚されちゃったみたい、アスカも一緒だよ」


「やっほー、私は色々小道具持って来たよ」

 大きな袋を抱えたアスカがユカの後ろから顔を出した。


 タダシもヒロトも何をニヤニヤしてんねん、そりゃ仲間が増えるのは心強いけど、一生忘れられない卒業旅行になってるやん。


「アスカもユカもこのミステリートレインで召喚された俺たちの使命はわかってるんだよな」


「もちろん!最初は戸惑ったけどタダシやヒロト、それにタケルまでいるんやから協力するしかないやん、それに私もアスカもTwitterやインスタでめちゃくちゃフォロワーいてんねんで、きっとそれって拡散するには最適やと思わへん?」


 なるほどそういう事か、役割はそれぞれにあるってことやな。

 とにかく急いで実行にうつす準備だ。







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