第4話 想いひとつ、春風揺らして

 なにもふたりで揺られようじゃないか

 ブランコもシーソーも

 だいたいふたつあるじゃない




「ポンさんも思ってたより暗いんだな」


「それをいうならねねちゃん、めっちゃアクティブじゃん」


 楽しそうに笑いながら歩く。大通りに出ると車とトラックの音が大きくて、お互いに大声になる。


「なんでポンって呼ばれてるの?」


「え!?なんて?」


「だから!!ポンって名前にないじゃない?」


「ああ、わたぬきって名字から!」


「え?なんて?」


 まあいっか、また今度会えるだろうし。そうしてふたりは大きく手を降って別れた。新しいことが増え、お互いに忙しくなる。元々仲がいいわけではないふたり。


「おはよ」


「あ、はよ」


 下駄箱や廊下であいさつするくらい。


「ポン、春本ねねと知り合いなの?」


「うん、友だち」


「名前負けしてるよね、ねねって顔じゃない」


「そんなことないんだなこれが」


「ポンは優しいね」


「あは」



 ポンと呼ばれた綿貫わたぬき春香は、笑いながら友だちに言う。


「あたしこそ名前負けしてるよ、はるかなんて清楚系じゃない。タヌキのポンもいじめられてた時のあだ名」


「そうなの?そんな時あったの?想像できなー」


「でしょー!?ポン誕生秘話」



 放課後、春香はねねのいるクラスへ。


「ねねちゃん、一緒に帰ろうぜ」


「え?うん」


「ライン交換しよう、今度買い物いこう」


「いいけど、急だね」


「善は急げだよ」


 春風ひとつ学校の帰り道。ねねは聞いた。


「帰る友だち他にいるんじゃない?」


「いーの」

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春風ひとつ、想いを揺らして 新吉 @bottiti

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